六大学野球 テレビ放映開始

普段、スポーツ中継の類をほとんど見ないマイスターです。

でも、「これは、考えてみるとかなり大きな影響力を持っているニュースなんじゃないか?」と思うので、ご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「日テレ、来春から六大学野球放映 早大戦には偏らず」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/culture/tv_radio/JJT200612050005.html
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東京六大学野球連盟は5日、都内で理事会を開き、来春のリーグ戦から日本テレビ放送網と5年間の放映契約を結ぶことを決めた。今夏の全国高校野球選手権大会で注目を集めた東京・早稲田実高の斎藤佑樹投手が来春早大に進学することは確実で、これまで以上に関心が集まるとみられる。ただ、早大戦に偏る放映にはしない方針。同連盟事務局は「できるだけ6校すべての試合を放送することで日本テレビの了解は取っている」と話した。

同リーグの放映についてこれまで複数の民放キー局から打診があったが、今秋のリーグ戦をインターネット放映するなど実績のある日本テレビに落ち着いた。放映の日時やカードなど、詳細は未定。NHKとはこれまで通り、放映契約を継続する。
(上記記事より)

民放キー局が六大学野球を生中継するのは、昭和56年に東大が優勝争いをした際以来26年ぶりだそうです。
さらに、日本テレビが六大学野球放映で複数年契約を結ぶのは、長嶋茂雄さんが立教大学で活躍していた昭和30年代以来のことなのだとか……。
大学スポーツのテレビ放映交渉を進める動きはたぶん以前からあったんだと思います。今回ゴーサインが出たのは、早稲田実業高校の斎藤佑樹選手の人気ぶりが理由でしょう。
一人の高校生が、大学業界に影響を与えてます。いやー、すごい。

・箱根駅伝と大学広報(1)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50126501.html
・箱根駅伝と大学広報(2)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50127127.html

↑箱根駅伝のときにも書いたのですが、「テレビで大学名が連呼される」というのは、それだけで大変なPR効果です。
他にも六大学野球のテレビ放映には、例えば以下のような効果がありそうです。

【大学への帰属心を高める】

学園を構成するメンバー(在学生、卒業生、教職員)の愛校心を高め、学園の結束を高める上で、大学スポーツのテレビ放映というのはかなり影響が大きいように思います。試合観戦を通じて学園のメンバーが一体感を持つ、メンバーがより母校を身近に感じ好きになる、ということが考えられます。
すると、大学にとって様々なメリットがあります。

まず、キャンパス内の学生達の活動に活気が生まれます。
社会で活躍している卒業生達も、誇りを持って「私は○○大卒です」と言えます。
卒業生達は、自分の子供にも母校を薦めるかもしれません。
また、卒業生や学生達の間に、大学スポーツという共通の関心事が生まれますので、横のコミュニケーションがとりやすくなります。ふと知り合った同門の方と、「いやー、我が大学はがんばってますね」なんていう会話で盛り上がれます。
寄付金戦略や大学の口コミ評判、学生募集戦略などにも影響が出るでしょう。
構成員達に愛されるというのは、大学にとっては学園の存続意義にも関わる重要なことなのです。

こうした学園文化を、普通に広報で実現しようと思ったら大変です。

・愛校心のカタチ(1):愛校心って何?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50201462.html
・愛校心のカタチ(2):自校教育の取り組み(私立大学)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50202356.html
・愛校心のカタチ(3):自校教育の取り組み(国立大学)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50204030.html

例えば現在、同じ目的で、↑「自校教育」のようなプログラムを展開する大学が増えています。しかし授業ですと学園の構成員すべてが参加できるわけではありませんし、一人の学生に継続的に働きかけることは難しいです。

その点、テレビ放映されるスポーツなら、継続的に、広い範囲にPRできます。

【大学の隠れファンを増やす】

野球はチームでの勝敗を競うスポーツですから、観戦するファンは特定のチームや選手を応援します。
斉藤選手のファンなら早稲田を応援するでしょう。自分が慶応出身なら、やっぱり慶応の勝敗がちょっとは気になるでしょう。自分が六大学出身でなくても、例えば父親が明治大卒だとしたら、なんとなく明治に肩入れしたりするかもしれませんよね。

そして駅伝もそうですが、若者が必死にがんばっている様子というのはそれだけで何か、応援したくなるものがあります(と、マイスターは思います)。プロ野球にはない、大学スポーツならではの魅力です。テレビ放映されることで、これまで大学スポーツに興味を持っていなかった方々の中にも、六大学野球ファンが出るかも知れません。
野球は観戦する側の年齢をあまり問いませんから、何年も放映を続けているうちに、子供のうちから大学名を知っているという層も出てくると思います。
スポーツでしか、こんなことは実現できません。

すべてが放映されるかどうかはわかりませんが、六大学野球の試合には、↓このような種類があるそうです。

【2006年の試合】

・秋季リーグ戦
・春季リーグ戦
・秋季新人戦
・春季新人戦
・社会人対抗戦
・大学野球選手権
・日米大学野球
・世界大学野球選手権
・夏季オープン戦
・春季オープン戦
・夏季キャンプ
・春季キャンプ
(「東京六大学野球連盟」より)

プロに比べれば試合数は非常に少ないのでしょうが、それでも結構、年中試合しているような印象がありますね。
日常的に見ていれば、大学名もより身近に感じられるというものです。

【大学のカラーを際立たせる】

「明治大学=バンカラ」というイメージが広く認知されている背景には、明大ラグビーのプレースタイルもちょっとは関係しているんじゃないか? とたまに思うマイスターです(もし明大ラグビー部が激弱だったり、もしくは全然相手とぶつかり合わないプレースタイルだったりしたら、明大の印象がちょっと変わるような気がするのはマイスターだけ?)。

今やテレビは、スポーツを演出します。ときに、過剰なくらいキャラクター付けします。そうやって「演出された」キャラクターが、大学のイメージに影響を及ぼすことが考えられます。

ただ、これには、良い影響もあれば、悪い影響もあると思います。

例えば、全然そうではなかったとしても、テレビ局側の都合で「いやぁ、明大の野球部はパワフルですねぇ重戦車軍団ですねぇ」なんて言い続けたりしたら、たぶん世間の明大イメージは(いっそう)そのようになります。
いいイメージならいいのですが、大学の広報部の思惑とずれたイメージの場合、修正は容易ではありません。どれだけがんばっても、こうやってできあがったキャラクターイメージは、そう簡単には覆せません。

六大学の野球部及び広報部は、ちゃんと日テレに、過剰なキャラクター付けをしないように要望しておいたほうが良いように思います。まさか神聖なスポーツを変にいじくりまわさないだろう……と考えるのは少々甘いかもしれません。
これは現在のテレビ制作者達の性質みたいなものですから、油断すると過剰演出されますよ。

……と、今思いついたのはこのくらいです。
他にも様々な点で、望ましい影響、望ましくない影響が出てくると思います。
もっとも全体としては、大学にとって好ましい影響が大きいと思いますから、あまり身構えることはないのではないでしょうか。

ただ、気になるのは個々の選手にかかる様々な負担です。彼らはプロではなく学生なのですから、学業や私生活に影響が出るような過剰なフィーバーぶりは好ましくないでしょう。試合はほとんど土日に行われるようですが、それでなくても練習はハードだと思いますし、ファンが寮や自宅に押しかける騒ぎが起きたりしないとも限りません。
各大学ともちゃんとそのあたりは対策を打つと思いますが、それでもテレビ放映の結果、学業や生活がさらに大変になったりしないか、やはり心配です。

試しに、選手達の学年と所属学部を調べてみました。

【六大学野球部の所属選手:学年構成】

1年 176人
2年 145人
3年 147人
4年 152人
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計 620人

(■「チーム」(東京六大学野球連盟)より作成。マネージャーなどは人数から除く)

選手数には最多の133人(早稲田)から47人(東大)まで差がありますから、あくまでもご参考まで。

ただ、それにしてもちょっと意外な結果。学年が上がっていくにつれて選手は減っていくものかと思っていましたが、それほどでもないのですね。就職活動とか卒論とか、大丈夫でしょうか。3年まで学業とスポーツを両立させられる自己管理能力があれば、なんとかなるのかな?

【六大学野球部の所属選手:学部構成】

法、文I 76人
商 68人
文、一文、二文、文III 68人
経済、文II 65人
スポーツ科学 61人
経営 52人
政治経済、総合政策 51人
環境情報 28人
社会 26人
理工、理、理I、工 26人
人間環境、人間科学 24人
キャリアデザイン 18人
コミュニティ福祉 16人
教育 16人
農、理II 15人
観光 10人
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合計 620人

(■「チーム」(東京六大学野球連盟)より作成。マネージャーなどは人数から除く)

やっぱり文系学部が多いです。ただ、それはもともと人文・社会科学系の学生が多いからだという気もします。
以前、箱根駅伝の選手の学部構成を調べたことがあるのですが、それに比べると、それほど選手の所属に偏りがないように思えます。医療系こそいませんが、理工系は結構、がんばっていますし。あ、東大法学部の選手も何人かいますね。

「箱根駅伝の出場校には、大学の宣伝のために選手を入学させているところも少なくない。したがってハードな練習を積ませるため、選手の所属学部をどこかに集中させて管理した方が都合が良い。
一方、六大学はそこまでしてスポーツで宣伝する必要がないから、学生の所属学部にもバリエーションが生まれる」

……なんていう仮説も立てられるかも知れませんね。これが正しいかどうかはわかりませんが。

ちなみに六大学の中には、スポーツ推薦制度のあるところとないところがあります。それをふまえて大学ごとに見ていくと、こうした学部構成の見方もまた違ってくるかも知れませんね。

いずれにしても、選手達はなかなかハードな毎日をおくることになりそうです。
まだプロではないのですから、体調管理と、成績には十分にご注意ください。見事に文武両道の充実した4年間を送られたら、それは大学の同級生達や先輩・後輩の皆さんにとっても励みになると思います。

個人的には、試合の放映が始まったら、心から観戦を楽しむつもりです。

以上、マイスターでした。