「発言し始めた事務職員」

マイスターです。

大学職員の活動に焦点を当てた記事がありましたので、ご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「大学再編 大学再生(8):発言し始めた事務職員」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20070208us41.htm
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読売新聞の特集「教育ルネサンス」は、質・量ともにとても充実していると思います。
いつも興味深いテーマを取り上げてくれているので、マイスターも愛読しています。

上のリンクは、そんな「教育ルネッサンス」の2月8日付の記事です。
「大学アドミニストレーター」という専門職についての解説もあり、大学職員としてはちょっとうれしい内容です。

世間の皆様にとって大学の関係者のイメージは「学生」と「先生」。大学職員という存在はまだまだ社会全体からすればマイナーです。新聞が取り上げてくれれば、職員に対する世間の見方も変わるのかな……なんて思わず期待しちゃいます(ヨコシマな発想ですみません)。

事務職員の提案で始まった改革が、大学再生のカギを握る。

「大地震が起きた時の復旧対策は?」「環境への負荷を減らすために最も心がけていることは?」

愛知県知多市のガス工場を訪れた日本福祉大学(愛知県美浜町)の学生4人が、案内役の職員に質問をぶつけていた。同大が、周囲の他大学も巻き込み、事務職員主導で数年前から作りあげてきた、学外で学生が学べる体験学習の場の一つだ。

参加者の1人で、福祉経営学部3年の飛石雅典さん(21)は「講義の中では学べない、新たな視点がもらえる」と意欲を見せる。改革の旗振り役を務めてきた同大事務局長、福島一政さん(58)は、こうした学生の姿を見ると顔がほころぶ。

高齢者が住みやすい町づくり、災害に強い町づくり、障害者にやさしい町づくりなど、これまでに数十の体験学習の場が用意された。
(上記記事より)

記事で取り上げられているのは、日本福祉大学の取り組み。紹介されている福島一政氏は、現在の大学行政管理学会会長です。

■大学行政管理学会
http://www.ne.jp/asahi/juam/office/

(ちなみにマイスターも大学行政管理学会の正会員です)

さて記事では、福島氏が大学行政管理学会に出会い、自校の大学改革に取り組み始めた頃のことが紹介されています。

全入時代による学力低下や定員割れを見越し、事務職員が大学アドミニストレーター(行政管理職)として教員と共に大学改革に携わって乗り越えるべきだという学会の主張に共鳴し、自分の大学の教員にも改善の必要性を訴えた。

「大教室での一方的な講義では、今の学生はついていかない」「体験型の学習の場を増やそう」「語学は到達度別がいい」

教員と職員の身分格差が今より顕著だっただけに、教育に口を出す事務職員に教員は露骨に不快感を示した。しかし、学生の成績や履修状況で学力低下をはっきりと示され、入学時の学生意識調査で手厚い学習支援を期待されていることを知り、教員たちはやがて、成績のふるわない学生や保護者と面談、手取り足取り教えるようになった。
(上記記事より)

残念ながら「身分格差」は現在も多くの大学で残っています。そもそも格差以前の問題として、「教育に口を出す職員」が非常に少ないのではと思います。
今回ご紹介した記事のタイトルに「発言し始めた事務職員」とあるのも、裏を返せば多くの大学ではまだ発言しない職員が多いということでしょう。
しかしこうした諸先輩方の努力もあり、大学によっては教員と職員が、対等なパートナーシップを持って協働するまでになっているところもあるようです。

ところでこの記事にもあるように、協働を進めるにあたって力を発揮するのが「データ」や「調査結果」でありましょう。

アメリカの大学アドミニストレーターは概して高学歴です。それは有名大学を出ているという意味ではなく、修士号や博士号を持っているという意味です(高学習歴、と言った方が適切でしょうか)。責任ある仕事を任されているアドミニストレーターにはPh.D保持者も珍しくないとか。しかしそれが必ずしも高等教育に関する学位であるとは限りません。
大学院での高度な教育・研究活動を通じて彼等は、数値的な裏付けを用いて論を組み立てたり、仮説を立ててそれを検証したり、多角的な分析を行ったり、という訓練をしているのです。そういった力が、大学という巨大な組織(それも研究者という知的専門職の集団)を動かす上で不可欠ということなのでしょう。

教員と職員の間には身分格差がまだまだあると言いましたが、能力格差もあるわけです。これからの大学職員は、実直さや気遣いというだけに限らず、知的分析力や事業提案力を身につけて、教員とも堂々と協働できるようにならないといけませんよね。

記事の最後にはこうあります。

教員と職員が手を携えて大学を変えていく時代が来たようだ。
(上記記事より)

そうあってほしいなぁと思うマイスターでした。

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(過去の関連記事)
・就職先は「母校の職員」 変わる東京大学
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50253247.html

2 件のコメント

  • 私も常々職員と教員がざっくばらんに意見を
    言い合えることが理想だと思ってきました。
    とは言え、疑問点もあります。
    わが社の職員、管理職以上はすべてOBでかつ運動部出身者です。
    こんなことで良いのでしょうか?

  • 私が以前勤めていた私立大学だと、職員様の権限があまりにも強く、教員側は、教科の成績の付け方一つにしても、何も決められない有様でした。講義の内容にまでイチャモンをつけられた教員もいます。特に非常勤講師だと、職員様の言いつけ通りの講義をしないと、すぐに契約を打ち切られていました。この大学では、事務の課長は教授と同等と考えられていますが、実際、権限は教授以上です。
    こういう大学もあるということで、ご一報申し上げます。
    ちなみに私が現在所属している大学は、教員と職員の立場の上下はありません。お互い、必要としているわけですし、いい感じで協力関係が結べています。