建設業界のニュースからわかる、大学の動き

マイスターです。

大学というのは、大きな組織です。
企業で言うと、例えばサービス業の場合、

5,000万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

……が中小企業の定義であると、中小企業基本法は定めています。
従業員が100人以上の企業は、一般に「大企業」と認識されるのですね。

この定義をそのまま当てはめると、かなり小さい単科大学も含めて、大抵の大学はいわゆる「大企業」クラスの組織規模を持っていることになるでしょう。
組織のミッションも存在意義も違いますから、単純に比較はできません。ただ大学という大きな組織が、周囲に対して及ぼす経済的な影響力が相当なものであるのは確かです。

さて、今日はこんなサイトをご紹介したいと思います。

【今日の大学関連ニュース】

↓まずはこちらをご覧下さい。

■「建設業界ニュース東京版」(建通新聞社)

初めてご覧になられた方も多いのでは。
こちらは、建設業界を対象にしたニュースを配信している、「建通新聞社」のサイトです。

建通新聞は、建設業の方々を対象にした、いわゆる業界向け専門紙。
東京版を始め、神奈川、静岡、中部、大阪、岡山、四国と、各地域版が展開されており、それぞれの地域の建設業の方々が購読されています。

サイトでは「建設業界ニュース」と称して、本紙に掲載される記事のタイトルと、記事の冒頭部分だけを読むことができます。
建設業界の方々は、仕事の発注を得るために、どのような業界がどのような建設投資を行っているかを日々チェックされていますから、こうした新聞やサイトが役に立つのでしょう。

で。

ここに大学や学校法人の名前が、出てくること、出てくること。
例えば東京版の、2009年のものだけでも、↓これだけ大学関連の建設計画が報じられています。

■【東京】10年着工へ設計など 東京理科大学(05/19)
■【東京】系列校で施設整備推進 國學院大學(05/19)
■【東京】池袋C総合体育館で計画策定 立教学院(05/15)
■【東京】青山C再開発に約85・9億円 青山学院(05/12)
■【東京】創立100周年に向けC再開発 上智学院(05/12)
■【東京】第3病棟建替えに向け検討開始 杏林学園(05/08)
■【東京】グランドデザインを策定 明治大学(05/08)
■【東京】二宮果樹園跡4・2ha売却 東京大学(05/01)
■【東京】新東京校用地追加取得決定 東京電機大学(04/28)
■【東京】東松山C建替1期に着手 大東文化学園(04/28)
■【東京】90年館と100年館を構想 昭和女子大(04/24)
■【東京】09年度の事業計画 法政大学(04/24)
■【東京】2学生寮を廃止へ 福島県(04/23)
■【東京】馬込キャンパス建設計画 立正大学学園(04/21)
■【東京】4年制大学誘致へ 墨田区(04/16)
■【東京】産学官の推進体制整備 国交省(03/26)
■【東京】大学機能を水道橋周辺に集約 東京歯科大(03/25)
■【東京】建築を類に委託 東大の理想の教育棟設計(03/17)
■【東京】跡地を東洋大学に売却 関東財務局(02/25)
■【東京】アドバイザリーを佐藤総合計画 東京大学(02/10)
■【東京】8月着工へ 青山学院大学A棟新築(02/06)
■【東京】UG都市建築で調査 東京工業大学(02/02)
■【東京】中野校で校舎新築へ 東京工芸大学(01/21)
「建設業界ニュース東京版」(建通新聞社)より)

「C」というのはキャンパスの略だと思います。

いかがでしょうか。
大学は、しばしば「○周年記念館を計画」みたいな構想を発表することがありますが、そんな情報を、同じタイミングで切って並べることができます。
これはこれで、今の大学業界のある一面が、なんとなーく感じられるような気がしませんか。

ライバルと称されるような各大学が、一斉に同じタイミングでキャンパスを再開発していないか?
……等々、色々と考えながら眺めると、結構面白いです。

周年事業も少なくありません。
「大学は、周年事業の一環で建物を造る」という慣例(?)が、こんなニュース欄からも感じられます。

試しに、ニュースをひとつ見てみましょう。

■「 【東京】池袋C総合体育館で計画策定 立教学院(05/15) 」(建設業界ニュース東京版)

学校法人立教学院(豊島区西池袋3ノ34ノ1)は、2009年度の事業計画をまとめた。立教大学の池袋キャンパスでは、大学と池袋中高とが共同利用する学院総合体育館新設の実施計画を策定するほか、新座キャンパス新教室棟建設工事に着手する。また立教新座中学校・高等学校では、本館と体育施設の建て替えなどを予定。さらに立教小学校でも校舎建替え計画を策定する。また、ことしが学院創立135周年に当たることから、記念事業プロジェクト「立教未来計画」を立ち上げた。2009年度中に10年度~13年度の4年間の短期事業計画と、今後8年間の中期事業計画を立案する。今後10年間で総額約400億円を投じ施設整備を行う構想だ。
(上記記事より)

↑こんな感じ。
建設業の方々から、大学や学校法人がどう見えているのかがよくわかります。

「今後10年間で総額約400億円を投じ施設整備を行う構想だ」というあたりから、「お、建設需要があるかも」なんて、業界の方々は考えるのでしょう。
建通新聞に掲載された途端、その学校にゼネコンの営業がやってくる、なんてこともあるかもしれませんね。

キャンパスを再開発するとなると、建物だけでなくそこに納入される家具やインテリア、電機機器、書籍等々、様々な需要が発生しますから、様々な業界の方がこうしたニュースに注目されているかもしれません。

大学は、校舎など一定水準以上の学習環境を整備することが求められますから、建設費だけでも業者に対し、かなりの仕事を発生させています。
大学の年間予算額は同規模の企業と比べてかなりのものですから、こうしたニュースの影響力は小さくないでしょう。

ちなみに大阪版では、大学関連の話題はぐっと減って、↓こんな感じ。

■ 【大阪】大阪市立大がCM会社の募集公告開始(5/18)
■ 【大阪】大阪府立大学 12棟を耐震含め改修(5/8)
■ 【大阪】府立大跡地を学校法人から購入募る(4/24)
■ 【大阪】文科省発注見通し 阪大で微研本館を改修(4/6)
■ 【大阪】千里留学生会館跡は関大が優先交渉(3/26)
■ 【大阪】大阪市大理系学舎整備でSPC組成(1/27)
「建設業界ニュース大阪版」(建通新聞社)より)

↓こんな風に、具体的な仕事に関する情報もあります。

■「【大阪】大阪市立大がCM会社の募集公告開始(5/18)」(建設業界ニュース大阪版)

大阪市立大学は、理系学舎整備のCM会社(コンストラクション・マネジメント会社)募集を開始した。参加申請書、技術提案書の提出を6月19日まで受け付け、審査後、7月中旬にCM会社を決定する。2棟で延べ1万2,100㎡の新棟建設や既存施設の耐震老朽改修を行うのに際してコスト・品質・スケジュール管理、設計・施工者の選定支援などの業務を行う。契約期間は2015年3月31日まで。予定価格は9,700万円。
理系学舎整備では、事業者となるSPC(特定目的会社)の(仮称)合同会社・市立大学舎等整備センター設立を予定しているが、設立に時間を要するため、市立大学が融資金CM会社を選定。CM会社は設立後のSPCと契約する。
応募資格は、①1998年度以降の完了で、教育研究施設のCM業務または、設計・工事監理業務の実績がある②資本金または基本財産2,000万円以上で従業員数100人以上③大阪府内に本社、支社または営業所を有する-など。
理系学舎整備は、本年9月から10年4月までで設計を行い、2010年9月から15年3月の期間で施工する。
(上記記事より)

大阪市立大学の場合、大学の公式サイト側にも、↓こんな情報が掲載されています。

■「大阪市立大学(杉本地区) 入札・契約情報サービス」(大阪市立大学)

公立大学法人の場合は税金が投入されることもありますし、指定入札関係など色々ルールが顔を出す部分もあるのかもしれません。

一言で「再開発」と言っても、大学の規模や計画の範囲によって建設規模はかなり違ってきます。
大学のパンフレットを見比べても、そのあたりはあまりわかりませんが、こうした業界紙はそのあたりを詳細に報じているので、

「あぁ、意外に大規模な開発なのかも」

……みたいな想像ができたりします。

業界専門紙の情報収集力は侮れないので、こうしたニュースの中から、ライバル校の動きを早めに予測することもできるかもしれません。
たまにこうしたニュースをご覧になると、色々と発見があるかと思います。

以上、大学の動きを知るにあたってはこんな切り口もありますよ、というお話しでした。
ご参考になればと思います。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。