マイスターです。
■医師不足を解決せよ(1): 医学部卒業生を地域に定着させるには?
■医師不足を解決せよ(2): 医学部受験生を支援する取り組み
↑以前の記事で、深刻な医師不足を解決するため、卒業生を地元に定着させようとする、大学医学部の試みについてご紹介しました。
卒業後に一定期間、特定地域で医師として働くことを条件にした「へき地枠」という制度があるが、高額な奨学金などをつけてもなお学生の応募がない……という実態もご紹介しました。
そんな話題に関連して、今日はこんなニュースをご紹介しました。
【今日の大学関連ニュース】
■「愛媛県、医師確保に総額1000万円の奨学金検討」(MSN産経ニュース)
全国の公立病院で深刻化している医師不足の解消のため、愛媛県は愛媛大医学部(東温市)の平成21年度以降の入学生に総額1人約1000万円の新奨学金制度を創設する方向で検討している。卒業後、県の指定する病院に勤務することが条件で、一定期間勤めれば返還を免除する方針。深刻な財政難のなか、県は「地域のために働いてくれる医学生を育てたい」としている。
在学中の6年間に必要な入学金や授業料、生活費などを貸与する新制度で、現行の「へき地医療医師確保奨学金」より大幅に多い1000万円程度になる見込みという。
(略)21年度から愛媛大医学部の入学定員も5人増の95人となる見通しで、県内の高校出身者の推薦入学枠「地域特別枠」の定員を5人から10人に増やし、その入学生に対して新奨学金を適用する。
卒業後、県が指定する医療機関に研修期間も含めて9年間勤務すれば、返還を全額免除。現行制度は新制度に移行するかたちで廃止することも検討している。
(上記記事より。強調部分はマイスターによる)
なんと、一人あたり1,000万円の奨学金です。
この奨学金を申請できるのは、県内の高校出身者の推薦入学枠「地域特別枠」で入学してくる10人。
つまり、卒業後も地元に残る可能性が高い(ということになっている)方々です。
さらに、実際に9年間、県が指定した医療機関に勤務すれば、この1,000万円は返還しなくて良いとのこと。
この1,000万円(一人あたり)を出すのは、大学ではなく、愛媛県。
財政難の中でこの奨学金を拠出するとのことですが、逆に言えばそれだけ、医療の現場での医師不足が深刻だと言うことでしょう。
思い切った額ですが、1,000万円で医師がひとり地元に定着してくれ、今の状況が少しでも良くなるのなら安い、ということでしょう。
応募対象者をかなり狭い範囲に限定していますが、これだけの額を出す以上は、確実な成果を出したいということでしょう。何しろ県のお金ですから、これで医師が残ってくれなかったら、税金の無駄遣いという批判も出てきかねません。責任問題になります。
県も相当の覚悟で、この奨学金を始めたのだと思います。
非常に興味深い取り組みですが、ただ、
今年度は現行制度への申し込みが1人しかなく、今月30日まで追加募集(1人)している。
(上記記事より)
……というくだりが、気になります。
冒頭でご紹介した過去の記事にあるように、やはり愛媛県でも、現在は地域枠・へき地枠には人が集まっていないのですね。
これは、額を1,000万円に引き上げることで解決することなのかどうか。
それとも、学費の問題ではないのか。
そのあたり、どういう結果になるのか、気になるところです。
他の地域も、この動きには注目しているのではないでしょうか。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。