通っていた大学は、数多くの学部を持つマンモス大学でした。
その上、各学部がバラバラのキャンパスなので、なんだか単科大学に通っている気分でした。そんな境遇もあってか、「どこの大学ですか?」という話題が出たときは、なんとなくいつも「○○大学○○学部です」と、問われてもいないのに学部まで答えるようになっていました。
大学院は、さらに輪をかけて、いろんな意味で孤立したキャンパスでした。物理的な意味でもそうですが、学生の気質が他のキャンパスとぜんぜん違っていて、同じ大学でもほとんど別の国のような状態でした。そのキャンパスの学生たちは、「他の学部のやつらと俺たちは違うんだ!」という意識が非常に強く、やっぱり「○○大学○○キャンパスです」という名乗り方をしていました。
マイスターは、そういう「こだわり」って、実は結構好きです。
「愛校心」を持っているのは素敵なことですが、その上に「愛学部心」「愛学科心」まで持てるのだとしたら、その人は幸せな学生生活を送っているんじゃないかと思います。(本人にとっての幸せ、ですね)
もちろん周囲を不快にするような、あまりに極端な自尊心は考えものです。でも、「普段はあんまり口に出すことはないけれど、ひそかに自分の学んでいる学部や学科を自慢に思っている」くらいのあり方は、いいんじゃないかなぁと思うのです。
自分が勤めている大学の学生さん達にも、そういう想いを持ってもらえるようにしたいなと思います。
さて、以上は、学生さんが心の中でひそかに思うレベルの話。
しかし、客観的にも、
「あの大学は特に○○学部が強い!」
…なんていう評価を受けている学校も、ありますよね。
「中央大学法学部」なんてのは、その一例でしょう。
中央大学自体が、非常に評価の高い大学ですが、これに「法学部」が付くと、また見られ方が変わるみたいです。学部単位で、大学全体とはまた違った評価を集めているのですね。学部が独自のブランドになっているわけです。
他にも例はありそうですが、マイスターがこれまでに出会った学生や卒業生から受けた印象では、「日本大学芸術学部」も、そのひとつである気がします。彼らは自分たちのことを「日大の学生」だとはいわず、「日芸の学生」だと表現します。(彼らの話を聞いていると「ニチゲイ」は、独立したひとつの大学であるかのようです)
でも、実際、「日本大学の学生です」と名乗るのと、「日芸の学生です」と名乗るのとでは、受ける印象はまったく違うでしょう。社会のほうも、「芸術学部はなんか、ちょっと別っぽい」という見方をしているんじゃないでしょうか。
上記はわかりやすい例でしたが、細かく丁寧に見ていけば、「○○大学といえば○○学部(学科)」という図式が成り立つ大学って、実は結構ある気がします。
これは何も、学部だけに限った話ではありません。
「目玉教授」なんてのも、外部の人たちが大学を記憶するときに用いるもののひとつです。「○○大学といえば○○教授」、ありますよね。
このように、外の人は、
「あの大学って言えば……○○だよね」
という言い方を、実は結構、しています。
マイスターがいまさら言うまでもなく、こうした外部の評判には、マーケティングや広報・PRを計画する上で、重要なヒントが隠されていることが多いですよね。
学内にいると、そういう見方は麻痺してきます。
と言うかそもそも日本の大学組織においては、たとえ外部の評価が高くても、公式に特定の組織や人物を持ち上げて語ることはタブーだとされている傾向があるような気がします。
そこで今日は、↓こんな面白いサイトをご紹介します。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「大学と言えば」(ほにゃららと言えば)
http://www11.plala.or.jp/gz5432/ieba/daigaku/
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このサイトは、簡単に言えば、
<web上で、「○○大学」という名前と一緒に語られているのは、どんな言葉か>
という点をまとめたサイトです。
それも、単なる印象や主観的な評価によるものではなく、極めて機械的にはじき出された評価がもとになっているというのが、特徴です。
【作り方】
(1)Yahoo!のAPIを使って、検索エンジンのヒット数、各ページのタイトルとサマリーを取ってくる
(2)CaboChaを使って、形態素解析と固有表現抽出をして、タイトルとサマリーに含まれる人物、組織、場所、名詞を抽出する
(3)各単語ごとにTF-IDFを計算して、上位30件をキーワードとして表示する
(「ほにゃららと言えば」より)
仕組みを、簡単にご説明します。
まず上記の(1)ですが、Yahoo!JAPANは、
「Yahoo!JPANの検索エンジンで、どういったキーワードがどのくらい検索されたか」
というデータを、一般のソフト開発者が利用できる形で公開しているのです。
そこでまずは、それを使って、Yahoo!JAPANで検索されたwebページのタイトルと、サマリー(要約)のデータを用意します。(便利な時代になったもんだ)
次に(2)ですが、(1)で用意したデータに含まれるキーワードを、解析します。
「そのページにどんな言葉が含まれているか」を、人物、組織、場所、名詞といった形で、品詞別に抽出するのです。想像するだけで気の遠くなるような作業ですが、プログラムを使えばあっという間です。
最後に、「TF-IDF」という値を算出します。
これは「ある単語の、その文章における相対的な重要性」を表す数値で、情報検索の分野などで割と知られている値です。
こうした作業によって、<web上で、「○○大学」という名前と一緒に語られているのは、どんな言葉か>がわかるのですね。
あくまでも、Yahoo!JAPANの検索結果と、世の中のwebサイト上の情報が元になっていますから、調査する人の主観は入らないというわけです。
(逆に言うと、機械的にプログラムが行う処理ですから、判断が完璧でないこともあります。その言葉が人物名なのか組織名なのかといったことの判別は、結構間違えていることがあります)
ごたくはこの辺にして、さっそく見てみましょう。
本ブログを読んでくださっている方には、大学アドミニストレーターを目指している方が結構いらっしゃるようですから、↓ここを例にしてみましょう。
■「桜美林大学と言えば」(ほにゃららと言えば)
http://www11.plala.or.jp/gz5432/ieba/daigaku/ieba58.html
まずは、「人物」の欄にご注目ください。
いかがでしょうか。大学経営の研究者の方もけっこう混じっておられるようですが。
このランキングが妥当であるかどうかは、皆様のご判断にお任せします。
でも、機械的に抽出・整理された情報にしてはおおむね、学内の関係者を抽出できていますでしょ? 知名度が高い人は、ランキングの上の方に来てますよね。
マイスターは、それなりに信憑性を感じるランキングだと思います。
「組織」の欄も、興味深いです。
実は3位の「桜美林大学大学院国際学研究科」は、業界では知られている「大学アドミニストレーション専攻」がある研究科です(他の専攻もありますが)。大学アドミニストレーション専攻は定員割れを起こしていると聞いていますが、少なくとも評判の上では、早くも桜美林大学を代表する組織になっているようですね。「名詞」の欄にも、そういった結果がちょっと顔を出してます。
ただ、「場所」の欄に、サテライトキャンパスがある「新宿」は入っていません。このことから、「新宿にある大学院」という形での評判は、あまり強くないのではないかという推測ができます(あくまでも仮説ですが)。
いかがでしょうか。結構、このデータを基にして、あれこれと考えることができると思いませんか?
無難そうなところで、↓このあたりも見てみましょう。
■「慶應義塾大学と言えば」(ほにゃららと言えば)
http://www11.plala.or.jp/gz5432/ieba/daigaku/ieba210.html
人物の欄の上位に、現塾長と並んで、福沢諭吉がランクインしています。慶応義塾大学と福沢諭吉は並んで語られることが多い。うん、納得の結果です。
ちなみに、1位の「體育會」というのは、慶大ラグビー部のことでした。人物じゃないのが混じっているのは、プログラムの限界だと思ってください。
■「沖縄国際大学と言えば」(ほにゃららと言えば)
http://www11.plala.or.jp/gz5432/ieba/daigaku/ieba100.html
↑こちらは、「名詞」の欄に注目です。
今でもなおこの大学は、米軍ヘリコプター墜落事故の話題とセットで語られることが多いということが、はっきり示されています。
■「岐阜経済大学と言えば」(ほにゃららと言えば)
http://www11.plala.or.jp/gz5432/ieba/daigaku/ieba146.html
「人物」の15位に、以前、本ブログでもご紹介した「ギフレンジャー」がランクイン(笑)
現在、ギフレンジャーのコンテンツはもう見られないのですが、あのコンテンツが、大学の知名度向上にちゃんと貢献していたということが証明されました。
■「中央学院大学と言えば」(ほにゃららと言えば)
http://www11.plala.or.jp/gz5432/ieba/daigaku/ieba378.html
■「城西大学と言えば」(ほにゃららと言えば)
http://www11.plala.or.jp/gz5432/ieba/daigaku/ieba297.html
上記の2校は近年、箱根駅伝に力を入れている大学です。
「名詞」の欄を見れば、箱根駅伝がこれらの大学にとって、いまや欠かせないPR手段になっているということがわかります。
このように、広報活動の評判を知るうえでも、参考程度にはなるでしょう。
キリがありませんので、例をご紹介するのはこのくらいにしておきます
でも、結構、いろんなことが見えてくると思いませんか?
見ていると面白いですから、ぜひ皆様も、あれこれと見てみてください。
ちなみにマイスター、自分が勤めている大学のランキングを見てみました。
そしたら、どの教員が世間では有名なのか、それをダイレクトに反映した結果が出ていました。
正直言って、もしこの結果をプリントアウトして学内の掲示板あたりに貼っておいたら、大学の中で人間関係が悪化しそうなランキングでした。
でも、特定の機関や人物に評価が集まるのは、どんな組織においても、ある程度はありますよね。
それをきちんと大学のPR活動に反映させると非常に効果的なのですが、しかしそれをやろうとすると、「こんなアピールの仕方には納得できない!」…と言ってくる人たちが出るのもまた事実です。
今回ご紹介したサイトに限らず、「そちらの大学と言えば、○○ですよね」という外部の声を聞く機会は、案外多いものです。
そういった外の声を、いかに大学の戦略に取り入れるか。
難しい問題ですが、大学が生き残りをかけて競争をしていく上では、避けては通れないテーマなのでしょうね。
まずは、機械がはじき出した結果でも見ながら、自分達の大学のウリが何であるかということを考えてみてはいかがでしょうか。
以上、マイスターでした。
駅伝が強い大学として2校挙げていらっしゃいますが、岐阜経済大学ではなくて中央学院大学ではないでしょうか?
個人のブログが流行していますが、お手軽な反面、品質の管理という観点から見ますとまだまだという感が否めません。
広報関係も携わっているとのことですが、この辺も留意して頂ければと思います。
非常に面白いですね。TF-IDFまで使っているってところに驚きました。
ただ、マイスターさんも書かれていますが、人名、地名、組織名等の固有名詞の切り分けについては形態素解析の精度が辞書にもろに依存するため、一般的な人や地名しかヒットしないでしょうね(地方の独特の人名は人名として認識されないことが多い)。
ためしにCaboCha(Windows)でうちの学長の名前を形態素解析してみたところ、人名として認識されませんでした。
このようにあの結果は「辞書が人名だと認識する人の中で上位の方々」なので、リストに出てこない教員に対して「有名じゃない」とは考えずに、あくまでも参考程度にしていた方がいいと思います。
ついかごたく(蛇足?) 様の意見は私に対するものであれば補足します。私の指摘はマイスター氏の紹介内容に不備がある点を指摘したのです。氏はこの発現を見てか、下記の様に修正されたようです。
■「中央学院大学と言えば」(ほにゃららと言えば)
http://www11.plala.or.jp/gz5432/ieba/daigaku/ieba378.html
■「城西大学と言えば」(ほにゃららと言えば)
http://www11.plala.or.jp/gz5432/ieba/daigaku/ieba297.html
先ほどまでは中央学院大学は岐阜経済大学と誤って紹介されておりました。
単にこの手の情報解析ルーティンに揺れが生じるのは当然であり参考として、という話だけでしたらごめんなさい。
どうですか?マイスター氏
東大法学部さま:
こんにちは、マイスターです。
ご指摘いただきまして、ありがとうございます。お昼休みになるまでコメントを書けず、お返事が遅れて失礼いたしました。
ご指摘いただいたとおり、公開時点でリンクの名称が誤っておりましたので、こちらで急ぎ修正をいたしました。おっしゃるとおり、広報の話題を扱うブログとしては、こうした点には気を配らなければなりません。今回のようにご指摘いただけると、早めに対応することができます。ありがとうございました。
なお私が拝読する限り、ついかごたくさんのコメントは、東大法学部さんのコメント内容とは違う点を指摘されているのではないかと思います。「単にこの手の情報解析ルーティンに揺れが生じるのは当然であり参考として、という話」なのかな、と思います。
「ついかごたく」さま:
マイスターです。コメントいただきまして、ありがとうございます。
そうですね、ご覧いただいた通り解析は完璧ではないようですし、本来は有名なのに抽出から抜け落ちてしまった、という方もおられるでしょう。
おっしゃるとおり、あくまでも参考程度にとどめておいた方が良いだろうと思います。
すいません。変な名前で書き込んじゃったので嫌な気持ちをさせてしまいましたでしょうか?書き込みはマイスターさんへ宛てたもので、東大法学部さまへのものではありませんでした。
>ごたくはこの辺にして、さっそく見てみましょう。
↑に追記という気持ちでしたので「ついかごたく」なんて書いちゃいました。
揺れが生じるのは当然という認識には人により程度の差があります。
実際データをパッと見ると目立つ先生が上の方に来ています。
なので、他の方が見るとき、あのデータを鵜呑みにしそうだな、と感じ、ああ書きました。余計なお世話かな?という気持ちもあり、蛇足?なんて書いちゃいました。
申し訳ありませんでした。
このシステムとアイデアは最初に書いた通り「非常におもしろい!」と思っております。紹介してくださってありがとうございました。
すいません。東大法学部さまへの意見ではありませんでした。マイスターさまの文章の
>ごたくはこの辺にして、さっそく見てみましょう。
へのフォローのつもりでした。
変な名前で誤解を与えてしまい、申し訳ありませんでした。
すいません。反映されないと勘違いして書き込んだら二重投稿になっちゃいました。
(7とこのコメントは削除していただいてかまいません。)
はじめまして。
自分は総合人間学部というところに属していますが、
京大総合人間学部といえば、、、
http://www.h.kyoto-u.ac.jp/soujin/index.html
(新たな人間の学を目指しているらしいですが、そんなことはホームページを見なければわからず…。見たところで、よくわからず。)
よくわからない学部。
なんでもできるらしい学部。
このように
いまだ、ブランディング戦略が確定していない状態です。
「教員は、優れた研究をなさっているし、さまざまな学に臨める。。。」
という、ありきたりな広報に陥っている気がします。
ケースとしてマイスターさんならこの学部どのように広報しますか?
興味があります。