マイスターです。
先週、大学職員の間で、ちょっと話題になった記事がありました。
『AERA』に掲載された、「東大法学部に就職異変 キャリアより大学職員」という記事です。マイスターも、雑誌を買って読みました。
大学職員用SNS「大学職員.network」では、何人かの方が記事についての意見や感想を書かれていました。
その記事が、Asahi.comでも読めるようになったようでしたので、ご紹介します。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「東大法学部に就職異変 キャリアより大学職員」(『AERA』 Asahi.com掲載)
http://www.asahi.com/job/special/TKY200707310094.html
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記事の後半に、「東大卒→東大職員に 就職異変、意外なところにも」と題して、東大職員になった東大卒業生のことがとりあげられています。
大学職員といえば、事務作業を淡々とこなす地味なイメージがあるが、東大職員になる東大卒業生が増えているのだ。
1970年から2004年まで東大卒業生の職員就職者はわずか3人だったが、04年の国立大学の法人化の後、05年に1人、06年は4人、今年は16人(大学院生5人を含む)と年々増えている。
以前は国家公務員2種試験に合格し、職員として採用されるのが一般的だった。法人化により各大学の人事の裁量も広がったことで、東大は05年度(06年春)から「東京大学職員採用試験」で独自に職員採用を始めた。
(略)この独自採用の導入に携わった上杉道世東大元理事は、
「教員の下働きという従来の職員の仕事に、東大生は魅力を感じませんでした。今は、受け入れる東大自体も公務員的な部・課の組織から、グループ制にして、若くても有能な人は責任者に登用していく制度設計を進めています」
と話す。
(上記記事より)
記事では、実際に採用された方々の声もいくつか紹介されています。
東大卒業生達が東大職員になる、という動きについては、以前の記事でもご紹介いたしました。
(過去の関連記事)
・就職先は「母校の職員」 変わる東京大学(2006年10月13日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50253247.html
私立大学では、母校の職員になることは特に珍しいことでもありません。
早稲田大学、慶應義塾大学などでも、たくさんいます。
ある有名私大職員の方などは、「職員の95%はウチの出身者なんじゃないかな……」なんておっしゃっていたくらいです。
実際、「大学職員.network」に書かれていた記事の感想には、「卒業生が母校に勤めるのなんて当然だ。騒ぎすぎだ」なんてものもあったくらいです。
しかし「東大生が東大職員になる」というのは、世間的に見て、やはり意外と捉えられるニュースなのでしょう。
今回の「東大生大量採用」のきっかけになったのは、東大が独自に始めた採用試験です。
■「東京大学職員採用情報」(東京大学)
http://www.adm.u-tokyo.ac.jp/per/per1/saiyohp/index.htm
「国立大学の職員になる」「公務員になる」というのではなく、「東大の職員として大学を支える」という感覚。
この試験がなければ、「母校で働く」という意識は生まれなかったかも知れません。
つまり、東大生のキャリア意識が変わったのもありますが、先に「東大が変わった」という面が大きいのかな、なんて個人的には思います。
いや、組織全体が変わるまでにはまだまだ時間がかかると思いますが、少なくとも、「変わろう、変えよう」という意識が組織の上の方にあり、それが人事という場面に反映されたのは大きいのではないでしょうか。
しかし、これではまだ、不十分ですよね。
以前にご紹介した読売オンラインの記事には、
「会議となると、教員が前に座り、職員は後ろの席でメモを取り始める。それが当たり前になっていた」(「就職先は『母校の職員』」(読売オンライン)より)
という東大の理事の方のコメントもありました。
こういった光景を変えなければ、独自試験を行って優秀な人材を集めた意味がありません。
「東大を出て東大職員になる」という選択を、普通の選択肢のひとつにするためには、やはり「後ろでメモをとるだけ」という状態を変えていかなければなりません。
これは、新人職員だけでは変えられません。トップだけでも変えられません。
中堅からベテランまで、組織の構成員全体が変わっていかなければ、変わらない問題です。
そのあたりをどうするかが、今後の東大の課題なのかな、なんて思います。
ところで、以上のようなことは、何も東大に限った話ではありません。
私大だって、多くの大学では「職員はメモをとるだけ」という現状は似たようなものだと思います。
今回の東大の動きのインパクトは、「東大生を採った」という事実ではなく、「職員の仕事を本気で変えようとし始めた」ということにあるのだとマイスターは思います。
母校の出身者を山ほど採っておきながら、「メモをとるだけ」みたいな仕事をさせている大学は、私立、国立に限らず、そろそろ焦るべきです。
特に私大は、「母校出身者の採用」という点で国立大学に先行しているものの、こういった点を早く是正しないと、追い抜かれるような気がします。
以上、マイスターでした。
トラックバック不調でエラー出まくってたんですが、打ち直したらこっちには届いてたみたいで、重複してすいませんm(__)m
これは、東大のとある理事(文科省出身&東大卒業生)のアイディアである独自試験の導入に端を発したある種のブームです。現場で働く大学事務職員の実態を全く知らないで、机上論で物事を考えるしかできないキャリア官僚出身の思い付きが東大に「幸」をもたらすかどうか?こういうやり方で、教員・学生とともに事務職員も名実ともに「日本一」になれるかどうか?高学歴者が優秀な大学職員になるとは限らないことは私達現場の国立大学職員が一番よく知ってますし、東大の事務職員自身、このようなやり方が間違っていること、世間ウケはしても決してうまくいきっこないことを知ってますし、私達仲間には公言してますよ。東大のよき伝統、我々は日本を背負っているんだという東大事務職員のよきプライドを壊さないでほしいものです。