相変わらず大学院の学費を返し続けていて、もはや残額がいくらなのかよくわからなくなっているマイスターです。
大学は基本的に国立で、学費はほとんどタダ……みたいな国も、ヨーロッパあたりでは多いようです。おまけに奨学金は給付だったりします。
教育システムの構造が違うので、簡単に比較することはできませんが、やはりそういった話を聞くと、うらやましく思えます。
自分の場合は、それでも奨学金を借りられたので、返せばいい話なのですが、借りられなかった場合はどうするのでしょうか。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「無利子奨学金:申請急増、10万人夢しぼむ 成績上位者優先で生活保護世帯も涙」(MSN毎日インタラクティブ)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/wadai/archive/news/2007/09/20070918ddf041100003000c.html
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大学、短大生らに無利子貸与する日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金制度を巡り、成績や所得などの基準を満たしているにもかかわらず、貸与対象から漏れた高校生が今年の選考で約10万人にも上った。中には生活保護世帯の生徒も含まれていた。申請者が急増する中、結果的に所得よりも成績上位の生徒が有利になったためとみられる。だが、高校の関係者らからは「教育格差を広げる」と不満の声が上がっている。
同機構によると、大学進学後に月額最高6万4000円の無利子貸与が受けられる基準は、高校時代の成績の平均値が3・5以上(最高5・0)。所得制限が4人家族のサラリーマン世帯で年収916万円未満と比較的緩やかなことなどから、基準を満たした申請者は05年度の約8万人から08年度は約13万人に急増した。一方、貸与枠は06年度以降、3万4000人のまま据え置かれており、来春進学の生徒の4人に3人が不採用になった。
大阪府では今年、基準を満たした高校生1万554人のうち、全国最多の8461人が不採用となり、生活保護で暮らす府立高校の女子生徒も受けられなかった。成績は4・0を上回り、大学進学を目指していたが、進学するかどうか悩んでいるという。
府内の教諭らでつくる「府立学校人権教育研究会」は、生活保護世帯の生徒の不採用者が、05年度に2人、06年度に1人いたことを確認している。実際はさらに多いとみられ、女子生徒が通う高校の教頭は「無利子にすがるしかない親と子は、有利子と聞いただけで尻込みする。国費を投じる奨学金の役割とは何なのか」と憤る。
(上記記事より)
日本学生支援機構(旧・日本育英会)の奨学金は、もともと「家計」優先でした。
色々と細かい評価ポイントがあったのでしょうが、しかし基本的には、「学費を払うのが難しい家庭の子息を優先させる」という方針でした。
成績が良くなくても、親が学費を出せないのであれば、貸してあげましょう……ということですね。
これは公的な奨学金である以上、当然の方針です。
ただ問題は、日本では、他の奨学金が質・量ともに極めて貧弱だということです。
優秀な学生の中でもさらに優秀な一部の学生は、他の奨学金を得ることもできるでしょう。しかし、数はそう多くありません。
結果的に、日本では「大学の学費は親が払うもの」という考え方が常識となっておりました。本人が勉強を頑張っていても、家がそこそこ中流の暮らしをしているのなら学費は親が出すべきだ、とされているのです。
ですから、
「一番やりたいことは私立大学でしか学べないんだけど、学費が高くて、親が国公立大学しか許してくれないから、諦めるしかない」
……みたいな人だって、いたはずです。
本当は、日本学生支援機構が弱者救済的な役割を担い、他の奨学金が、優秀な学生の後押しをすればいいのですが、残念なことに今でも、それほど奨学金の種類が豊かになったような感じはしません。
(大学のwebサイトを見てみてください。公的な奨学金制度を、あたかも自校の奨学金制度のように喧伝しているところが少なくありません。大学が自前で確保している奨学金なんて、スズメの涙ほどもなかったりします)
で、仕方なく、日本学生支援機構の奨学金だけで、優秀な学生の支援もまかなってしまおう……という方針に切り替えたわけですね。
その結果が、上記の報道の通りです。
家計の基準がゆるくなったのだから「応募基準を満たしたけど選考から漏れた人」が大量に出てくるのは当然というか、想定の範囲内でしょう。
ただ、生活保護を受けているにもかかわらず、選考から漏れてしまった学生がいるとなると、何か、本来の役割までおかしくなっているように感じてしまいます。
少なくともこうした方は確実に受け取れるように、評価システムの完成度を上げていく必要がありそうです。
ついでにもう一本。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「GDP比の教育支出は下から5番目 OECD加盟国調査」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200709180359.html
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経済協力開発機構(OECD)は18日、加盟各国の教育への取り組みを04年現在で調査した結果を公表した。国内総生産(GDP)比で見た場合、日本の公的支出はギリシャに次いで下から2番目、私的負担を加えると下から5番目だった。各国の教育費は95年からの10年で平均42%増えており、11%程度という日本の伸び率が今後も変わらなければ、数年後に最下位になる可能性がある。
OECD教育局は「日本は限られた投資で結果を出しており、非常に効率的」と評価するが、文部科学省は「公共事業などに比べ教育予算の削減幅は小さい。だが、他国が強化している中、相対的に国力の低下を招く危険がある」と危機感を強めている。
調査によると、教育予算に相当する公的支出に、授業料や教材費などの私的負担分を加えた日本の04年のGDP比は4.8%で、数値が比較できる26カ国中スロバキアと並び21位だった。公的支出に限ると、3.5%と25位に下がる。
(上記記事より)
この記事で紹介されているのは、OECDが毎年調査・発表している、「Education at a Glance(日本語版は『図表で見る教育』)」のことです。
■「Education at a Glance 2007」(OECD)
http://www.oecd.org/document/30/0,3343,en_2649_39263294_39251550_1_1_1_1,00.html
このブログでも、何度かご紹介してきました。
我が国の教育、特に高等教育に対する公的支出の割合が低いというのは、よく指摘されることです。
いつも後ろから数えた方が早い順位なのですが、このままでいくとビリになってしまうそうで、いよいよこれは心配です。
家庭だけではありません。どうやら、教育資金に困っているのは、政府も同じことのようです。
大丈夫でしょうか、日本。
ちなみに「日本は限られた投資で結果を出しており、非常に効率的」とありますが、これは、他国に比べて、どこかの誰かが無理をしているということに他なりません。
例えば、初等教育に関して
OECDはこのほか、日本の特徴として(1)初等教育で1学級28.4人は、韓国に次いで2番目に多い(2)教員の給与は比較的高い(3)小学校教員の授業時間が最も少ない一方、労働時間は最も長い――などを挙げている。
(上記記事より)
……という記述がありますが、ここでいう教員の給与には「残業代」が含まれておりません。
授業時間が最も少ないのに労働時間は最も長い……というのは、夜遅くまで雑務に追われる日本の公立学校教員の労働状況をよく表しています。他の国では教員がやらないような仕事を、日本の教員はやっているということです。
実際には、残業しなければ終わらないような仕事量なのに、残業代は出さない。
「日本は限られた投資で結果を出しており、非常に効率的」というお褒めの言葉の裏には、こんな現実が存在しています。
……ううむ、お金のことを考えると、気持ちが暗くなっていけません。
奨学金を新設する企業や、予算を教育分野に重点的に配分する自治体などがたくさん出てくれば事態はよくなりそうですが、そんなことばかりに期待してもいられません。
どうしたら、最大多数の最大幸福が実現できるのか、家庭も、大学も、政府も、考え続けていく必要がありますね。
以上、マイスターでした。