キャビン・アテンダントを目指す大学のコースが大人気?

マイスターです。

以前勤めていた会社は、とある航空会社のオフィスと同じビルに入っていました。
その航空会社は、客室乗務員の外注化、契約社員化を派手に推し進めていたようで、しょっちゅう、ビルの前で労働組合による抗議デモが行われていました。

マイスター達が自分達のオフィスで仕事をしている間も、外のデモ隊が拡声器で

「客室乗務員というのは、サービス業ではない!
 万が一の場合お客様の安全を守る、航空保安業務のための役割が第一である!
 それを、単なるサービス業と同列に考え、外注化するとは何事か!
 ……」

といった抗議をえんえん、ビルに向かって繰り返していました。
マイスター達は他人事としてそれを聞きながら、パソコンに向かってメールを打ちつつ、

「そうだったんだ……どっちかというとサービス業だと思ってた」
「俺も」
「私もです」
「っていうかさ、保安業務がメインなら、なんであんなに女性ばっかりなんだろう?」
「だよなぁ」
「だって、そんなに事故とか起きないもん。保安は重要な仕事だけど、実質的にはサービス業としての仕事が多いってことじゃないですかねぇ」
「なんたらアテンダント、とか呼ぶもんだから、余計にその部分のイメージが強まってるんじゃない?」
「……どっちにしても、なんかあったときに、サービスがいいだけのパートさんじゃ怖いっすよね」
「(声をそろえて)確かに」

……みたいな会話をしていました。
とても勉強になりました。

(しかし、デモ隊がビルの入り口を取り囲む中、そのビルの中に入っていくというのは非常に勇気のいる行為です……)

飛行機に乗ったときに見てみると、確かに客室乗務員の方々は非常時の脱出方法の説明や、ドアロック、各種設備の確認といった保安業務を行っています。
また当然、非常時の対応方法も一通り身につけているわけです。きっとそれなりに厳しい訓練を体験してきたんじゃないかなぁ?と勝手に想像します。

そんなわけでマイスターの、客室乗務員さんたちののイメージは、

「普段はサービス業のプロだけど、何かあった場合は、急に訓練されたレンジャーのような動きを見せる人達」

というものです。実際には幸か不幸か、まだ客室乗務員の皆様がレンジャーのように動くシチュエーションには出くわしたことがありませんので、あくまでも想像ですが。

飛行機の客室乗務員、最近はCA(キャビン・アテンダント)なんて呼ぶことが多いようです。
さて、前置きが長くなりましたが、このCAを目指す専門のコースが大学にでき、受験生を集めているようです。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「客室乗務員を養成…東京・桜美林大が来年度コース新設」(読売オンライン)
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_06120617.cfm
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桜美林大学(東京都町田市)は来年度、航空機の客室乗務員を養成する「キャビン・アテンダント(CA)コース」を新設する。4年制大学が客室乗務員養成コースを設置するのは初めてと見られ、文部科学省大学設置室や日本航空など大手航空会社も「聞いたことがない」としている。
(略)
客室乗務員は女子学生の人気職種の一つ。同大からも毎年、数人が海外を含む航空会社に採用されている。しかし、各社とも採用試験の競争率は数十倍と高く、就職を希望する学生の多くは夜間、専門学校で学んだ上で受験している。
こうした状況を受け、同大学は「大学で、必要な教育をすべて受けられるメリットは大きいはずだ」とし、専攻コースを設けることで必要な教育カリキュラムを組むことにした。
(上記記事より)

大学初のパイロット養成コースが、ついこのあいだ東海大学にできたばかりだったのに、今度はCAですか!

(過去の関連記事)
・大学で、航空機のパイロットを目指そう
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50267784.html

桜美林大学も、パイロット養成コースの開設を目指すと報じられておりましたが、どうやらCA養成コースが先にできてしまいそうです(想像ですが、パイロット養成コースは飛行実習ができる環境の準備などに時間がかかるのでしょう)。

記事にもあるように、CAは女子学生にとって人気職種の一つ。そのため、航空会社にCAとして就職させるための専門学校も存在します。ですから、それくらい人気があるのなら、コースにしてみたら受験生が集まるのでは……と考えた大学関係者は以前から大勢いたに違いありません。
桜美林大学は、その実践例第一号となるようです。

■「ビジネスマネジメント学群 キャビンアテンダントコース」(桜美林大学)
http://www.obirin.ac.jp/034/a020r.html

↑こちらで、カリキュラムの概要が説明されています。

冒頭でもご紹介したように、CAの仕事は乗客への機内サービスの他、機内の清掃、保安業務、そして大事な緊急事態対応などがあります。

桜美林大学のカリキュラムは、上のページを見る限り「サービス」の部分と、「(ビジネスとして)航空産業のマネジメントを考える」という部分に焦点を当てているように思われます。「ビジネスマネジメント学科」の中に設けられたコースですからね。
専門学校との差別化を図ろうという意図もあるのかなと思います。

さてさて、先日新たに報道された内容によると、このコース、やはり人気を集めているようなのです。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「桜美林大ビジネスマネジメント学群、志願者25%増」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news2/20070201wm02.htm
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町田市にキャンパスがある桜美林大ビジネスマネジメント学群(募集定員400人)の志願者が、昨年に比べて約25%も増えている。同学群に今春、4年制大学としては初めてと見られる航空機の客室乗務員養成の「キャビン・アテンダント(CA)コース」が新設されることが、志願者増の要因と見られる。

CAコースは、昨年4月に開設されたビジネスマネジメント学群の五つ目の専攻学科。1年次では学生全員が経営や会計の基礎を学び、同コースへ進めるのは、2年次への進級前の選考で30人程度だけの“狭き門”となっている。

同大学によると、同学群の志願者(30日現在)は、昨年同期より395人多い1968人。志願者倍率は4・9倍で、昨年の3・9倍を大きく上回っている。2~3月に大学入試センター試験利用などの募集も行われるため、志願者数はさらに増える見込みだ。
(上記記事より)

この通り、好調のようです。
おそるべし、CA。やっぱりあこがれの職業なんですね。

ただこの記事にもあるように、桜美林大学の場合、入学後にコース分けがあります。
ですから希望してもCAクラスに入れない人だって、出てくるかも知れません。「狭き門」には変わりないのです。
本気でCAを目指す方は、入学後もしっかり勉強して、成績上位をキープしてください。

ただ、CAというのは人気職業ですが、やや特殊な状況の上に成り立っている職業でもあるということは受験生も、我々大学関係者も知っておいた方ががいいかも知れません。

■「JAL採用情報 – 客室乗務員(契約社員)(募集要項)」(日本航空)
http://www.jal.com/ja/saiyo/apply/cabin.html
■「採用情報:客室乗務員(スカイサービスアテンダント)【新卒】」(全日空)
http://www.ana.co.jp/recruit/kyaku/form_shinsotsu.html

JALもANAも、CAは契約社員という形でしか新卒を採用しておりません。
一応、3年目以降は正社員に切り替えますとありますが、パイロットや総合職は最初から正社員なのにCAだけこのような扱いになるのは妙だと思いませんか。
(ちなみに契約社員の間、給与は時給計算です)

冒頭のデモの話でご紹介したとおり、CAは保安業務や緊急対応のプロでもありますが、実際の仕事では、乗客に対する機内サービスがかなりの比重を占めるようです。
そして、今度飛行機に乗るときに周囲を見てみてください。ベテランと思しき方もちらりと見えますが、実際にはCAの大半が、若い女性です。
彼女たちは、数年働いたらどうなるのでしょうか。正社員としてその後ずっと働き続けるCAは、機内の様子を見ている限り、そんなに多くないように思えます。

それは「地上勤務」になっているからだ? いえいえ、もしそうなら100人も200人も採用しません。そんなに地上に人が必要になるわけではないでしょうし、地上職は地上職で別に採用しています。そもそもJAL、ANAの採用ページにもあるように、CAは全員、初めから「CA」として採用されているのです。他の業務を担当することはそうそうないでしょう。
なのに上記の採用ページを見てみると、JALは東京地区で200名程度、ANAは羽田180名程度、伊丹(大阪)20名程度の採用を計画しているとあります。別に会社が急成長しているわけでもないのに、この数、多すぎると思いませんか。

ちょっと考えてみれば、「数年で大半が辞める職場なんだ」ということがすぐにわかるでしょう。

ついでに言うと、企業の側は「男女平等」を謳っていますが、実際には大手航空会社で男性のCAの採用はほぼないと聞きます。
大学の養成コースには、男子学生もそれなりの人数が入ってくるかも知れませんが、実際の採用はそんな状況ですので、気をつけた方が良いと思います。

もし大学でCA養成のコースを造るというのであれば、こういった特殊なCAのキャリアパスについても、早い段階で説明された方が良いかと思います。

CA養成コースというのは、何となく今後、様々な大学で作られそうな気がします。
パイロット養成ほどコース開設にお金や時間がかからなそうですし、受験生からの人気も得られそうですからね。
今回、桜美林大学が受験生を増やしたと聞き、そうかそうかと考えた全国の大学で「観光学科CA養成コース」みたいな学科が山ほどできるような予感がします。

でも、プロフェッショナル・スクールという形で売り出すのであれば、「ただ契約社員として航空会社に採用されたらそれでOK」というだけではなく、その後のキャリアパスの立て方、生涯航空産業のプロとして働くための知識や心構えなどについてもしっかり教えることが求められてくるはずです。
桜美林のコースは、航空産業の経営論など、長期的な視野に立った科目を用意しているようですから、その点では良くできていると思います。CAとしての業務に直接関わることはないでしょうが、学んでおいた方がいい知識です。それに総合職として航空産業で働く際には、こうした知識は大いに役立つと思いますし。
でも、そういったことをせず、ただ「CA養成」だけをアピールする大学が増えたら嫌だなぁとマイスターは思うのです。

人気が出るからといって、安易なコースが乱立しないことを祈ります。

以上、マイスターでした。