クーデター勃発 タイの学生達は大丈夫?

マイスターです。

最近の高校の、いわゆる理系進学コースでは、点が取りやすいということで社会科は地理を選択させることが多くなっていると聞きます。
ただ、技術者も国境を越えることが多くなってきていますし、海外の方と協働する機会も増えています。文・理を問わず世界史は必修科目にした方がいいんじゃないかと、個人的には思っています。
何より、世界史はとてもおもしろいです。

そんな世界史好きのマイスターですが、高校生の時に読んだ本の中で、強く印象に残っている本があります。『ドラゴン・パール』という書名の自伝で、書いたのは、あるタイ人の女性です。
以下、ちょっとだけ、Amazon.co.jpに掲載されている紹介文を引用します。

物語は1956年のバンコクにはじまる。時のタイ首相ピブンはしたたかな政治家だった。その7年前、アジアには激変が起きていた。毛沢東の率いる中華人民共和国の成立である。ピブンは、反共政策を前面に押し出してアメリカの援助を引き出す一方、燐国中国との関係改善も模索する。首相の腹心のジャーナリスト、サン・パタノタイは、この意をうけて中国との接触をはかった。そして難局を打開するため、ついに思い切った決断を下す。中国との生きたかけ橋にするために、自分の子どもを北京に送りこもうというのだ。幼い娘シリンと息子ワーンワイ。2人の行く手には、想像をはるかにこえるドラマが待っていた。(Amazon.co.jp商品説明より)

ね、なんだかおもしろそうでしょう? これが、ノンフィクションの話なのです。

タイは東南アジアの中で唯一、外国の植民地にならなかった国である……ということは高校の世界史で学ぶのですが、どのような努力をしてそれを達成したかまでは、学校では深くは教えてもらえません。
この『ドラゴン・パール』では当時のタイ首相が、中国への忠誠の証として、中国指導者達のもとに腹心の部下の子供達を送り込んだ様子がつづられています。一種の人身御供と言えるかも知れません。
もちろん、これはタイの数多くの外交努力の一つに過ぎないのでしょうが、「そんなことをやってでも、国の安定を図ったのか」ということが、高校生の時のマイスターには驚きでした。

『ドラゴン・パール』は、この時に送られた少女による自伝です。
当時の中国共産党指導部の皆様もごく身近なところにいる人々として描かれており、激動する世界史の裏側を知ることができます。
身近に、世界史好きの高校生がいたらオススメください。

……と、本の紹介をしたところで、今日はタイについての最近の報道から。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「タイのクーデター 県内関係者ら対応追われる」(日本海新聞)
http://www.nnn.co.jp/news/060921/20060921005.html
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クーデターが起きたタイ。今、各メディアを通じて様々な情報が断片的に入ってきています。

何しろ、軍部による政権掌握です。伝わってくるのは、宮殿のそばに戦車が並んでいるとか、メディアには報道規制が敷かれているとか、ぶっそうな内容の報道ばかり。
クーデターと言われてぱっと思いつくのは「2.26事件」と「大化の改新」だけ、みたいな平均的日本人にとっては、想像つくようなつかないような、非現実的な事態です。

現地からの情報が少ないこともあり、タイに交換留学生や大学院生、教職員達を派遣している学校の関係者は、心配で眠れない日を送っているかと推察します。

鳥取県教委によると、タイに滞在中の教員、職員は、バンコクの日本人学校に派遣されている小学校教員、江谷成史さん(41)=鳥取市立世紀小在籍=一人。二十日午前、県教委が安否確認のメールを送ったところ、江谷さんから「宮殿の近くに戦車が配置されている」「家族も無事で日常生活を送っているので、心配しないでください」との返事が返ってきたという。

新日本海新聞社の取材に対し、同校の国島健二校長は「テレビで通常の番組が映らなくなっている以外は、商店なども営業しており静かな状況」と話している。同校は二十、二十一日を臨時休校とし、今後の対応を検討している。

鳥取大学では、教員二人、学生二人の計四人が公用でタイに滞在。うち教員一人は農業関係の調査、三人は国の受託研究が目的という。そのほか、職員三人がタイに渡航しているという情報もあり、現在、大学内の教職員を対象に渡航自粛を呼び掛けるメールを送信している。
日本海新聞記事より)

このように現地の学生や教職員の安否を確認するために、対応に追われた学校もあるようです。
みなさまの大学も、教職員から提出されていた出張届を引っ張り出し、タイに行っている人間がいないかどうか確認されたかもしれません。

逆に、タイからの留学生を受け入れている大学の関係者も、気が気でないようです。
ネット上の大学職員関係者のブログなどからも、その様子が伝わってきます。

…9月末にタイに帰国することになっている留学生は大丈夫だろうか,10月に渡日する留学生は予定どおり来れるのだろうかと心配になります。(「タイ・クーデターの影響」(国際交流担当大学職員)より)

特定非営利活動法人JAFSA(国際教育交流協議会)のひろさんのブログは、いち早くタイのクーデターを伝えておられました。

■「タイでクーデター」(ひろの日記帳@International Cafeteria)
http://hiro.intlcafe.info/item/1801

このように、海外交流に関わる大学関係者にとっては、人ごとならぬ緊急事態。
情報収集に追われているかと思います。

■「世論調査、84%がクーデターを支持」(バンコク週報)
http://www.bangkokshuho.com/news.asp?articleid=229

タイの大学が実施した世論調査では、8割以上の人々がクーデターを支持しているとのこと。軍事行動が行われる緊迫した情勢下での調査ではありますが、実際、クーデターを肯定的に受け止めている国民が多いのも確かなようです。

そんな要素もあり、悲惨な事態はほとんど起きていないようですが、心配は尽きないことでしょう。

さて、数少ないメディア報道の中から、現地の学生達の声を拾ったものをご紹介します。

■「タイのクーデター:まちの様子を留学生にきく」(JANJAN)
http://www.janjan.jp/world/0609/0609200508/1.php

■「TVのチャンネル『すべて国王映像に』 タイの邦人語る」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0920/022.html

上記の二つの報道の記述を読む限りでは、各校とも休校にし、学生に注意を促してはいるものの、今のところそれほど緊迫した状況にはなっていない様子です。
まだ安心はできませんが、とりあえずキャンパスの住人達が危険にさらされるようなことにはなっていないようで、何よりです。

ただし、今後はどうなるかわかりません。
大学は、民主的でない行動に対して、学生や教職員が抗議行動を行う場でもあるからです。

■「大学関係者、クーデターに抗議」(バンコク週報)
http://www.bangkokshuho.com/news.asp?articleid=257

チュラロンコン大学の教授・学生らが、サイアムセンター正面入り口前でクーデターを起した軍部を批判した。関係者の話では、約50人が参加。ただ、バンコクに戒厳令の出ていることを考慮してか、6、7人単位で抗議文の書かれたプラカードを掲げ、教授が抗議演説を行っていた。

抗議行動は午後6時すぎに始まり、周辺の歩道、駅施設などをショッピングに来た学生らが埋め尽くした。警官は学生や教授の様子をビデオに録画するなどしていたが、午後7時30分現在、逮捕者は出ていない。

抗議行動に参加した大学院博士課程の学生は、「社会問題は民主主義制度に従って解決しなければならない。選挙で選ばれていない者が国を統治することを認めることはできない。それに、現在、報道が大幅に規制されており、これなら、タクシン政権の方がまだマシだった」と述べていた。
(上記記事より)

↑このように、さっそく抗議活動が始まっています。今後は、他の大学にも動きが拡がっていくかも知れません。
こうした動きを軍部がどう認識するかによって、大学キャンパスの状況は変わっていきます。

現在の各メディアの報道を見ている限り、ここまで比較的穏やかに政権掌握を進めた軍部が、今さら学生達を危険にさらすような馬鹿な真似をするだろうか、とも思いますが、しかし、事態がどうなっていくかは、誰にも保障できません。

大学関係者にとっては、今後も緊迫した状況が続きそうです。

以上、ざっとではありますが、タイの学生達に関する情報でした。

マイスターでした。

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(参考)
クーデターが起きる数日前には、実はこんな報道も流れていました。

【大学校内での反政府集会をけん制(9/13)】

タイ愛国党の法律専門家、ピーラパン氏は12日、学識経験者などに対し、権限の濫用、公職選挙法抵触の恐れがあるとして、タクシン暫定首相を批判する集会など政治的活動を大学構内で行わないよう要請した。大学当局が反タクシン的との誤った印象を市民に与えかねないため、と同氏はその理由を挙げている。
(バンコク週報記事より。元記事は既にネット上から削除されている)

今回クーデターに追われる形となった、タクシン政権の動きでした。
こんなことがあったから、今回のクーデターに関しては、複雑な気分を抱く大学関係者も多いのかも、なんて思います。