学生の時、教職科目を履修しなかったマイスターです。
学部生のときは、教育業界で働くことになるなんて夢にも思っていなかったのです。
今にして思えば、もったいなかったかも知れません。「こういう課程をクリアしたら教員になれる」という流れを、自分で体験してみたかったです。
もっとも教員免許も更新制になる可能性が高いですから、そうなったら「ペーパー教員」の場合、免許そのものにはあまり意味がなくなるかも知れませんけれど。
さて、そんな教職科目を巡って、問題が起きてしまっているようです。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「教職課程、申請忘れた!神戸市外大の新1年生が単位得られず」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20070122ur21.htm
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神戸市外国語大(同市西区)が、4月からの独立行政法人化に伴う手続きで、学生が教員免許を取得するのに必要な教職課程の認定申請を忘れていたことがわかった。
文部科学省は昨年10月に受け付けを終了しており、今春の新入生は1年間、教職課程の授業を受けても教員免許に必要な単位に認定されないという。
(略)同外大では、教職課程の59単位のうち「教職概論」(2単位)について1年生での受講を認めており、新年度の新入生が教員免許を取得するには、この授業を2年生以降に受講しなければならないという。
法人化前に入学した現在の学生については現行通り教職課程が認められる。
同外大は「あってはならないミスで、大変申し訳ない。学生に負担が生じないよう、個別相談に応じるなどしたい」としている。
(上記記事より)
「必要な教職課程の認定申請を忘れていた」とのことです。法人化する際の混乱期であるとは言え、これは結構大きなミスです。
不幸中の幸いなのが、該当する授業が「教職概論」(2単位)1科目だけであること。
同大は「学生に負担が生じないよう、個別相談に応じるなどしたい」とコメントしています。マイスターは実際のカリキュラムを把握していないのですが、この範囲なら大学側が十分に配慮することでカバー可能なんじゃないかな……なんて想像します。
しかし、↓こちらのケースはより深刻そうです。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「入試案内に不備、教員免許取れず 学生が大体大を提訴へ」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200701220054.html
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大阪体育大学(大阪府熊取町)の健康福祉学部の3年生4人が、「入試案内の表記に不備があったため、教職課程に必要な科目を履修できなかった」として、同大学を相手取り、計800万円の損害賠償などを求める訴えを大阪地裁に起こす。
訴状によると、学生らが03年夏から秋ごろにかけて取り寄せた入試案内の健康福祉学部の項で、「所定単位の履修で、卒業と同時に取得できる免許・資格」の一つとして、「中学・高校教諭一種免許(保健体育)」と記載してあった。
ところが、大学側は施設不足などを理由に、04年以降の入学者から、教職課程に必要な実技科目の履修を成績上位50人に限定。04年入学者向けの入試案内には「定員50人」という修正シールを張って対応した。しかし学生らが手にした入試案内には修正シールがなく、学生らは「全員が教員免許を取得できると信じて入学した」という。
(上記記事より)
訴訟にまで発展したこの問題。
報道後、よっぽど問い合わせが続いたのか、同大のニュースリリース欄には↓こんなリリースも。
【本学の保健体育教員免許に関する報道について】
先日、朝日新聞・ABC朝日放送にて、本学健康福祉学部の保健体育教員免許の取り扱いについて、報道がなされました。保健体育の教員免許につきましては、体育学部では全学生が取得可能であり、健康福祉学部では1学年50名の限定(履修者数制限)も従来どおりです。
今回取り上げられました問題につきましては、今後も大学として適切に対応してまいりたいと存じます。(「ニュース」(大阪体育大学)より)
報道によれば、入学案内の表記ミスが発端になっての訴訟だとのことです。教職課程に必要な実技科目が突如、履修制限の対象になったため、教員免許を取得できなかったというのが理由です。
「大学側は施設不足などを理由に、04年以降の入学者から、教職課程に必要な実技科目の履修を成績上位50人に限定」ということですから、どうやら100%、大学側のミスが原因のようです。
■「募集人員、入学試験、検定料」(大阪体育大学)
http://www.ouhs.ac.jp/matriculation/boshu.html
↑こちらは次年度の募集定員ですが、どうやら健康福祉学部の定員は120名前後のようですね。120人のうち50名しか実技科目を受けられないということが入学後に発覚するというのでは、確かに学生が怒るのも無理はありません。
永吉宏英・健康福祉学部長は「学生らに対しては、卒業後でも所定科目を履修し、免許が取得できるよう配慮する考えだが、理解が得られず残念」と話している。
(上記記事より)
……と記事にはあります。もともと大学側のミスですから、休暇期間などに、臨時に追加授業を行ってでも対応すべきだったかと思いますが、そういったことがなされたのかもちょっと気になるところです。
また「卒業後でも免許が取得できるように配慮する考え」とのことですが、どんなに精一杯対応するつもりだとしても、大学側の説明不足で相手が多大な損害を受けたのは確か。損害を与えた以上、何らかの補償を行うべきですが、「卒業後でも免許が取得できるように配慮する」というのは補償ではないよなぁ、と個人的には感じます。
これはもう、訴訟の場で、「どれくらいの補償なら十分か」ということを明らかにするしかないのではないでしょうか。裁判ならいちおう公正ですから、法廷でお互いの主張をぶつけてください。
ちなみに2003年10月3日時点での大阪体育大学のwebページを↓こちらでご覧いただけます。
■2003.10.3「健康福祉学部:どんな資格が取得できるの?」(大阪体育大学)
http://web.archive.org/web/20031005113227/http://www.ouhs.ac.jp/gakubu/kenkofukusi.html#7
※文字化けする方は、文字エンコーディングを「Shift-JIS」にしてください
なるほど、webの方も確かに「中学校・高等学校教諭一種免許(保健体育)」とありますが、履修制限云々のことはまったく書かれていません。大学案内もこんな感じだったのでしょうか。
ちなみに2007年1月現在はというと、例えば
……50名と限定されていますが、成績によって福祉に加えて健康体育の教員免許の取得も可能です。
(「大学紹介:健康福祉学部」(大阪体育大学)より)
……とこのように、学部長による学部紹介の中に、妙にそこだけ説明的な文章が入っていたりします。いつからこういう記述になったのかはわかりませんが、学生から苦情などが出たことを受けての措置なのかな?などと想像されます。
入学案内やカリキュラムは、大学と学生との「契約条件」を伝えるメディアです。それだけに、間違いがあるとおおごとなんですね。他人事ではありませんね……油断しないようにしたいものです。
ただ、それでももしミスが出てしてしまったら、「いかにそのミスが顧客に対して与える影響を小さくするか」を考えてみてください。その対応次第で、解決する問題もあるのかなと思います。
以上、マイスターでした。