年末、博士号のことばっかり書いていましたので、しばらく博士ネタはもういいやと思っていたのですが…面白いキーワードがあったので、ついご紹介したくなってしまいました。
すでにご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、
三振博士
って言葉、みなさん、聞いたことありますか?
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【三振博士】
→法科大学院(ロースクール)修了生のうち、「修了後、5年以内に3回」という受験回数制限内に司法試験に合格できなかった方を指すことば。
法科大学院の修了生には法務博士(専門職)という学位が与えられるので、こう呼ばれる(らしい)。
※注:もちろん、正式な呼称ではありません。俗語です。
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(参考):■「三振博士?受験生にのしかかる新司法試験の重圧」(AllAbout)
http://allabout.co.jp/study/adultedu/closeup/CU20051204A/?NLV=NL000319-106
文科省の方々や、法科大学院制度に尽力されたお歴々が聞いたら怒り出しそうなワードですね。
(でも、消費者の視点がすっごく現れている言葉のように感じます。妙にリアリティがあるというか)
この「三振博士」、法科大学院に興味のある方はご存じ、
しかしそれ以外の方は聞いたこともないという単語ではないでしょうか。
「修了したら、かなりの確率で司法試験に合格できる」
「法学部生以外でも、法曹への道が開ける」
といったふれこみで、制度ができた当時はかなり話題を集めた法科大学院。
仕事を辞して入学された方も少なくないだろうと思います。
しかし、その後たびたびメディアで報道された通り、
実際には当初喧伝されていたような、「かなりの確率で司法試験に受かる」という状態にはならないようなのです。
国内の法科大学院の入学者が、予定よりもずっと多く集まってしまったからですね。
司法試験の合格者数は、あらかじめ定められています。
合格した後、司法研修生として研修を積まなければなりませんので、そうした研修の受け入れキャパシティを超える人数は、合格させられないのです。
○司法試験の合格者数は決まっている
→○なのに、法科大学院の入学者は予想よりずっと多い
→○試験の合格率が、予定より低くなる
という話です。
こうした事態の中、法科大学院の現役学生、および入学希望者達の間で、
「司法試験に落ち続けたらどうなるの?」
という心配が、現実のものとして拡がってきているというわけです。
「5年以内に3回」の受験期間内に合格できなかったら、
「法務博士だけど法曹じゃない」という状態になってしまいます。
というわけで生まれた言葉が、「三振博士」。
実際には、3回不合格になったからといって、二度と司法試験を受けられないわけではありません。
かなり回り道になりますが、再度受験する方法もあります。
「新司法試験Q&A 図解:『5年間に3回』の制限を超えた場合には,受験は認められないのですか?」(法務省)
http://www.moj.go.jp/SHIKEN/shinqa01-06.html
また、仮に「三振博士」になってしまったとしても、
法科大学院での学びがまったくムダになるなんてことは、ないと思います。
例えば、
「医者を目指して医学部に入ったけど、大学院まで出て、結局医師免許はとれなかった」
という人を想像してみてください。
こうした方は現実に少なからずおられますが、この場合、その豊富な医学知識を活かして大学や企業の研究者として働く道があります。
他にも医療機器メーカーや医薬品会社など、あらゆる健康産業が、こうした人材の受け入れ先になっています。
直接、医師として医療行為を行うことができないというだけで、医療の知識は存分に活かしていただければいいのです。
法務博士(専門職)にも、同じことが言えると思います。
法知識に優れた方が力を発揮できそうなのは、やはりまず行政でしょうかね。
ぜひ、リーガル・マインドを存分に発揮してください。
また、政治の領域でも活躍の場がありそうです。
政治家秘書、政党のスタッフなんて、本来なら法律知識の豊富な方が求められているはずですから、なかなか面白いかも知れません。
その他にも、活躍の場は至る所にありそうです。
もともと、法科大学院は法学部出身者以外の方も多く入っておられるわけですから、
<元々の自分の専門×法律知識>
という組み合わせで、仕事を作っていくチャンスはありそうな気がします。
そんなわけで今日は、受験生などの間で恐れられている「三振博士」というワード、簡単にですがご紹介してみました。
マイスターでした。
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(おまけ)
今回、「三振博士」で検索をかけて色々調べていたら、
↓この人の情報ばっかりヒットしてました。
http://www.kernelsupport.co.jp/atonan/sensyu/00n/yamada.htm
三振三振って言われていると、この方にとっては迷惑でしょうね…。