ニュースクリップ[-5/28] 「免許更新制『現職教員にも適用すべき』 中教審が案」ほか

マイスターです。

大学関連の書籍が探せるように、サイドバーにAmazon.co.jpのリンクを入れてみました。自動処理をさせているので、紹介されている書籍は、ページを読み込むたびに違いますが、ほぼ必ず、大学経営に関係する本が表示されるはずです。我ながら、こりゃ便利かも。テクノロジーの発達って偉大だなぁ。

さて、今週も一週間経ちましたので、恒例のニュースクリップをお届けします。

教員免許更新制、現職教員にも提供する流れです。
■「免許更新制『現職教員にも適用すべき』 中教審が案」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200605260200.html
■「教員免許更新、文科省報告『現職適用も法的に可能』」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060526i204.htm
■「教員免許:更新制、現職教員にも適用 文科省、中教審に報告へ」(毎日新聞 MSNニュース掲載)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/archive/news/2006/05/26/20060526ddm001010009000c.html

免許を得た時に更新制を前提としていない現職にまでさかのぼって適用することには「法律の一般原則に反する」との意見があり、「教員の負担を増やすだけ」「自発的に学び合う教員同士の研修会も発達している」など現職教員の反発も予想される。(毎日新聞記事より)

↑このような指摘ももっともです。特に、研修を受けるための時間的な負担をどう解決するかは、しっかり考えないといけません。

とは言え、免許更新制を現職教員にも適用するという決定自体は、個人的には妥当だと思います。
「自発的に学び合う教員同士の研修会も発達している」という意見はあるけれど、「とてもそれを感じさせないような教員が多い」、というのが、一般生活者の皆様の想いでしょう。

本当は、忙しい中、プロとして頑張っている教員も多いに違いありません。
部活動の顧問や、生活指導などに関しても、献身的な仕事をされているに違いありません。
ただ、そのように学内業務に追われているだけに、コアとなる業務であるはずの「教科に対する指導力」の維持向上については…あまり、市民からの信頼を得られていないように思います。
というより、この変化の激しい時代においては、「一度免許をとったら、二度とそれがチェックされない」という仕組み自体にかなり無理があるような気がします(その意味では教員に限らず、医師や法曹も定期的に大学で研修を受けた方がいいのです)。社会環境も人間の在り方もテクノロジーも変わっているのに、教員の知識をアップデートする仕組みがない状況が、そもそも、おかしかったんだと思います。

この免許更新制の議論は、現職教員の皆様にとっても良い機会です。

「今は忙しすぎる。研修を受けろと言うなら、そのための時間を確保してくれ!」

と声をあげ、お互いに主張を発信し合って、建設的な案を出して頂きたいと思います。ただ単に「法的におかしい!」と言ってしまうのは簡単ですが、個人的には、「現状の制度に無理がある」という前提に立った意見を出した方がいいんじゃないかと考えます。

ただ、教員免許更新制を導入することで、教育に関する問題すべてが解決すると考えるのは、危険です。

現在の教育行政の大きな問題点は、「見かけ上、いい制度があっても、それがうまく機能していない」というところです。子供に関して何か問題が起きた時、それを全部現場の教員に丸投げしてきたのが、これまでの行政でした。これじゃ、現場がまわらなくなるのは当然です。

教員免許更新制を導入し、研修を義務づけるのなら、そのための時間的ゆとりを現場の教員に与えてあげるべきです。
また、研究を受けさせるのなら、その成果を現場でちゃんと活かせるようにすべきです。ただ研修して、それまでと変わらない仕事をしていたら、研修の意味はありません。

教員を養成するためのコースが、高校に登場です。
■「塔南高:新設の教員養成学科、名称『教育みらい科』に 京都市教委、概要発表 /京都」
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/wadai/archive/news/2006/05/20060527ddlk26040599000c.html

京都市教委は26日、南区の市立塔南高校に来年4月設置する教員養成学科の名称を「教育みらい科」とするなどとした概要を発表した。生徒に将来目標を明確に持たせ、団塊世代の大量退職に備えた地元人材の確保や質的向上を図るのが設置目的。市教委学校指導課によると、高校に教員養成学科を設置するのは全国初という。(上記記事より)

量的需要に対応するために、こうした人材養成コースを作るというのはわかるのですが、ちょっと個人的には心配です。

今の日本の教育の問題の一つは、「教育現場しか知らない教員が、あまりにも多すぎる」ってことだろうと、マイスターはいつも考えているのです。
今だって、大学の教育系学科を出て、そのまますぐにどこかの学校に配属された教員が、ほとんどでしょう。でも本当は、職員室には多様なバックグラウンドを持った人材が揃っているべきなんじゃないでしょうか。
(職員室に限らず、社会の中のあらゆる職場で同じことが言えます。 こうした多様性を「ダイバシティ」といい、ダイバシティ・マネジメントをどのように行うかということは、企業でも今、盛んに議論されています)

ですので、高校の段階から、「めざせ教員」で人材養成するというのは、供給の量的な側面を除けば、あんまりメリットがないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

高校よりも、大学院段階での教員養成プログラムを充実させた方がいいんじゃないかな、と。

もっとも、↓こんな報道を見つけてしまったわけなのですが…

■「教職大学院、2007年度開設を断念 文科省」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/politics/update/0523/005.html

これまで有力とみられていた07年度の開設だと、今年6月末までの申請が不可欠となる。しかし、この日の中教審では、文科省側から「教育基本法改正をめぐる国会審議に区切りがついてからにしたい」として、中教審答申が7月以降になることが示された。このため、07年度の開設には間に合わず、早ければ08年度となる見通しとなった。(上記記事より)

残念ですが、これは仕方ないかも。まずは教育基本法からですね。

薬学部が拡大中…大丈夫?
■「薬学部、新たに5大学が来年4月の開設を予定」(薬事日報)
http://www.yakuji.co.jp/entry457.html

来年度の薬学部開設を目指す動きが、本紙の調べで明らかになった。既に大学設置・学校法人審議会へ諮問された兵庫医療大学(兵庫県神戸市)のほか、 [1]岩手医科大学(岩手県紫波郡)[2]いわき明星大学(福島県いわき市)[3]姫路獨協大学(兵庫県姫路市)[4]安田女子大学(広島県広島市)―― の4校が、薬学部の設置申請を予定している。申請通り承認されれば、2007年度には現在の67校に5校が加わって72校となり、定員も710人増えて1万3256人になる。各大学とも6年制のみの計画であり、6年制学部の薬学生定員は1万2017人に拡大する。(上記記事より)

最近、女子大をはじめ、薬学部を新設する大学が増えているようです。女子学生をメインターゲットとした学部の中では比較的、確実に学生を集められる「キラーコンテンツ」として機能してきたということ、6年制の導入によって学費収入増が見込まれることなどが、その背景にありそうです。
医学部や工学部などに比べれば、親切のための設備投資費も安そう。

でも、これだけ急激に薬学部が増えているのは、なんだか心配。
供給過剰になっていないでしょうか……?

大学経営者の皆様、お気を付けくださいませ。
なんだか、そろそろ慎重になった方がいい気がしますよ。

大学と地域との関わり
■「『大学まちづくり論』展開 公益大 理論と実践一冊に」(荘内日報ニュース)
http://www.shonai-nippo.co.jp/cgi/0/ad_vw.cgi?p=dy:2006:5:24
■「[文科省]『地域再生人材創出拠点』10カ所を初選定」(毎日新聞 livedoorNEWS掲載)
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1996429/detail

大学の機能はと聞かれて、「研究、教育、地域貢献」と答える方はけっこうおられるのですが、考えてみたら、学内に地域貢献事業専門のスペシャリストを抱えている大学なんてほとんどありませんよね。今思えばちょっと不思議、と認識させられた記事です。
上記記事で紹介されている本は↓こちら。マイスターもさっそく買って、勉強してみようと思います。

大学地域論―大学まちづくりの理論と実践

中国の大学が熱いです。
■「『中国情報局 留学』コンテンツで中国大学データベースを公開」(株式会社サーチナ・中国情報局)
http://searchina.ne.jp/pr/disp_press.cgi?y=2006&d=0522&f=net_0522_001.shtml

経済成長著しい中国。日系企業が工場や支社を現地に設立することはもはや珍しくもなく、最近では日本の大学が事務所を開設するくらいになっています。

というわけで、株式会社サーチナが、中国全土の大学348校の情報を集約した「中国大学データベース」を構築したとのことです。
実際のサイトを見てみると、地図から大学を探せるようになっていて、なかなかわかりやすいです。何より、無料の資料請求がサイトから直接行えるのがいいですね。大学によって、説明文がなかったり、あっても中国語だけだったりしますが、それでも便利。日本の大学関係者の皆様も、かの国の状況を調べたい時にはどうぞ。重宝しそうですよ。

中国の大学は、今後、より注目を集めていきそうですが、
ただ一方で↓こんな報道も。

中国の名門大学が、問題を起こしています。
■「上海交通大学、『国産DSP』はニセモノ」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060513AT2M1201U12052006.html
■「中国独自設計DSPは大学教授の捏造 ≪米のコピー、研究費15億円“詐取”≫」(産経web)
http://www.sankei.co.jp/news/060523/kok076.htm

上海交通大学は12日、同大学の研究者が開発したデジタル信号処理プロセッサー(DSP)「漢芯」シリーズについて、偽造や詐欺があったと発表した。
調査の結果、開発責任者が開発したものとは違うDSPを使ってデモ実演をしたことなどが判明したという。同大は責任者の教授職などからの解任を決定、中央政府の関連部門も同氏が担当するプロジェクトの停止や経費の返還請求を決めた。(NIKKEI NET記事より)

上記の記事の10日ほど後に報道されたのが、↓こちら。

北京=福島香織】中国で国内初の独自設計DSP(デジタルシグナルプロセッサー)とされた「漢芯」シリーズの研究が捏造(ねつぞう)だったことが上海交通大学の調査で判明した。温家宝首相も絶賛し、研究開発費など1億元(約15億円)を得ていたが、米製品のコピーとわかった。事件の背景には、核心技術をほとんど持たない後発国の焦りや知的財産権侵害に慣れきった研究者のモラルの低さなどが指摘され、中国の「独自技術」への信頼性を揺るがす問題に発展している。(産経web記事より)

上海交通大学は、かつての中国国家主席、江沢民氏の母校でもある、理工系の名門大学です。そんな中国の科学技術研究の最前線で、このような事件が起きてしまいました。原因について、産経webの記事は、

事件の背景には、核心技術の自主開発を焦る当局の研究費管理のずさんさや、知的財産権侵害に抵抗のない中国人科学者の功名心などが重なったとみられる。また鑑定に当たった中国科学院の専門家らによる汚職の可能性を指摘する声も出ている。

…と、このように分析しています。
知的財産権に対する意識の低さも、汚職も、中国の暗部としてしばしば指摘されることですが、大学という知的生産の場でもこうした事件が起きてしまうのは、残念です。

ちなみにこの上海交通大学については、↓このような報道もありました。

■「ネットで明かされた 有名大学『裏口入学』の実態」(日経BP)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20060523/102434/

上海交通大学の問題というよりは、中国という国家の問題、政治や社会の問題なのかもしれません。いずれにせよ、中国が世界で相応のポジションにつこうとするなら、こうした体質は早急に改められなければなりません。

※ちょうど一年くらい前に、本ブログで↓こんな記事も書いてました。
・国家の犯罪(2005年05月10日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/21515031.html

起源はやっぱりあの大学?
■「大学ノートの“大学”って何なの?」(ゲンダイネット)
http://gendai.net/?m=view&g=wadai&c=050&no=16925

よく考えてみると、不思議な名称。
詳細は記事をごらんください。起源はやはり…。

ちなみに、大学ノートの定番商品である、コクヨの「キャンパスノート」が発売されたのは1975年だそうです。
■「~キャンパスノート発売30年記念~『復刻版キャンパスノート』を数量限定で発売」(コクヨ株式会社)
http://www.kokuyo.co.jp/press/news/20050114-350.html

以上、今週のニュースクリップでした。

正直、今週は取り上げるべきニュースが多すぎて、掲載しきれませんでした。
いくつかは来週にまわるかも…。

今週も、本ブログをごひいきにしていただき、ありがとうございました。
来週も、どうぞよろしくお願い致します。
マイスターでした。