メダリスト達に囲まれて暮らしていたことがあるマイスターです。
……っていうのは、長野パラリンピック村でのボランティア経験のことなのですけれど。大会期間中、数日間パラリンピック村に住みこんで、選手達の荷物を運んだり、隣のテーブルで食事を食べたりしました。
身近に見るアスリートは、本当にすごいです。
パラリンピックの場合、足が不自由な選手は手の、手が不自由な選手は足の鍛え方がすごいのです。きっと、それぞれの身体機能の特質にあわせてトレーニングを行い、オリンピック選手とはまた異なる鍛え方の筋肉や、体のバネの使い方を身につけるのだと思います。競技の映像を見ていても、これまで見たことがないような種類のパワフルさを発揮していて、息をのみます。
そんな世界トップアスリート達と、わずかな間でも身近に接することができたことは幸運だったと思っています。
ところで、オリンピックやパラリンピック、あるいは他のあらゆるスポーツ競技すべての選手に共通していることがあります。
スポーツ選手達は、競技で良い成績をあげることの他に、
「人々の励みになり、人々に夢を与える」
という、大切な役割を担っているということです。
その意味では、偉大なスポーツ選手は、偉大な教育者になる素質を秘めていると言えるのかも知れません。
というわけで今日は、そんな方々の話題です。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「いざ、全入時代! 学生確保、大学知恵比べ PR多様化」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200609250184.html
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追手門学院大(大阪府茨木市)で8月26日にあったオープンキャンパス。案内に動き回っていた入試広報課員の巽樹理さん(27)が高校生から「一緒に写真撮っていいですか」と声をかけられた。
同大学出身の巽さんはシドニー(00年)、アテネ(04年)両五輪のシンクロナイズドスイミングのチーム競技の銀メダリスト。在学中の活躍や実行力が評価され、職員となった。年に50回ほど小学校や地域団体の依頼で講演し、学内イベントで司会を担当する。オープンキャンパスでは、一緒に歩いた高校生に、在学中の思い出やシンクロの経験を話した。参加者からは「職員にメダリストがいるなんて」「身近で五輪の話を聞けて良かった」との感想が寄せられたという。高校生たちに渡されるパンフレットでも「銀メダリストの巽樹里さんが、皆さんをお待ちしています」とアピールしている。
巽さんは「私が動くことで、この大学になじみのある人が増えてほしい」と話す。スポーツで実績を残した卒業生を職員に採用し、その知名度や存在感を生かして大学の「顔」とする大学が増えている。
アテネ五輪の競泳200メートルバタフライの銀メダリスト、山本貴司さん(28)は近畿大(大阪府東大阪市)の入試広報課員。大学の特徴の説明のために高校に出向くことも多いが、「聴いてくれる高校生の真剣味が違う」(広報課)という。6月に大阪府内の大学が共同で開いた説明会でも講演の舞台に立った。
平安女学院大(大阪府高槻市)を運営する学校法人本部職員で、平安女学院高校OGの北尾佳奈子さん(24)は、アテネ五輪のシンクロチームの銀メダリスト。学内のファッションショーの司会やモデルをしたり、イルミネーションを企画したりと大活躍だ。山岡景一郎理事長は「学生にとって身近なあこがれの存在。一緒に活動するのがうれしいのか、学生が自然と企画に乗ってくる」と話す。
大学に在学している間に世界の舞台で成果を上げるスポーツ選手はいます。
同じ大学の仲間がオリンピックに出場して、しかもメダリストとして活躍して帰ってきたなら、うれしいですよね。大いに、学園の構成員達の励みになることでしょう。
そんなトップアスリート学生の方々を、そのまま母校の職員として採用している大学があるのですね。
スポーツの指導をするため……ではなく、大学の広報活動に従事してもらうためです。
オリンピックメダリストともなれば、知名度は絶大です。
また、仮にそれまで知らなかったとしても、「オリンピックメダリストの○○です」と紹介をうければ、見る目も違ってこようというものです。高校生も、話を聞いてみようという気になるのでしょう。
そんなオリンピックメダリストの大学職員さんが、記事に出てくる方だけで3人もいらっしゃるのですね
やはり皆様、入試広報課や企画関係など、学生や学外の受験生達に直接触れる機会のある部署に配属されているようです。
こうした方は、全国を見れば、他にももっとおられるかも知れません。
「オリンピックのメダリスト」ではないけれど、スポーツでの活躍が認められて母校に職員として入り同様の活動を行われている方は、さらに多くいらっしゃるんだろうと思います。
企業もスポーツ選手を社員にすることがありますが、その場合、「広告塔」としての役割が期待されていることが多いようです。
今回ご紹介した記事のメダリスト大学職員達にも、同様の役割がないわけではないでしょう。メダリストという知名度を、広報の武器にしているわけですね。「知名度」はやはり重要です。
ただ大学職員として働く場合は、単なる広告塔としてだけではなく、他にも様々なところでその経験を生かすことができると思います。
Asahi.comの記事にある、高校生向けの講演などは、そのひとつでしょう。
大学の紹介をしに行っているのではありますが、記事によるとそこでは、オリンピック参加を通じて得られた経験や、競技生活を通じて得られたことなどについてもお話しされているようです。
高校生達は、「大学で何かに打ち込んだ4年間」というテーマを、オリンピック出場という題材で考えることができるのですね。
何しろ、「合コンに明け暮れて、適当にぶらぶらしていた4年間」なんてのとは真逆のストーリーです。若者が、刺激を受けないはずがありません。
自分にも何かできるのではないか。
自分も何かに打ち込み成果を出したい、完全燃焼できる4年間にしたい。
そんなことを高校生達に強く思わせることができる広報課職員は、全国にもそう多くはいないと思います。
冒頭のAsahi.comの記事で取り上げられている3人の方は、競技者としての能力だけでなく、企画力や実行力も認められているようですから、様々な場面で活躍されることでしょう。
在学中に周囲の皆を勇気づけたその経験を、後輩達にも伝えてあげて欲しいと思います。
マイスターは思うのですが、広報、特に「入試広報」という部門には、いろいろな経歴の方がいていいんじゃないでしょうか。
大学の魅力というのは一つや二つではありません。様々な見方やとらえ方があっていいはずです。
今回ご紹介したような、大学時代にスポーツをやっておられた方は、スポーツをやっていなかったマイスターのような人間とはまた違った、大学生活の良さを知っていると思うのです。
商品の宣伝をする人間に必要なのは、その商品の魅力を知っているということです。
大学院まで進学した経験がある職員、
民間企業に就職した経験がある職員、
留学経験がある職員、
自校出身の職員/他大学出身の職員、
サークル活動に打ち込んでいた職員、
……みな、それぞれ違った「大学の魅力」を知っているはずですよね。
自分の言葉でそういった魅力を語れる方が入試広報課に集まっている、というのが理想なのではないでしょうか。
また、魅力を語れるスタッフという点では、学んだ学部学科も重要です。
例えば大学職員という職業にはいわゆる「文系」の学部を出た方が多いようですが、理工系大学の入試広報課には当然、理工系出身の方も何人か、必要です。
同様に、医科大学の入試広報課なら、医療関係の勉強をした方が一人はいるのが望ましいです。美大や体育大なども同じです。
その分野の勉強を「面白い!」と感じ、自分も4年間それに打ち込んだという経験のある方がいるのといないのとでは、入試広報の内容は全然違ってくると思います。
電車や駅構内に出されている大学の広告を見ていると、中には「その大学の学問の何が魅力なのか、見てもよくわからない」というものもあります。
きっとその大学で楽しく学業に打ち込んだ方が、スタッフの中に一人もいなかったんだろうなと思わせる広告です。
こういった事態を防ぐためにも、大学という場について、また大学4年間という時間について、自分自身の言葉で語れる職員が必要なんだろうと思うのです。
学生メダリストだった経験を持つ大学職員というのは、大学生活のある面についての魅力を、説得力を持って語れるという点において、色々と活躍できる場があるんじゃないかと個人的には思います。
以上、マイスターでした。