ニュースクリップ[-12/11] 「理科大好きでも科学者イヤ 中3男子56%・女子81%」ほか

年末まではまだ少しありますが、既に連日のように飲んでいるマイスターです。

たまたま「勉強会&親睦会」のようなイベントが何日か続いたからなのですが、それにしても、結構飲んでます。
酒にはそれなりに強い方だと思っておりますが、それにしても、年末まで体がもつのでしょうか…。うむむ。

みなさま、今週も、一週間おつかれさまでした。
週末の恒例、ニュースクリップをお送りします。
(ニュースクリップなので、食育の話題は、明日以降に)

今回は、ビミョーなニュースばっかり選んでみました。

理科が好きでも、職業にするのは嫌という子供が多いみたいです。
■「理科大好きでも科学者イヤ 中3男子56%・女子81%」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/1210/006.html

中学3年生560人分のデータを分析した結果です。
理科が、「面白くて他の教科より好き」と答えた子供は33%。
その中で、「能力や才能を発揮できる仕事をしたい」が92%、「重要で意味があると考える仕事をしたい」が87%。さらに「科学は社会にとって重要」との回答も87%。
なかなかイイ感じですね。

ところが、理科好きの子供の中で「科学者になりたい」との回答はわずか34%(男子44%、女子19%)!
男子の56%、女子の81%は「なりたくない」(!)と答えています。
なりたくない、たぁ、おだやかじゃねえな?
「能力や才能を発揮できる仕事」じゃないと思われているのかどうか、その辺は定かではありません。
でも、記事で指摘されているように、科学者はマニアックで暗いイメージをもたれていたり、身の回りで普通に生活している現実味が無かったりするというのはわかります。
野口聡一さんという、きさくな人物がメディアに登場した分、宇宙飛行士の方がもしかすると中学生にとって身近な存在になっているかもしれません。
これは、高校生段階での「理系離れ」にもつながる話のように思われますので、ぜひ科学者のみなさんには、頑張っていただきたい。

ところで欧米と比べて日本で影が薄い職業のもう一つが、「芸術家」ではないでしょうか。
ヨーロッパなどでは、「税金で公共施設を立てる場合、地元在住の芸術家の作品設置に、必ず予算の数パーセントを充てる」といった法令があったりするので、芸術家は地方でも割と身近な存在みたいです。
少なくとも日本のように、「プロの芸術家になる」と言っただけで親に泣かれたり、考え直せと説得されたりはしないみたいです。
好きなのと、職業として目指す対象になるのとは、違うのですね。

教委や教員も、指導力不足の教員が増えたと感じているようです。
■「指導力不足教員:『増えた』36%--内閣府アンケート」(毎日新聞 MSNニュース掲載)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/archive/news/2005/12/06/20051206ddm002040051000c.html

↓元データはここに公表されています。
http://www.kisei-kaikaku.go.jp/publication/index.html
「教員の指導力不足については、私立小・中学校で38%、都道府県教委は21%が「増えていると思う」と答えた。」と毎日新聞の記事にあります。
一番肝心な、公立小・中学校教員による回答について触れられていないので、元データを見てみたところ、「37.3%」が、指導力教員の増加を感じているとのことでした。
みんな、それぞれヤバイと思っているようです。

-「また、『身内に教育関係者がいると採用が有利になるか』との問いには、全都道府県教委が『ない』と否定したのに対し、教員の59%が『有利に働く』と答えた」-
教壇では、自分の力でがんばれと子供達に説いていても、実際はまぁこんなもんです。

しかしこの調査結果、なかなか興味深いデータが多いです。
今度、改めて詳しくご紹介したいと思います。

昔の世代の父親像を目指せば、子供から尊敬されるの?
■「父親の子育て『しつけ不十分』77%…読売新聞世論調査」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20051205ur07.htm

たまにこうした論調の記事は見かけますよね。
-「父親の子育てについては、「世の中の決まりをきちんと教えられない父親が増えている」という人が80%に達し、「家庭教育の責任を十分に果たしていない」も52%に上った。さらに、今の父親が「子供から尊敬されていない」は58%、「一家の大黒柱として頼りにならない」も53%と、否定的な評価が相次いだ。
 理想的な父親像では、「必要なときにしかる」に続き、「生き方や人生観を語れる」(54%)、「仕事に一生懸命取り組む」(52%)、「威厳を持っている」(49%)が上位を占めた。「子供と友達のように接する」(13%)など、子供と対等な関係を求める意見は少数だった。
 また、「父親が雷おやじだった」という人は全体では39%。父親を尊敬しているかどうかの関係で見ると、雷おやじほど尊敬している割合が高かった。 」-

戦前のオヤジを彷彿とさせるようなイメージが、理想的な父親として語られていますが、果たしてこの通りにすれば子供から尊敬されるのでしょうかね。

「反社会学の不埒な研究報告」によると、明治41年に読売新聞が全国の小学生に対して、「いかなる人物を理想とせるか」という調査をした結果があります。
最終的に6600人余りの子供から回答を集めたこの調査で、
「両親」と答えたのは3人、
「父」と答えたのが13人、
「母」と答えたのが3人。
たった、たったこれだけ!でした。(6600人の回答ですよ!?)

なお、大正15年にも同様の調査が行われています。こちらは、大阪のある小学校218人に、崇拝する人物についてたずねたものですが、母をあげた子が5人、父はゼロだったとのことです。

「昔の父親は威厳があってよかった。今の父親は、威厳がないから、厳しくできないから子供から尊敬されないんだ」
という論法は、どうも怪しいみたいです。
そもそも昔と今とでは環境も、子供に求められるものもまるで違いますからねー…。
必要なときに子供を叱るというのは非常に大切なことだと思いますが、戦前の雷オヤジ風にするのがいいとも限らないので、そこらへんは安易にモデルにしない方が良いかも知れません。

「師弟関係壊す授業評価」って言われても…
■「《解答乱麻》師弟関係壊す授業評価」
http://www.sankei.co.jp/databox/kyoiku/etc/051205-4etc.html

深層心理学を専攻とする元教授の意見。
正直、内容はどうかと思ったのですが、教員の皆様にはこうした考えをお持ちの方も多いのだろうな、と思ってご紹介してみました。

突っ込む部分はたくさんありますが、みなさんは、この記事についてどう思われますか?
マイスターは、自分の務める大学の教員が今現在もこんなことを言っているのを聞いたら、卒倒してしまうかもしれません。
大学進学率の上昇に伴い、大学の教育システムや組織体制のあり方も変わっていくと予言したのはMartin Trowですが、この記事を書いた元教授にとっては、Trowの説は認めがたいものなのかも知れません。
(この方の言う「師弟関係」がどういう関係なのかも、いまひとつイメージがあいまいです)

村長が中学校の授業で「地方自治の講義」?
■「教育分権:学校と自治体が試される/2 『経営責任』 村長介入、自ら教壇へ」(毎日新聞 MSNニュース掲載)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/archive/news/2005/12/06/20051206ddm002040050000c.html

一見、意欲的でいい取り組みであるようだけど、考えてみると問題が多いんじゃないか?という内容。
この記事の執筆者も、
-「首長自ら教壇に立ち、生徒と一緒に陳情までするのは、法で制約される教育活動を超えると見られかねない。」-
と指摘していますが、マイスターもそう思います。

特別支援学校の設立、是か否か?
■「教育を考える:中教審 特別支援学校の設立提言」(産経web)
http://www.sankei.co.jp/databox/kyoiku/etc/051206etc.html

現行の盲、ろう、養護学校を統合し、複数の障害に対応できる「特別支援学校」(仮称)にするというものです。
こうした学校を作るのは、基本的にはいいことなんだろうとマイスターは思います。

マイスターは建築学科でバリアフリーやユニバーサルデザインなどの事例を学びました。
道路脇の歩道って、数センチ、車道より高くなってますよね?
あれは、車イスをお使いの方などからすると、やっかいです。撤廃して欲しいものの一つでしょう。
ところが目の不自由な方にとっては、車道と歩道の区別か付かなくなることの方が、やっかいなことだったりするそうです。
健常者が、目の不自由な方の不便を知らないでいるのと同じように、こうして別の悩みを抱えている者同士も、お互いのことをよく知らなかったりする、ということを教わりました。

健常者も含めて、様々な特質を持った人々がお互いのことを知っている、知る機会がある社会が理想。
でも、どうしてもスペシャルな教育が必要な人々がいて、そのための学校が求められているのだとしたら、なるべく相互理解ができる環境がいいのではないかな、と個人的には思います。
これはコミュニケーションについてだけの感想です。
こうした教育ニーズに対する専門的なことは、マイスターはまだよく知らないのですが、統合することによる教育上の様々なメリットとデメリットがあるのだと思います。
(詳しい方、ぜひ、色々とご意見などいただければと思います)

学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)が、通常学級に在籍しつつも必要に応じて特別の場で指導・支援が受けられるようにするという提言も、いいことなのではと思います。
希望としては、大学職員向けの研修などを、そうした施設で受けられるようにしてほしいです。

・「発達障害のある学生支援ガイドブック」
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50051115.html

↑こちらで本をご紹介したりもしましたが、大学にも、発達障害を持っている方は入学してきます。
そうした方々を適切にサポートするためにも、今回の記事にある「特別支援学校」のようなセンターがあって、そこにいる支援のプロに大学が相談できるという体制があったらいいなと思います。

以上、ビミョーな記事も含め、若干変わったニュースを今週は取り上げました。
結構、論議を呼びそうなものも多いです。
みなさん、ご紹介した記事を読まれて、色々感じられるかも知れません。

(あと、ニュースクリップの体裁をちょっと変えました。先週までの「ぜんぶの記事のあとに、全部の解説」という順番より、たぶん、こっちの方が読みやすいですよね)

年末まで、もうちょっとです。
忙しい季節ですが、がんばりましょう。

以上、マイスターでした。
今週も、一週間、記事を読んでいただき、ありがとうございました!

2 件のコメント

  • 「理科系の勉強をやったら、どんな仕事に就けるか?」というのが、日本では分からないですね。子どもだけじゃなく、大人(親)もぜんぜん分かりません(^^;
    音大を出てピアノ教師をしている同級生が「ピアノに関わる仕事っていっぱいあるのに、子どもも親の方もぜんぜん知らないのは問題よね」と言っていましたが、理科系に限らず、「文学部」を卒業しても、どんな仕事ができるかは不透明ですよね。
    私自身は「文系」でずっとやってきましたが、PCとか機械類の扱いも嫌いではありません。あちこち“寄り道”できるような学習システム(学校制度?)ができれば、一人の人間が複合的な知恵を蓄えられるようになるのかもしれません。

  • rabbitfoot様:
    マイスターです。
    コメントありがとうございます!
    確かに、理科系の仕事って、結構イメージしづらいですよね。
    機械とか建築とかの工学分野はまだわかるけど、「物理学科」「地球科学科」なんて、一体どんな仕事に就くやら?です。
    音大のお話も、言われてみればそうですよね!
    アメリカでは、学部段階では一般教養的な教育で論理的な思考能力やコミュニケーション能力を鍛えて、専門教育は大学院で行うという役割分担がわりと一般的なようです。
    学部段階でも専攻は一応ありますが、「数学と現代美術」とか、「バイオテクノロジーとラテン文学」とか、関心のあるものを好きに学べるみたいですよ。
    また、かの国には「文系」「理系」の区別もありません。
    私もrabbitfootさんと同じく、文・理があいまいな人間なので、そうしたシステムはうらやましいなと思ったりします。