さて、日曜日ですので、今週のニュースクリップをお届けします。
中核都市で、公立小中学校の人事権が移譲されます。
■「小中教員の人事権、36中核市に移譲へ」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060503it01.htm
文部科学省は2日、都道府県と政令市が持つ、公立小中学校の教職員の採用や懲戒処分などに関する人事権を、新たに中核市にも移譲する方針を固めた。
市町村側に、人事権がないため地域の実情に応じた教職員の配置ができないとの不満が出ていたことに対応するものだ。地方教育行政法改正案など関連法案を遅くても来年の通常国会に提出し、2008年度からの施行を目指す方針だ。
中核市は人口30万人以上で面積100平方キロ・メートル以上か、人口50万人以上が要件。現在、旭川、秋田、横須賀、金沢、浜松、東大阪、倉敷、鹿児島市など計36市ある。(上記記事より)
これは非常に大きな動きです。教員の人事権が、段々と現場に近いところに移動していく流れができつつありますね。
ただ、記事でも触れられている通り、「政令市に加え中核市も教員を独自採用することになれば、優秀な教員が政令市、中核市以外に回ってこなくなる」という心配は当然、一般市町村に出てくるでしょうね。
■「小学校の英語必修化:教員確保も大きな課題 自治体、育成に動く」(産経web)
http://www.sankei.co.jp/databox/kyoiku/200605/060501b.html
教員の確保に関しては、↑このような記事も見かけました。今後は、ただ待っているだけではいつまで経っても優秀な人材が学校に来ない、という状況になっていくのでしょう。自治体同士で人材獲得競争をするのが良いことかどうか、意見が分かれるところでしょうが、現実はその方向に動いているようです。
「人を募集する」という事業は、非営利団体が最も不得手な部分。従来とは異なるやり方が求められる段階に来ている今、組織の方もそうした動きに対応できるかが問われます。
米、豪で、学校から肥満の原因となる飲料を閉め出す動きです。
■「コカ・コーラ:米の小中学校で販売全面停止へ 肥満増加で」(毎日新聞 MSNニュース掲載)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20060505k0000e040019000c.html
■「学校でジュース販売禁止へ 子供の肥満防止に豪の州政府」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/JJT200605020001.html
米国飲料協会(ABA)は4日までに、小中学校でのコカ・コーラなど糖分の多い清涼飲料の販売を3年後に全面的に停止すると発表した。
2008年の新学期から全米の75%の学校で販売をやめ、09年の夏休み後の新学期から全面停止する。
米国では子供の肥満が増えており、学校の自動販売機や食堂で簡単に手に入る清涼飲料に批判が集まっていた。(毎日新聞記事より)
オーストラリア南東部のビクトリア州政府は、公立の小学、中学、高校にある売店や自販機でのジュースの販売を今年中に禁止することにした。豪州では子供の肥満の増加が社会問題化しており、ジュースはその一因とされている。販売だけでなく、持ち込みも認めない方針で、私立学校にも同調するよう呼び掛けている。(Asahi.com記事より)
両国では、子供の肥満が社会問題化。その原因として、糖分たっぷりのコーラや清涼飲料が、学校で簡単に手にはいることが指摘されていました。もしかしたら、食育が拡がっていく日本でもそのうち、こうした動きが出てくるかも知れません。
(※豆知識:日本では、果汁100%のものしか「ジュース」と表記できないことになっています。それ以外は「清涼飲料水」です)
センター試験のエラー分析が行われています。
■「センター試験の聞き取りトラブル、原因の6割が接触不良」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060429ur01.htm
…だそうです。受験者の数が非常に多いので、エラーが起きた確率としては小さいようにも思いますが、やはり「エラーゼロ」を目標にして取り組み続けることは重要ですよね。センター試験は国家の一大プロジェクトですから、今後もPlan Do Check Actのサイクルをまわし続けていってほしいところです。
教科書協会は、特殊指定廃止に「反対」のようですが…
■「特殊指定廃止方針、教科書協会が『反対』」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060427ur01.htm
特殊指定が廃止された場合、「教科書の内容にかかわらず、宣伝力の差で教科書が採択される恐れがあり、質の低下や寡占化を招く」
「特殊指定で教科書の宣伝活動をルール化し、それ以外の努力や資金は内容の向上に充てることが、我が国の教育の発展につながる」
大量の見本本を配って営業攻勢をかける会社が出てくる可能性もあり、「教科書の内容で採択する」という原則は大きく揺らぐ。
と上記の記事にはありますが、見本本を教員一人一人の手元に届け、コンセプトを丁寧に伝えようとする企業があったのなら、それは悪いことではないような気がするのですが、いかがでしょうか。現在は一部マスメディアなどの意見が教科書採用に大きな影響を与え、教員一人一人がじっくり教科書を選べるような状況にはなっていないんじゃないかとマイスターは思います。
宣伝力とは本来、お金をかけてハデハデに飾り立てたり、安易に大量のビラを配りまくったり、教員に「袖の下」を渡して便宜を図ってもらうようなことではないはずですが、この読売オンラインの記事ではそういうことのように扱われていて、残念です。(というか、そんな安易な宣伝に引っかかって、現場の教員達が「子供にとって最適な教科書」を選べなくなったりするのだとしたら、それは教員の方にも問題があるように思います)
早い段階で教科書の内容をオンラインで公開して一般生活者の意見を問う会社が出てきたり、ダイジェスト版の教科書が書店で自由に見られるようになったりしたら、それはそれで私達生活者にとっては有益だと思いますが、そうした発想での意見が掲載されていないのが、気がかりです。
そうした活動でかかるコストについては各出版社が努力していくべき(これまでコストで競争してこなかったわけですし)ですが、下記のような部分のムダを無くしていくことで、ある程度は吸収可能だと思います
■「複雑な教科書配送制度にメス」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/politics/update/0505/002.html?ref=rss
教科書の配布に関しては、明治時代からの流通システムが温存され、中次ぎの業者がムダにいくつも存在しているという報道です。
(「教科書を一斉に配る新学期以外の時期に業者は何をしているのか」といった声に対して)首都圏の「特約供給所」のある社長は「仕事は年間を通してある。学校や地域によって違う教科書採択パターンへの対応などは宅配業者には難しいのではないか」と話している。(上記記事より)
自分達が長年やってきたことは自分達にしかできない、と思いこんでいる業界はいくつもありますが、これがその典型です。データベースと高度な流通システムを駆使して、様々な業種で流通の中抜きが進んでいる今、この程度の対応はまったく難しいことではありません。気の毒ではありますが、こうした業者を排除し税金を有効に使うのは、もはや時代の流れです。
いずれにしても、
十分な情報の中で最適と思える教科書が選択され、
それが適正なコストで子供の手に届けられるような仕組みにしてほしいものです。
四国から、国際協力に携わる人材がたくさん輩出されるかもしれません。
■「講座『国際協力論』:四国の国立大が次々開設 人材育成へJICAと連携 /四国」(毎日新聞 livedoorニュース掲載)
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1910949/detail
大学間の連携には様々なスタイルがありますが、上記もすばらしい取り組みですね。国際協力に携わっている方をゲスト講師に呼んだり、学生を国際開発の現場に送り出す仕組みを作ったりという試みも、一つの大学だけでは困難ですが、こうして連携すれば実現はより容易になるでしょう。
こうした分野を通じて学生が企画力や行動力を身につけていけば、最終的には四国地域全体にとってもプラスになるはず。「Think global, Act local」とか、「Think local, Act global」とかいった言葉もありますが、まさにそうした視点を持つ教育の試みだと思います。
医学部入学者の人数を、教育力のバロメーターにするのはもうやめませんか?
■「今春の大学入試『医学志向』『公立復権』」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060426ur01.htm
医学部に進学する学生の数を、その高校のブランド力や教育力を測るモノサシに使う傾向があります。上記の記事も、そういった例のひとつだと思います。
「いい医者になりたい若者が難関校に集まる」というならいいのですが、多分、必ずしもそうではないでしょう。それなのに、大手メディアは相変わらず、こうした報道の仕方を続けています。
同誌(※読売ウイークリー)では、総合合格力を詳報し、4月10日現在、東大または京大、国公立大医学科に1人でも合格者を出した約750校も掲載している。全国で「サクラサク」を獲得した学校を総覧できる。(上記記事より)
医師とは本来、医療に対する使命感を持ち、「絶対に医療に従事するんだ!」という志のある方が目指すべき職業だと思いますが、現実には、偏差値競争のゴールの一つになってしまっている面があります。読売のような大手メディアも、そういった学業観を後押ししている存在のひとつでしょう。
こうした報道が、「おまえは成績がいいから、東大か京大か、もしくはどこかの医学部に行け」という進路指導を助長しないでしょうか。マイスターはそちらが心配です(事実、医学部への進学を強く勧める高校というのは確かに存在します)。
こうした価値観がマスメディアの側に残っている限り、日本の教育観、学業観を根本から変えるのは難しいのではないでしょうか。
シンキロウさんってば……。
■「文科省 補助金12億円返還命令 大学や自治体不正受給」(中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/00/sei/20060501/mng_____sei_____000.shtml
文科省の交付した補助金を不正に使うふてえ輩が多いらしく、返還総額が約12億円にのぼったそうです。
また森喜朗前首相が会長を務めた世界青少年交流協会(解散)では、渡航費を水増し請求していたとして元副会長が逮捕され、05年に約7900万円を返還した。(上記記事より)
たとえ「お飾り」の会長だったとしても、責任者には違いないと思うのですよ。責任者出てこーい!
…と思ったら、
↓ここにいました。
■「海部、森両元首相が委員に 教育基本法改正特別委」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200605020322.html
教育基本法改正案を審議する特別委員会の委員に、自民党は森喜朗、海部俊樹両元首相ら「重量級」をずらりと並べる方針だ。(上記記事より)
「重量級」だからって言われても、うーん……政党に振り回される文科省の皆様のご心労が忍ばれます。(そもそもこの方を「重量級」と思っている国民はあまりいないような気がしま…おぉっと、失言、失言)
生活費が減ったのに、学費は上がっています。
■「生活費は14年前以下 大学生、年77万2000円」(北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060428&j=0045&k=200604283699
比較対照となっている1990年度がバブル景気だった、という点には留意しておくべきでしょうが、現在の経済状況が学生の生活に大きな影響を与えているのは事実。ゆゆしき事態です。
大学生の生活費のうち携帯電話や衣服にかける費用が前回の16万9000円から14万3000円に減少。(上記記事より)
えっ、本当にこのくらいで済んでいるんですか? 今、学生生活を送ろうとすれば、携帯電話だけでも1ヶ月に1万円程度はかかってしまいそうな気がするんですが…学生割引サービスが効いているのかな?
(※マイスターが学生の頃は、通信機器を一切所有していませんでしたので、安く上がってました。今は大変そうです)
以上、今週のニュースクリップでした。
あいにく今日は雨の日曜日でしたが、家で静かに過ごして、GWで休日モードになった体を切り替えるのには良かったのかも知れませんね。
明日からまた、がんばりましょう。
今週も一週間、本ブログをご支援いただきまして、ありがとうございました。
マイスターでした。