マイスターです。
「日本はものづくりなどの応用系は力を入れているが、基礎科学研究が弱い」
……なんていうフレーズ、しばしば耳にします。
そんな向きには、ちょっと意外な(?)内容の報道をご紹介します。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「日本人の科学論文、影薄い工学・環境分野」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070404ik21.htm
■「世界の日本論文引用件数、物理・化学などがリード-文科省がマップ」(日刊工業新聞 IPNEXT掲載)
http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=1173
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文部科学省・科学技術政策研究所の分析結果です。
同研究所は、米国の調査会社の論文データベースを使い、1999~2004年に発行されたもののうち、引用回数で上位にある約1万件の重要論文を分析した。その結果、日本の占有率は9%で、米国(61%)、ドイツ(13%)、英国(12%)に次ぎ4位だった。5位以下はフランス(7%)、中国(3%)だった。
分野別では物理学や化学、材料科学、動物・植物学などで、日本の占有率が9%以上の領域が多く、特に特定の超電導材料を研究する領域では日本発が約6割を占めた。生体分子の機能解明や新材料開発といった学際的分野でも、占有率の高い領域が多くみられた。
一方、工学、環境・生態学、宇宙科学などでは占有率が9%を下回る領域が目立った。また精神医学・心理学、社会科学、経済学は0%だった。
(「日本人の科学論文、影薄い工学・環境分野」(読売オンライン)より)
「異方的超電導ギャップを持つ超電導体」という領域では日本の論文が約6割を占めていた。「バイオテロ対策の研究」などの注目分野では、領域の融合が活発化し総合化が進んでいることもわかった。(「世界の日本論文引用件数、物理・化学などがリード-文科省がマップ」(日刊工業新聞 IPNEXT掲載)より)
…とのこと。
元になっている報告書は、↓こちらです。
■「サイエンスマップ2004 - 論文データベース分析(1999年から2004年)による注目される研究領域の動向調査 –
NISTEP REPORT No.95(2005年)フォローアップ 」
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/rep100j/idx100j.html
日本は、物理や化学の先端研究では強いということです。
近年、日本からはーベル賞受賞者や、世界トップ研究者ランキングに連続で選ばれる研究者が出ています。そうか、やっぱりがんばっているんだなぁとうれしくなります。
一方、工学分野はぱっとしないようです。
必ずしも<ものづくりの力=先端的な工学研究の成果>というわけではありませんが、ちょっと意外な印象を受けた方も多いのではないでしょうか。
今回の分析は、引用回数で上位にある重要論文がどのくらい書かれたか、全体の中でのシェアはどのくらいか、という観点で進められました。
その中で、精神医学・心理学、社会科学、経済学の「0%」は、ちょっと心配です。
133の領域はライフサイエンス系、物理学系、学際・分野融合系の研究領域がそれぞれ3割を占めた。学際・分野融合系の領域の研究は最近の発展・変化が著しい特徴があるという。
133領域のうち、前回調査である02年版では領域と認定されていなかった新分野が32領域を占めた。各領域の中核的な論文群に位置づけられる「コアペーパー」の比率をみると、32の新領域のうち日本の研究が9%以上のシェアを占めた領域が16あった。15%以上の高いシェアを占めた領域も「クォーク5個で構成されるバリオン」など8領域あった。
全領域におけるコアペーパーの国別シェアを見ると、トップは米国の61%。2位がドイツ(13%)、3位が英国(12%)で、日本は9%で4位だった。
日本のコアペーパーがどの領域に多いかをみると、物理・化学系が5割を占め、ライフサイエンス系と保健・医療系がそれぞれ2割程度だった。
(上記記事より)
……だそうです。
普段私たちには、学問全体を俯瞰する機会があまりありません。
このような機会に、じっくり「日本はどんな分野が強いんだ?」と見てみるのもよいのではないでしょうか。
以上、マイスターでした。