ニュースクリップ[-3/11]「『大学の戦国時代始まる』…関西大、東京に新センター」ほか

繁忙期を迎え、「午前様」の日が続いたマイスターです。

さて、日曜日ですので、今週も一週間クリップしていた大学関連ニュースの中からいくつかを選んでご紹介したいと思います。

西軍が次々に東京へ。
■「『大学の戦国時代始まる』…関西大、東京に新センター」(読売オンライン)
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20070308p401.htm

関西大の森本靖一郎理事長は7日、大阪市内で開かれた関西プレスクラブ定例会で講演し、JR東京駅前に新しい教育研究拠点「関西大学東京センター」を開設することを明らかにした。現在のセンターを移転、面積を約3倍に拡大する。1月には慶応大が大阪市内に拠点施設を設ける計画を発表しており、東西の有力私大が相手方に乗り込む形だ。森本理事長は「首都圏での関大の存在感を高めるための拠点にしたい」としている。
(略)
講演で森本理事長は「これから大学の戦国時代が始まる。危機こそチャンスととらえ、新しい一歩を踏み出したい」と強調。
(上記記事より)

東軍、西軍に分かれた戦い……という表現は当てはまらないかも知れませんが、思わずそう言いたくなってしまうような動きが最近多いように思います。

(過去の関連記事)
・「慶大、大阪へ進出 遠隔地授業や産学連携」
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50280656.html
・ニュースクリップ[-2/18]「立命大、東京に教育拠点 4月から、京都学発信へ」ほか
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50291061.html

ところで、こういう計画って、
「以前から同様の構想を持ってはいるが、具体的にはあんまり進展させていない」
という大学が、他にもけっこうあるのではないでしょうか。
ここにきてこうした計画が次々に発表されていることに刺激を受け、ウチも早くせねばと焦っている大学もあるんじゃないかな……なんて想像します。

飛び入学拡大ならず。
■「飛び入学の拡大見送り 導入6大学のみ『評価段階にない』文科省有識者会議」(産経web)
http://www.sankei.co.jp/kyouiku/gakko/070307/gkk070307000.htm

大学の「飛び入学」制度のあり方を検討してきた文部科学省の有識者会議(座長・丹保憲仁放送大学長)は6日、高校2年生(17歳)に限定している年齢制限撤廃を見送る報告書案をまとめた。6大学しか導入していない現状を踏まえ、「評価できる段階にない。当面は現行制度の積極的活用が適当」と理由を示した。高校関係者にも意見を聴き、月内に正式決定する。

「特に優れた資質」を有する優秀な生徒を大学に早期入学させる「飛び入学」の年齢制限撤廃は平成12年、政府の教育改革国民会議が「一律主義を改め、個性を伸ばす教育システム」の一つとして提言した。塩崎恭久官房長官は今年1月、都内の講演で「チャレンジできる仕組みがまだ足らない」と前向きな意向を示していた。

この日検討された報告書案では、生徒の人格的成長を妨げ、受験競争の低年齢化を招き、受験エリート化を助長するとの懸念を指摘。「広く一般の生徒を対象とする社会的合意形成はない」として見送る意向を示した。
(上記記事より)

原則として18歳以上でないと大学入学が認められない日本。「特に優れた資質を有する」場合にのみ17歳からの入学を認める制度もできましたが、今のところまだ6大学しか導入していないのです。そんなわけで、当面はこの制度が拡大されることはなさそうです。

しかし「特に優れた資質を有する」という条件が、この制度の普及を妨げているという見方もできそうです。これが例えば「18歳で入学する人達と同程度の能力があればよい」という条件だったら、もっと飛び入学は増えているような気がしなくもないのですが……それではダメなのでしょうか。

情報技術教育のBOK。
■「情報処理学会、大学の情報教育カリキュラムの『BOK』を公開」(NIKKEIBP)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070307/264177/

情報処理学会・情報処理教育委員会は、大学における情報技術教育のカリキュラム作成プロジェクト「J07」において、最も重要な「BOK(ボディ・オブ・ナレッジ)」を策定、説明会を開催した。J07は、大学のIT関連学部・学科で教育すべき項目を規定するもの。

今回は、情報技術分野を、CS(コンピュータサイエンス)、CE(コンピュータエンジニアリング)、SE(ソフトウエアエンジニアリング)、IS(インフォメーションシステム)、IT(インフォメーションテクノロジ)という5領域に分け、それぞれを構成する中核(コア)項目や選択項目を確定した。J07 が大学教育の現場で活用される2008年度以降、教育内容は大きく変わることになる。
(略)
今回発表されたJ07のBOKは、まだ暫定版と言えるもの。2007年度に学会を中心に産業界などから意見を求めて、BOKをリファイン。並行して、BOKに基づいて授業設計をしやすくする科目設定を例示。早ければ2008年度から大学における授業に活用される予定だ。

一方で、2008年度には最新技術も網羅した次世代カリキュラム、「J1×」の策定に着手する。全体のとりまとめ役であり、情報処理教育委員会の委員長を務める筧捷彦早稲田大学教授は「大学教育において、BOKやカリキュラムの策定は重要。J07では、経団連の提言やスキル標準などを念頭に置きつつ、米国の大学向けカリキュラムであるCC2001との整合性を確保し、さらに日本の大学が実際の授業で取り入れられるものにした」と話している。
(上記記事より)

情報技術教育のカリキュラム策定に関する動きです。

以前にも本ブログでご紹介したように、大学教育のカリキュラム策定に学会が関わる例が増えています。

(過去の関連記事)
・大学の専門教育評価をめぐる動き
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50295345.html

今回の情報技術教育では、「BOK(ボディ・オブ・ナレッジ)」という言葉が使われています。この言葉はプロジェクトマネジメント分野の「PMBOK」などでも知られていますが、なるほど大学のカリキュラムを考える際にもBOKという概念はわかりやすいですね。
技術の発展に伴いBOKをバージョンアップする考え方や、米国のカリキュラムとの整合性確保など、なかなか興味深い取り組みであるようです。

大学経営と、景観への配慮との葛藤。
■「6私大、配慮要請 京都市新景観政策 同立など高さや色彩規制で」(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007031000016&genre=A2&area=K10

京都市の2月議会で審議中の新景観政策について、立命館大や同志社大などの私立大を運営する6学校法人が9日までに、連名で規制への配慮を求める申し入れ書を市に提出した。大規模な建物や施設を多数有する大学にとって建て替えなどで影響が大きく、新景観政策の推移について不安を抱えて見守っている。

申し入れたのは、立命館、同志社のほか大谷大、京都産業大、京都精華大、龍谷大を運営する計6法人。申し入れ書は「京都の教育研究機関のキャンパスは優れた景観を構成する重要な要素で、高さや色彩などの規制の下では成り立たない」として特別の配慮を求めている。

立命館大は衣笠キャンパス(北区)が世界遺産の龍安寺に近く、キャンパスがほぼ規制区域に入り、建物の屋根に傾斜を付けたり、和風にする必要がある。同志社大も今出川キャンパス(上京区)が京都御苑に近く、場合によっては高さ制限が厳しくなる見込みだ。

各大学に申し入れを呼びかけた立命館の森山哲朗管財課長は「既存の建物との調和が失われ、階数も減る恐れがある。大学間競争が厳しくなるなかで、施設の充実ができなくなる」と話す。
(上記記事より)

歴史的な景観を維持するための取り組みは大事です。
ただ、そのために設けられた各種の規制が、ときに対象地域内の組織にとって悩ましいハードルになるのも確かです。景観保全の重要性は認識しつつも、そう簡単には対応しきれない、という状況でしょうか。

ただ大学の校舎の屋根に傾斜が付いたり和風になったりという様子を想像してみたのですが、果たして京都の景観がそれで保全されたことになるのかどうか。それぞれのキャンパスが醸成してきた雰囲気もまた、その地域の文化や景観に貢献していると思いますし。一律のルールを設けるよりも、個別にケースバイケースで対応した方がいいような気がしなくもありません。

(でも検討の結果やむを得ずある程度の高さ制限がかかってしまうようなこともあると思います。そうなったら大学側も配慮しなければなりません。他の団体だって厳しい中、景観づくりに協力するわけですし。それに景観が守られれば、結果的にキャンパスの魅力も上がる……かも?)

2倍!?
■「教師務める医師の給料を2倍の水準に、ハーバード大学」(CNN)
http://www.cnn.co.jp/business/CNN200703100002.html

米国の有名私大、ハーバード大学医学部は9日、授業などの教師を務める医師の給料を2倍にする方針を表明した。関連の病院3カ所の医師も対象で、今年7月から始める。給料引き上げで、年間1600万ドル(約18億8800万円)の財源を準備する。

教師になりたがらない医師が増えていることへの対抗措置。安い給料のほか、患者の治療に追われ、専門の研究にも時間が取られていることが背景要因だという。

報酬増加で教師の時給は100ドルになる。現在の報酬は、ばらつきがあるものの、30ドルの医師もいるという。
(上記記事より)

報酬によるインセンティブ付けも、ここまで露骨なのはなかなか見かけません。さすがアメリカ、さすがお金のあるハーバード。
それくらい教員が不足しているということなのでしょう、きっと。

ところで「給料引き上げで、年間1600万ドル(約18億8800万円)の財源を準備する。」とサラリと書いてありますが、これはどこから準備されるのでしょうか。
通常なら、教員の給与があがると、それが学費の金額に跳ね返りそうなものです。ハーバードほどの潤沢な財源を持っていると、そうはならないのかな?

(過去の関連記事)
・ハーバード大学の基金運用担当者
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50158024.html

以上、今週のニュースクリップでした。

マイスターが担当している仕事は、ピーク時とそうでないときの仕事量の差が大きいです。午前様が何日も続くとさすがに少々疲れます。

……というか、帰宅後に書いているブログがすべての原因であるような気が。

うーん、時間をもっとうまく使えるように精進したいものです。

今週も一週間、本ブログの記事を読んでくださいまして、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

マイスターでした。