マイスターです。
前の職場(Webプロダクション)に勤め始めたとき、最初にやった仕事は、
「企業のwebサイト100社分を隅々まで閲覧し、どんな広報コンテンツが、どのくらいの分量で公開されているかを調べ、レポートにする」
…というものでした。
食品関係、家電メーカー、建設会社、住宅メーカー、アパレルや化粧品などのメーカー、電気やガスなどのインフラ産業、各種の外資系企業などなど、あらゆる業種の企業、計100社。
それらすべてについて、Annual ReportやCSR報告書の有無を調べたり、各社オリジナルコンテンツの特徴とhtml数をまとめたりする仕事でした。
全部一人でやったわけではなく、同期(レポート完成の1ヵ月後に失踪)や上司と分担して作業を進めたわけですが、それでも数十社のwebサイトを見たわけですから、かなり時間がかかりました。
大変でしたが、この経験は、後々にものすごく役に立ったと思います。
何十社もの広報コンテンツを見てまわっていると、
「全体として環境対策に熱心な産業分野はどこか」とか、
「業界では二番手だけどCSRコンテンツは抜群にすばらしい企業がある」とか、
「妙に投資家対策だけが充実している企業がある」とか(笑)、
そういった、日本の企業サイトの「平均水準」や「傾向」、「流行」のようなものがおぼろげながら見えてくるのです。
企業の方は、自分の競合企業や同じ業界の会社のサイトは熱心に見ていますが、他の業界の中堅企業が世にもすばらしい広報コンテンツを制作しているなんてことは、まず知りません。実はほとんどの方々が、とても狭い範囲内の動向しかご存じないのです。
一方こちらは、日本全体の現在の流行を知っているわけで、これが、企画を提案する際に、非常に強力な武器になったわけです。
マイスターは今でも、大学のサイトと同じくらい、全然違う業種のwebサイトを見てまわっていますが、それは、こういった経験があるからです。
ところで、大企業のwebサイトではかなり重視されているけれど、大学サイトではあまり重視されていないコンテンツって、色々とあります。
その一つが……環境対策コンテンツです。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「大学の現状を公表し提言も 京大、環境報告書を発表」(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2006092500173&genre=G1&area=K10
・「環境への取組 環境報告書2006」(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/kankyo/report.html
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京都大は25日、京大での消費エネルギーや廃棄物排出量などの現状や、削減の取り組みなどをまとめた「環境報告書2006」を発表した。京大として初めての報告書で、広く意見を募るため京大のホームページでも同日公開した。
環境報告書は、多くの国立大で本年度から作成が義務づけられた。京大では教職員のワーキンググループを中心に作成、学生や市民、企業の環境担当者ら学外も含めた検討委員会を国立大として初めて設置、大学への提言もまとめた。
(略)
担当の環境安全保健機構長の大嶌幸一郎教授は「初めての報告書なので、まずデータをまとめることに力を入れた。負荷軽減に向けた計画や数値目標が次の課題だが、学生や教職員1人1人の行動をお願いしたい」と話している。
学内で配布する冊子(ダイジェスト版)には、表紙への公募で寄せられた第四錦林小(京都市左京区)の児童の絵画など62点も掲載した。京大は10月10日に環境負荷軽減の計画を検討する委員会を発足予定で、学外からも環境保全へのアイデアを募る。
(上記記事より)
「環境なんたら学部」みたいな学部を積極的に作って受験生を増やしてきた大学が、自分達の環境対策について積極的に語っているかというと、必ずしもそうではなかったりします。
「いちおう、各種、最低限の調査などは行っているけれど、その結果は紙パンフに刷って、学内のロビーの片隅に積んでおくだけ」
というレベルの「環境対策」も、残念ながらよく見かけます。義務感でやっているだけだという大学ですね。
では、企業はどうでしょうか。
大企業はどこも、PR活動の一環として、環境コンテンツに力を入れています。
まず、環境報告書がよく出来ています。豊富なデータや各担当者のインタビュー、社長対談、今後の展望などを読みやすくまとめ、非常に美しいデザインで仕上げていることが多いです。
メインのターゲットは、ずばり、「消費者」。そのため、一般市民が読んでも理解できるように工夫されたものを作っているというわけです。
ただ、「環境報告書」をPDFファイルで公開しているだけでは、十分なコミュニケーション活動だとは言えません。
いまや多くの企業は、ちゃんとした「環境コンテンツ」を、それなりの予算と手間をかけて制作しています。
■「コクヨのエコロジー」(コクヨ株式会社)
http://www.kokuyo.co.jp/eco_ud/ecology/index.html
上記はその一例です。
見てみていただくとわかるのですが、「環境・社会・CSR報告書」というのは、数ある環境対策紹介コンテンツのうちの一つに過ぎないのですね。
写真やグラフをふんだんに活用し、ときには統計データで、ときには担当社員へのインタビューで、自社の環境活動をなんとか伝えようとしているのがお分かりでしょうか。
「結の森」のような特設コンテンツも用意しています。
わざわざ、PDFを開いてレポートを読んでくれる人というのは、ユーザーの中からすれば、ごくごくわずかな層に過ぎません。
下手をすれば、「同業他社の環境担当者」といった玄人ばかりが読むコンテンツになってしまうかもしれません。専門家に読まれることは悪くないのですが、せっかくの環境対策ですから、広く知ってもらわないと、もったいないですよね。
そこで企業では、ちゃんと手間とお金をかけてWebサイト専用の環境コンテンツを制作するのです。FLASHアニメーションや印象的なビジュアルなども用いて、データや個別トピックを、ブラウザで閲覧できるようにします。
んで、興味を持った方が、「より詳しく知りたい」と思ったときに、初めてPDFの環境報告書を読むのです。
京都大学の報告書はPDFで公開されていますが、報告書の中身はなかなかよく出来ているようにお見受けします。
また、省エネ対策に関しては、htmlで読める情報も用意されています。
■「環境への取組 省エネルギー」(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/01_kankyo/torikumi.htm
あと、「環境用語集」というコンテンツが公開されているのですが、こうした取り組みはすばらしいです。
■「環境用語集」(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/kankyo/report_term.html
しかし全体としては、やはりテキストやPDF内の情報が中心であるようで、サイトをまわっているだけだと、活動を進めている皆様のイメージが伝わってこないのが少々惜しいです。
欲を言えば、省エネ関連に限らず、環境対策の要所要所についてもwebサイト用コンテンツとして読んでみたいところ。
環境報告書の公開は、国立大学では初だそうですから、ぜひ今後とも、他の国立大学に刺激を与えられるような取り組みを進めて行っていただきたいと思います。
さて、最後に便利なサイトをご紹介しますね。
■「大学の環境、社会・CSR報告書データベース」(エコほっとライン)
http://www.ecohotline.com/university/
日本の大学の、環境関連コンテンツ一覧です。これは便利。
マイスターも、すべてをじっくり見たわけではありませんが、このリストをざっと拝見し、以下の2校は、比較的熱心に取り組みを進めているという印象を受けました。
■「法政大学の環境問題への取り組み」(法政大学)
http://www.hosei.jp/kankyoukenshou/
■「日本工業大学:環境への取り組み」(日本工業大学)
http://www.nit.ac.jp/eco/
他にも優れたサイトやコンテンツはあると思いますので、皆様も、じっくりと見てまわって、参考になる表現や取り組みを探してみてください。
そうやってお互いにレベルアップしあった結果、「日本の大学はどこも環境対策に熱心だ!」と社会の皆様から思ってもらえるようになったら、すばらしいですよね。
知識集団として、環境対策でも日本をリードできるようにがんばろうではありませんか。
以上、マイスターでした。