マンガでわかる学問シリーズ:『MASTERキートン』

MASTERキートン (11)

昨日の「のだめ」のせいで、ブログの読者が減ったらどうしようかと思うマイスターです。
でも、ご紹介する意味があると思って書いているわけだし、いいよね。

…などと、自分を強引に納得させつつ…

「マンガの中で描かれる学問 第2弾」

は、私の独断と偏見により、

『MASTERキートン』

に決まりました!

何しろこのマンガ、私が大学生だった頃、学内広報誌の
「教授が学生に薦めたい本」
の中にリストされていて、内容を知ったという作品ですからね(本当)。

主人公、「平賀 = キートン = 太一」は、日本人動物学者の父と英国人の母を持つハーフです。英国籍を持っています。

英国の寄宿学校を出たあと
オックスフォード大学で考古学を専攻したという男性で、
一言で言えば、古代へのロマンを糧に生きている教養人です。

その後、夢見がちな自分を変えたくて、英国の軍隊に身を置き、大きな功績を残します。
が、やはり考古学の夢を捨てられず、論文を書き、考古学者を目指しながら、保険の調査員をして食っていく日々…

とまぁ、そんな設定です。

英国特殊空挺部隊の教官(マスター)であり、
大学で考古学を教える非常勤講師の学者(マスター)であり、
凄腕(マスター)の保険調査員。
それで、マスターキートン、というわけです。

文字通り、世界中を舞台にして活躍するキートン。

考古学者としての知識と、
軍隊上がりの技術を駆使して、
危機を乗り越えていく姿は、なんというか、ものすごくカッコいいです!

砂漠でもジャングルでも、キートンは決して動揺しません。
幅広い学術知識を総動員して、どんな環境でも生き延びます。

007やルパン三世など、危機を乗り越えるヒーローというのはよくありますが、それプラス、「ロマンチストな考古学者」「教養人」という要素を合わせ持っている主人公というのは、とても新鮮です。

作品全体の情報量も、ものすごいです。
考古学や歴史学はおろか、政治、国際関係などなど、あらゆる分野にまたがる膨大な情報が、作品を支えています。
読んでるだけで、知識人になったような気分になれます(笑)
(マイスターは、世界史が大好きなので、そのあたりもツボにはまりました)

『MASTERキートン』では、作品全体を通じて、

「人間は、なんのために学問を行うのか?」

というテーマが描かれています。

考古学というのは他のジャンルと比べると、それを学んだからといって何か得するわけでもない学問、であるかも知れません。(考古学専攻の方、すみません)

だからこそ逆に、「なぜ、学ぶのか?」という問いが、とてもリアルなものとして感じられるのだと思います。

軍隊や保険調査員という「徹底的に現実主義」な世界に身を置きながら、常に考古学という学問の世界を志しているキートンの姿には、なかなか考えさせられるものがあります。
殺伐とした現実世界に生きながらも、世界各国の人々にキートンが向ける暖かなまなざしには、ある種の哲学のようなものが感じられます。

○純粋に学問を続けていくことの難しさ(経済的な困難など、いろいろ)

○日本の学者世界の閉鎖性

○自分の本当にやりたいことと、現実生活の間の葛藤

など、様々なサブテーマも盛り込まれているように思います。

一見、飄々と生きているように思えるキートンですが、
そこには学問を巡る、深い哲学があるのです。

読むことで、学問の奥深さ、素晴らしさを知ることができるマンガ。

そういう意味では、この『MASTERキートン』に勝る作品はありますまい。

ぜひこれを読んで、学問の格好良さ、奥深さに触れてください。

学生さんだけでなく、現職の研究者の方などにも、お勧めです。
あと、人文科学系の学科に進学される方が身近にいらしたら、ぜひ、読むように薦めてください。
絶対、得るものは大きいと思います。

『YAWARA!』『MONSTER』『20世紀少年』などで知られる浦沢直樹さんの作品ですので、絵もキレイで読みやすいです。
学究志向と現実主義が融合した世界観をお楽しみください。

以上、キートンのような生き方にあこがれるマイスター(定年後は大学に入り直して、考古学か歴史、哲学を学ぶと決めている)でした。

1 個のコメント

  • 「キートン 学ぶ」で検索しましたが
    みなさんいい感想が多いですね。