ニュースクリップ[-5/13]「大学授業 丸投げ禁止…文科省」ほか

マイスターです。

日曜日ですので、いつも通り一週間分のニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

改善か、後退か。
■「大学授業 丸投げ禁止…文科省」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20070512ur03.htm

文部科学省は11日、規制緩和に伴って大幅に緩やかになっていた法令「大学設置基準」を一部改正する方針を固めた。大学の自主性に委ねられている授業形態について、基本的なルールを明文化する。

[来春から設置基準を厳格化]

株式会社立の「LEC東京リーガルマインド大学」(東京・千代田区)が、予備校と混然一体となった授業を行っていたことが発覚したため、授業形態の多様化に一定の歯止めをかける必要があると判断した。2008年4月からの施行を目指す。

(略)今回の改正では、〈1〉授業科目の開設は(大学が)自ら行う〈2〉大学が専用の施設を有する――などと明記。大学が授業に必要な教員や施設を自前でそろえ、指導計画も大学の教員が定めることを改めて徹底する。

改正後は、LEC大のような授業形態のほか、授業を外注する際に大学が授業内容の決定にまったくかかわらない「丸投げ」も法令違反となる。また、アルバイトやボランティアを単位認定する場合、単に学生を企業に預けるだけのようなやり方も法令違反に問われる可能性がある。

(上記記事より)

LEC東京リーガルマインド大学のケースをふまえて、設置基準を厳格化する、との報道です。

大学が授業に責任を持つ、ということを徹底すべきだということなのでしょう。そこは大いに賛成なのですが、その一方で、今後の展開に少し心配も感じました。

日本の高等教育政策は、「設置基準を厳しく監視する」という方針から、「設置基準は緩和し、その代わり認証評価を受ける」という方針に変わったはずです。大胆な方針転換ではありますが、大学の自主性や競争力、多様性を生み出すためにそうしようと腹をくくったのだとマイスターは理解しておりました。
それが、LEC大学の1ケースの報道のどさくさにまぎれて、「いつの間にか」元の位置に戻されていたりしたらいやだなぁ、と思ったのです。上記の報道を見る限り、まだそこまでのことは書いてありませんが、油断すると、中央省庁の統制が強いシステムに逆戻りするのではないかと思ってしまうのです。

「事後評価の原則は守りつつ、より洗練された形に改良していく」のならいいのですが、「事後評価の体裁は保持しつつ、いつの間にか中身が骨抜きにされ、実質的に以前と同じ状態になっている」という展開にはなってほしくありません。
あるいは、ちゃんと議論をした結果、元の形に戻すというのならいいのです。でもそうではなくて、「いつの間にか骨抜きに」されるのは困るなぁと思います。なんだか日本では、そういうケースが少なくない気がするので、ちょっと心配になりました。

高卒認定試験の合格者はいずこへ?
■「高卒認定試験の合格者、5割が大学や専門学校に進学」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070512AT1G1101F11052007.html

文部科学省は、高校卒業程度認定試験(高卒認定、旧大検)の合格者を対象に実施した進路状況アンケート調査の結果をまとめた。合格者の50.1%が大学や短大、専門学校に入学し、5年前の前回調査に比べ11ポイント上昇した。

(上記記事より)

「高校卒業程度認定試験」、かつての「大学入学資格検定(大検)」です。

認定試験合格後の進路は、大学進学が29.2%でトップ。短大は5.5%、専門学校は15.4%だった。大学・短大に進みたくて高卒認定を受けた人のうち、ほぼ半数が希望通り進学した。「来年以降の進学準備(浪人)」は24.6%だった。

とのことですから、浪人も合わせればおよそ3/4は進学希望者ということになります。わざわざこの試験を受けるわけですから、そりゃそうだろうという気もします。

ところでこの「高認」試験ですが、ちょっと前に起きた「履修漏れ」騒動の時、ちょくちょく議論で引用されていました。

「高校卒業」といっても、実際には特定の科目を履修していないこともある。「履修」はしていても、授業をろくに聞いていなかったり、実際には教わった内容をほとんど理解していなかったり、いざとなると普段より少ない時間数の補習で強引に履修したことにしてしまったりする。
一方、高認試験合格者は、その科目の内容をちゃんと理解しているかどうかを問われ、クリアしている。
この両者の違いって、よく考えてみるとものすごく重要なテーマを孕んでいないか? 「履修」って何なんだろう? ……という感じで。

センター試験の資格試験化と並んで、今後、深く議論されるべき内容だと思います。

インテリジェント空間を持つ大学。
■「議論を活性化させる会議室、三鷹ネットワーク大学 」(KEN Platz)
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/office/column/20070509/507429/

三鷹ネットワーク大学というのは、正確には大学ではありません。
市の主導の元、三鷹市に関わりのある14の教育・研究機関が参加して運営している、事業です。

■三鷹ネットワーク大学
http://www.mitaka-univ.org/

「コミュニティ・カレッジ」事業、サテライトキャンパス事業、社会人大学院事業、その他ビジネス・インキュベートからまちづくり研究まで、様々な事業を展開している、ちょっと面白い組織体です。
行政の事業に「○○大学」という名前がついているものは数え切れないくらいありますが(「高齢者大学」とか)、この三鷹ネットワーク大学は、そんな中では存在感があるなぁと、マイスターはいつも感心しています。

上記の記事は、そんな三鷹ネットワーク大学のキャンパス空間についてのもの。そんじょそこらのサテライトキャンパスより充実していそうです。三鷹市、なかなかやりますね。

大学による壮大な社会実験。
■「九大ICカード 他大学も 10万人規模 実験拡大 「地域通貨」も視野」(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/fukuoka/20070509/20070509_016.shtml

電子マネー機能を持つ独自のICカードの開発を進めている九州大は、実証実験の対象を福岡市内の他大学など学外にも拡大する。
(略)
データ処理能力向上など実用化に向けた課題を早急に克服するため、利用範囲を地域に広げようと他大学に協力を打診。福岡大、西南学院大など数大学が賛同の意向を示し、実験は10万人弱規模になる見込み。九大によると講義の出欠確認のため学生証をICカード化する大学はあるが、複数の大学で利用できるシステムは珍しいという。

今後、生体認証など本人確認の技術開発も進めると同時に、大学、福岡県など自治体、バス、タクシー、家電量販店など地場企業などとの協議を5月末にも始める予定。地域通貨サービスによる地域活性化策も視野に、08年度に実験を始め実用化したい考えだ。

(上記記事より)

こちらもなかなか凄いです。地方自治法によると人口5万人以上の自治体は「市」になれますから、10万人というと、ちょっとした自治体の人口を上回る規模です。
行政とも連携すれば、さらに可能性が拡がりそうです。社会実験が、「実験」の枠を超えるかも知れませんね。

天国の住人に届け。
■「乱射事件犠牲者に学位 米大学で卒業式」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007051201000165.html

32人が殺害された米史上最悪の銃乱射事件があったバージニア工科大で11日夜(日本時間12日午前)、卒業式が行われ、27人の学生の犠牲者にも学位が授与された。

(上記記事より)

本来ならそのうち本人が受け取ることになっていたであろう学位。遺族の方の無念を思うと、やるせません。
なお日本でも、事故でなくなってしまった学生などに対して学位を発行するケースはあります。

ところで、↓こんなニュースが報道されていたのが気になりました。

■「米大学の新入生が発砲、3人死傷、プレステ盗難で口論」(CNN)
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200705090032.html

アメリカでは普段から銃による事件が少なからず起きているわけで、その中には学生が関係するものも、常に多少は含まれているんじゃないかと思うわけです。でもそういった事件って、毎回は報道されないわけです。
それが今回、上記のような報道されているというのは、やはりバージニア工科大学の事件があったから、それを受けてのことなんじゃないかと想像するのです。
こんな感じで急に学生がらみの事件報道が続くと、留学生募集とかに影響を与えないかなぁ、なんて思ったりします。

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログをごひいきにしていただき、ありがとうございました。
来週も、どうぞよろしくお願いいたします。

マイスターでした。