もっとも、実際にはたいしたことはやっていません。
オリンピック(パラリンピック)の選手村の最後のクローズ作業とか、夜中、国に帰る準備をする各国選手達の荷物搬入の手伝いとか、です。簡単な肉体労働が担当でした。
ご存じですか?選手村って、食事がすべて無料なんです。
そこかしこにあるビールの自販機も、ボタンを押すだけで出てきました。
村中央の食堂も当然すべて無料でしたので、調子に乗って一日5食くらい食べていた気がします…。
マイスターも、ボランティアとして選手村のはずれにしばらく寝泊まりしてましたので、それはそれは充実した(笑)日々でした。できるなら永遠に暮らしたかった…。
そんなパラリンピック終盤の選手村で見たのは…
想像を超えてパワフルな選手達でした。
忙しくて競技は見られなかったのですが、普段の選手達の様子が、そもそもスゴイ。
車椅子で、一人で駅の階段を下りる人を始めてみました。
(どんな状態で下りているか想像つきます?
タイヤを、がっこんがっこん言わせて、手すりにつかまりながら後ろ向きで下りるんです。あまり真似しないように!)
あと、片足の選手などは、そもそも車椅子にのってない方が多かったです。
オリンピック村の中を、自転車でかっ飛ばしていました。
マンション(選手達の宿泊棟)の廊下も自転車で移動です。
エレベーターの中からチャリが飛び出してくるので、マイスター、ちょっとこわかった。
世界的イベントが終わる夜という状況もあり、深夜でもラジカセをがんがんならしてオールナイトパーティー状態!(全員がそうだったわけではありませんが)
そんな選手村の風景は、忘れられません。
マイスター、高校のときから大学まで、障害をもった子供達を相手にするボランティアをなんどかやりました。
障害といっても色々あります。
マイスターが出会ってきたのは、手や足が不自由な方、車椅子の方、視力が非常に弱い方、知的障害者の方などでした。
教えているようで、実はこちらが教わっている、というのを何度も経験しました。
若いうちに、こうした出会いがあって、よかったと感謝しています。
そんなわけで、ちょっとは障害に関して興味を持っているぞと言える程度のことはしてきたのかな、と思います。
そんなマイスターが、大学職員となり、今、最も気になっているのは…
「発達障害」
のある方です。
というわけで、今日は、↓この本をご紹介します。
発達障害のある学生支援ガイドブック―確かな学びと充実した生活をめざして
これは国立特殊教育総合研究所による、「大学関係者のための」ガイドブックです。
発達障害を学んでいる友人から教えてもらいました。
↓発行元のジアース教育新社のサイトに、本の構成などが掲載されています。
・【内容紹介】(ジアース教育新社webサイトより)
http://www.kyoikushinsha.co.jp/books/41.html
■読んでほしい人々
このガイドブックは、次の人々に役に立つ情報となるでしょう。
◎大学などで障害のある学生の支援に取り組んでいる学生相談担当者など
◎大学で講義・演習を担当している教員、及び事務職員
◎発達障害のある学生の家族、友人(上記ページより)
学生相談担当者はもちろんですが、「大学で働く教員と事務職員すべて」を、対象として書かれている本でもあるのですね。
というよりおそらく、発達障害の専門家というより、本当にマイスターのような障害のシロウトが役立てることを主眼として書かれたのだと思います。
発達障害の基礎知識から、実際の対応事例までが紹介されており、
本当に、大学関係者にとってはありがたい、
基本的で実用的な「ガイドブック」としての内容になっています。
発達障害って、どういう状態かご存じですか?
この本では「発達障害」を、
○全般的な知的発達の遅れがない・全般的な知的機能は平均以上のLD(学習障害)
○ADHD(注意欠陥/多動性障害)
○高機能自閉症もしくはアスペルガー症候群
などを示す言葉として使っています。
なんだかどっかで聞いたことあるぞ、という言葉が混じっているかも知れませんね。
マイスターは心理学や特別支援教育の専門家ではありませんので、あくまでシロウトなりに、これらを簡単にご説明してみます。
LD(学習障害):
基本的には知的発達に遅れがなく、学ぶ能力を持っている。
けど、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する、といった特定の能力のうち、どれかがなかなか身に付かなかったり、うまく使えなかったりする状態。
ADHD(注意欠陥/多動性障害):
一つの事に長時間集中する事が難しくて、ちょっとしたことですぐにほかの事に注意がそれてしまったり、
じっとしていなくてはいけない場面でもそれがなかなかできず、手足をそわそわと動かしたり、席を立ってしまったり、
質問が終わる前に答えてしまう、順番が待てないといった「衝動」で動いてしまったり、という状態。
(必要なものをすぐなくす、毎日しなくてはいけない活動を忘れてしまう、遅刻が多い、不器用、計画・準備が困難、気分が変わりやすい、ストレス耐性が低いなどといった特徴もあるそうです。参考)
高機能自閉症もしくはアスペルガー症候群:
…これは…マイスターには説明が難しいです。
うかつな説明をするより、わかりやすい説明のページをご紹介した方がよさそう。
■「高機能自閉症 (HA) とは?」(LD親の会 けやき)
http://www.ne.jp/asahi/hp/keyaki/HTML/KEYAKI/ha.html
■「高機能自閉症・アスペルガー症候群の理解と援助」(日本自閉症協会京都府支部)
http://web.kyoto-inet.or.jp/org/atoz3/ask/utiyama/
どうでしょうか、なんとなくイメージできたでしょうか?
これらの障害は、車椅子のように、誰が見てもすぐにわかるものではありません。
また、「明らかな知的障害」というわけでもありません。
何しろ、学習能力は、決して劣っているわけではないのですから。
「文字は理解できるけど、耳で理解することが非常に苦手」
とか、
「テストは合格できるけど、履修のガイダンスが理解できない」
とか、
「授業中に、ひとりで質問を何十分も続けてしまう」
とかいうのは、別に「学力がない」のではありませんよね。
発達障害のことを知らないと(マイスターもつい最近までそうでしたが)、
君は要領が悪い、とか、
君は常識がない、とかの印象で終わってしまう可能性も、大いにあるのです。
だから、目に見える障害より、対応が難しいのでしょうし、
私達が率先して学んでいくべき領域だとも言えるでしょう。
んで、
悲しいことにこれまでは、こうした学生は、入る時も入った後も、日本の大学からほとんど相手にされていなかったのですね。
今でもこうした学生をサポートすることに関して、法的な整備は進んでいません。
でも、それでいいのか?
学ぶ意志と能力がある人に機会を与えるのが、大学の最も尊い役割ではありませんか!
そんなわけで、海外の大学や、日本の一部の大学では、
大学組織として、発達障害を持った学生のサポートにのりだす事例があります。
すべてをここでご紹介することはできませんが、
入試、
普段の授業、
試験、
論文作成、
就職活動、
などなど、障害を持った学生がサポートを必要とする分野に積極的に乗り出し、試行錯誤をしながらも学生の学びを支援している大学がいることが、この本からわかると思います。
(実際にこの本は、上記のようなシーン別の支援方法も載せています)
以上、内容は詳しくご説明できなかったかも知れませんが、
とってもオススメです。この本。
大学図書館にお願いして買ってもらうとか、学校のお金で買って、教職員に配るとかしてみてはいかがでしょうか。
生協に置いてもいいと思います。
マイスターもおかげで、
「自分に何ができるかな。
たとえば、こんなことはできるな。こういうことだって…」
と、具体的に行動をイメージするようになりました。
受け身ではなく、前向きな提案ができるようになりますよ。
ぜひ、どうぞ。
次、こうしたことで困っている学生に会ったら、
とりあえず最初に、自分の連絡先入りの名刺を渡そうと思うマイスターでした。