以前、アメリカの公立学校(チャータースクール)を訪問し、学校運営についてインタビューしたことがあります。
アメリカには、特定の人種や民族の方が集まったコミュニティというものがあります。多くは、マイノリティと呼ばれる人たちです。
そうしたマイノリティのコミュニティでは、所得のレベルが低く、子供の給食費が払えない家庭があったりします。
アメリカ合衆国政府は、そうした子供達のために給食費を一部あるいは全額支給するプログラムを運用しているのですが、マイノリティの子供達が集う学校では、そうした給食費支給生も多くなりがちだと聞いています。
調査に行った時、多くのチャータースクールが、
「本校のマイノリティ比率は○○%」
「給食費支給生は○○%」
といったデータを持っていました。
要は、そうした子供達に優れた教育を提供することが、学校の評価につながるということなのです。
また、マイノリティの家庭は、普通の公立学校で提供される学習内容とは、ちょっと違ったニーズを持っていることも多いです。
例えば、英語だけではなく、自分たちの民族的ルーツの言葉も読み書きできるようになって欲しい、とかね。
そもそも、アメリカで暮らしていても、英語が話せない親が多い地域だってあるのです。
そうした親は、「子供が、自分たちと違う文化圏に入ってしまうのではないか」とおそれ、子供を学校に行かせたがらない場合があるのです。
だから、そうした家庭のニーズに合う教育を提供するのも、チャータースクールの役割でした。
アメリカは多民族国家。
それは知識としては知っていましたが、マイスターにとってその多民族国家のイメージは、「あらゆる民族が混じり合う坩堝である」というものでした。
しかし実際にアメリカの郊外をいくつかまわってみて、そんなに簡単に、もともと異なる文化が均等に混じるはずはないんだなと知りました。
アメリカという、強大な一つの国家の中ですら、こうです。
世界の人々が、どんな「教育」を受けているか、関心を寄せずにはいられません。
そんなわけで今日は、世界中の、教育を受けられない子供達のために活動する組織をご紹介します。
【教育関連機関のご紹介】——————————————–
■FOSTER PLAN
http://www.plan-japan.org/
—————————————————————
-貧困から生じる慢性的栄養失調や病気に苦しむ子どもたち、最低限の保健医療や教育の機会も与えられない子どもたち……。私たちの想像をはるかに超える多くの問題が、途上国には存在しています。それをひとつひとつ解決していくためには、地球上のひとりでも多くの人びとが自分自身の問題として捉え、考える必要があるのではないでしょうか。
フォスター・プランの理想は、人びとが互いの考えや権利を尊重しあう社会の中で、すべての子どもたちが能力を発揮できるような環境をつくることです。厳しい暮らしを強いられている人びとと私たちが、ともによりよい未来を手に入れることができるよう願いながら、日々の支援活動を続けています。-(「フォスター・プランの活動方針」より)
フォスター・プランとは、イギリスに本部を置き、国際的に活動を続けているNGOです。
1937年のスペイン内戦をきっかけに生まれ、以来ずっと、途上国の子供達の問題に取り組んでいます。
・フォスター・プランの歴史
http://www.plan-japan.org/about/history.html
フォスタープランの活動は、ごく簡単に言えば、こんな感じです。
○先進国を中心とした「援助国(アメリカ、イギリス、オ-ストラリア、オランダ、カナダ、韓国、スウェ-デン、デンマ-ク、ドイツ、日本、ノルウエ-、フランス、ベルギ-、フィンランド、スペイン)」から、寄付を集める
↓
○その寄付をもとに、45の「活動国(発展途上国)」にて、子供のための地域開発援助を行う
そう、途上国の子供を支援する方法は、「地域開発援助」です。
フォスタープランが主に行うのは、先進国の食料や文具を、途上国に運んで届けるような単純な援助ではありません。
その地域の問題を抜本的に改善するような、やや広域的な開発活動が中心なのです。
例えば衛生に問題がある地域なら、単に水や薬を配って終わりではありません。
井戸や水道を整備し、下水施設を整え、衛生に関する教育を住民達に行うのです。
教育の場がなければ、地域住民と一緒に学校を建設します。
教える人がいなければ、教師を派遣したり、現地の若者を教師として育成したりします。
可能な限り、プロジェクトは地域住民主導という形で進められます。
そうすれば、フォスター・プランが去っても、地元の人々だけで地域の改善を行えるからです。
それが、フォスター・プランの「援助」です。
↓以下のリンク先に、いくつかの実例が紹介されています。
・フォスター・プランの地域開発プロジェクト
http://www.plan-japan.org/about/develo.html
上記の日本語サイトにアップされている事例の中で、直接的に教育に関わるものは、カンボジアの学校建設プロジェクトですね。
–「カンボジア政府の調べによると、70%の子どもが学校に在籍しているにもかかわらず、卒業に至る子どもはたった2%です。」-
と、たいへんなありさま。
元々は、1975年~79年のクメール・ルージュ政権下において、カンボジアの教育基盤が破壊されたのが原因だとのこと。
そのカンボジアで援助をし、地元の人たち主導で学校を建てているわけです。
私達はよく「我が国は、公立教育をいかに整備すべきか」といったことを議論しますが、カンボジアのような国では、そんな議論以前の問題が山積みなのですね。
正直言って、その国の政策だけでは復興が間に合わない。
政府の行動を待っていると、事態はより一層改善から遠ざかる…。
そんな場合に、フォスター・プランのようなNGOが活躍するのです。
フォスター・プランの特徴は、こうした地域開発援助だけではありません。
「援助国」の人々から寄付を集めるための方法が、ユニークなことで知られています。
フォスター・プランの寄付会員は、「フォスター・ペアレント」と呼ばれます。
月々3,000円以上の寄付を継続的に行う手続きをすると、ペアレントになります。
ペアレントは、自分が関心を抱く国や地域を、援助国として選ぶことができるのです。
で、援助する国が決まると、その地域に実際に住み、フォスター・プランの援助を受けている子供のうちの一人が、ペアレントの「文通友達」になるのです。
「フォスター・チルドレン」といいます。
現地のフォスター・チルドレンからは、様々な手紙や絵などが届きます。
翻訳ボランティアを通じて、やりとりを楽しめるのです。
・フォスター・ペアレントへの通信物
http://www.plan-japan.org/join/parent_4.html
現地で援助にあたるフォスター・プランのメンバーからは、その子供の家族構成や趣味、学校での様子などが最初に報告されてきますので、そうした情報を元に、子供とコミュニケーションをとるわけです。
ちょっとした養子みたいな感じです。
またそれに加えて、現地のフォスター・プラン事務局がその地域の衛生や教育に関する現状、開発を通じての変化などを、年一回報告してきます。
こうしたやりとりを通じ、気づけばペアレントは、その国の問題に高い関心をいただくようになります。
つまりフォスタープランは世界の子供達を援助しながら、寄付をする側の私達には、
「チルドレンとの手紙のやりとりや事務局の報告を通じて、現地の問題を、まるで自分の子供に起きていることのように」
実感させているというわけです。
これは、あらゆる面で、非常によくできたプログラムだと思います!
貧困に対する無知、というのは、現代の世界における最も深刻な問題であるわけです。それを、これ以上ないくらいの素敵な方法で解決しているのですよ。
情報の押しつけとかではなくて、ペアレントが親身になって自ら途上国のことに関心を持ち始めるのですからね。
「月々3,000円」の寄付を集める仕組みも見事です。
毎月3,000円を街の募金箱に入れる、ってなかなかできません。
しかしフォスター・プランの3,000円は、
「このチルドレンと、この子の住む地域を支援しているんだ」
という思いがこもる3,000円です。
この子のためになら、むしろぜひ使って欲しい!と思える3,000円です。
現地とのコミュニケーション費や、時々送られてくる現地ニュースの費用も含めたら、あまり高いと思わなくなってくるかも知れません。
これこそ、マイスターが一種の理想とする「経験経済」の真骨頂です!
○子供や、現地の人々もよろこぶ
○援助する側もうれしい
○フォスター・プランも助かる
という、関係者すべてがハッピーになれるモデル。
この見事なモデルを考えついた人は、とてもスゴイと思います。
というわけで、今日は、「フォスター・プラン」の活動をご紹介しました。
最後に自分のことをちょっとだけ書きますと、
マイスターは、フォスター・ペアレントです。
高校生の頃からずっと興味がありましたので、25歳の誕生日を迎えた記念すべき朝に、申し込みました。
どこの国とは言いませんが、とある国の山奥の村に住む、とある男の子がチルドレンです。
以来、ずっと翻訳ボランティアを通じてコミュニケーションをとっています。
その子を通じ、マイスターはその地域を見ています。
また、その子とのやりとりを通じて、世界の子供達に提供されている教育のことを考えます。
寄付した額以上のものを、確実にもらえていると思います。
ご興味のある方はいかがでしょうか?と、宣伝みたいな文章でしめるマイスターでした。