大学でPDCAの導入が進む?

マイスターです。

あと1ヶ月ちょっとで、大学に転職して2年を迎えることになります。
(なんだか、もう5~6年はいるような気がするのは気のせいでしょうか)

マイスターは転職するまで、web制作会社において

 [アクセスログ解析]  → [問題の抽出]  → [企画の立案]  → [コンテンツを制作]  → [アクセスログ解析] → (最初に戻る)

……という、PDCAサイクルに基づいたサービスをクライアント企業に売っておりました。

webサイトの特徴の一つは、<Plan → Do → Check → Action>の流れを、文字通りに実行できるメディアだということです。
アクセスログにユーザーの行動記録が残るので、どのコンテンツが見られていないのか、どのページがユーザーを帰してしまっているかといったことは、調べればわかるのですね。
ですので、数値目標を立てて改善を繰り返すことができるのです。

そんな仕事をしていたこともあり、マイスターは、この「PDCA」という流れを非常に重視しております。
大学の業務は、(部署にもよりますが)ルーチンワークの比率が結構高いように思います。でも、「前年度と同じことをいかにスムーズにこなすか」ということだけを念頭において働いていては、悪いところはいつまで経っても、悪いままです。問題を発見し、目標を立ててそれを解決するという仕組みも必要ですよね。

というわけで今日は、↓こんなニュースをご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「近畿の私大、PDCA導入相次ぐ・少子化で競争激化」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/retto/20060921c6b2102a21.html
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近畿の私立大学が相次いで経営にPDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション=計画・実行・検証・改善)の手法を導入している。PDCAは製造業の品質管理で使う用語だが、少子化で競争が激しくなり、大学経営でも品質向上競争が激化してきたためだ。羽衣国際大学(堺市)のように全分野に数値目標を設ける大学も出始めた。

学校教育法の改正で2004年度から全大学が7年に1回、文部科学省が認証した機関の外部評価を受けるように義務付けられた。認証評価機関は、各大学の目標を含んだ点検・評価項目を評価するため、私立大学の経営にも厳しい目が向けられ始めた。私大としても4割超が05年度に入学者が定員を下回り、外部評価に敏感になっている。

立命館大学(京都市)は04年度に認証評価機関の大学基準協会(東京)の評価を受け、05年度に大学評価室を設置し、PDCAを本格的に導入し始めた。04年度に評価情報分析室を設置した関西学院大学(兵庫県西宮市)は「07年度から毎年度、自己点検・評価を実施したい」(評価情報分析室)と話す。
(上記記事より)

大学職員歴の長い方は、こういった報道を見て、「時代は変わったなあぁ」と思われたりするのかも知れません。

大学事務というのは、公務員と同様、どちらかというと「PDCA」のような取り組みには積極的でない組織のようです。
マイスターが日々働いている中でも、積極的に「業務を改善していこう!」と考えている方は正直言って、少数派です。他大学の方のお話を聞いた限りでは、他もやはり似たようなもののようです。「前年度と同じ業務をつつがなく遂行することが自分の役割」という意識で働いている方が、業界全体として、少なくないようですね。

そのため、改革意識を強く持っている一部の方々は、

「ウチだってこのままじゃつぶれるかも知れないんだ。何か手だてを打たないといけないはずなのに、何で誰も動こうとしないんだ!?」

「ウチの職場のヤツらはのんきすぎる!」

……と悶々とし、ストレスを溜める傾向にあるようです。

ただ、そんな大学組織も、徐々に変わりつつあるようです。
今回の報道にあるように、PDCAのプロセスを強く意識し、大学の経営状態や各種サービスの質を改善していこうという動きが拡がってきているのですね。

そのきっかけになったのは、認証評価機関による外部評価の導入です。
外部からどのような評価を受けるかということを、大学も気にしているのですね。
そのおかげでPDCAの考え方が普及したのだとしたら、外部評価を義務づけたのは正解だったのかも知れません。

記事の中で紹介されている関西学院大学の、大学評価の紹介ページをご紹介します。

■「大学評価関連:自己点検・評価、認証評価、外部評価」(関西学院大学)
http://www.kwansei.ac.jp/Contents_21_42_0_6.html

「PDCA」という表現があちこちに見られますね。
大学をよりよいものにしていくために、組織的に取り組んでいこうという姿勢が表れているように思います。

このような形で大学の認証評価結果が意識されているというのは、良いことです。
大学評価室などの部署を設けて、こういった外部評価に対応する大学も徐々に増えてきているようです。そんな動きを見ていると、日本の大学も変わり始めたんだなぁと思えます。

でも、あえて一点だけ、普段感じていることを。

こうしたPDCAサイクルは、職場のあらゆる場所に取り入れられなくてはならないのですが、皆様の大学では、それはできてますでしょうか?

というのは、つまりこういうことです。

「大学としてこういう問題を持っているから、このように改善します」という目標を毎年、理事会や大学評価室などが設定しますよね。
例えば、受験生を○○人確保するとか、定員を100%常に確保するとか、借入金を○○以下の水準に抑えるとか、JABEEのような外部評価を積極的に導入する、とかです。

そしたら、その目標は、より現場に近いところにブレイクダウンされなければなりません。大学として立てた目標は、それぞれの部門の目標に置き換えられてこそ、実現可能になります。

「受験生を○○人確保する」というのが大学の目標だとしたら、アドミッションオフィスの行動目標はどのように設定されるでしょうか。広報部はどうでしょうか。
おそらく、「オープンキャンパスに○○人を呼ぶ」とか、「webサイト経由でのお問い合わせを○○件以上確保する」とか、「イベント参加者の受験率を○○%以上にする」とかいった、各部門ごとの具体的な目標に置き換えられるのではないかと思います。

そして部門としての目標が立ったら、それをさらに今度は、職員一人一人の行動目標に置き換えていくことになります。
「あなたは今年のうちに、○○地域の全高校の進路指導担当教員と気軽に電話できる関係を築くこと」とか、「あなたの使命は、オープンキャンパスに対するクレームをゼロ件にすることだ」とかです。

このように、PDCAというのは、組織の隅々までブレイクダウンされてこそ、意味があるものなのです。
組織として「定員を確保するのが目標」なんて掲げたところで、具体的に誰がどのようにそれを実現させるのかが明確になっていなければ、何も変わりませんよね。

マイスターが思うに、大学評価基準のような全学的な目標値は熱心に設定しても、それを現場にブレイクダウンするところで、徹底されていない大学が少なくないのではないでしょうか。

「大学トップは改善にとても積極的だけど、うちの課の課長は本気でやってない」みたいなことが、組織の随所で起きていませんか?
あるいは、「課長から目標を立てろって言われたから、とりあえず書類に記入して提出したけど、まぁ、自分たちが実際にやってる仕事は、去年までと全然変わってないかな」なんてことになってませんか?

それではいけないのです。
でも、そういう組織が、実際には少なくない気がします。

大学が組織として目標値を掲げ、PDCAを導入を進めているのはいいことです。
でも、それが職員一人一人の位置で実行されているかというと、疑問も残ります。全体目標だけしか設定していない大学も実は多いのではないでしょうか。

組織の構成員全員が、<Plan → Do → Check → Action>を実行できるようになって初めて、大学に力強い自己改革力が生まれるのでしょう。

その状態を理想とし、少しずつ教職員の認識を変えていかないといけません。組織風土というものは、すぐに変わるものではありませんから、気の長い作業になると思います。でも、少しずつでもやらないといけないんですよね。

そんなことを考える、マイスターでした。