ニュースクリップ[-1/8] 「主幹教員、全国に配置 主任制廃止」ほか

マイスターです。

あっという間に第二日曜日ですね。
というわけで、日曜恒例の教育ニュースクリップをお送りします!

公立学校の「○○主任」制度廃止、「管理職」が明確化される方針です。
■「主幹教員、全国に配置 主任制廃止」(産経web 教育を考える)
http://www.sankei.co.jp/databox/kyoiku/teacher/060104teach.html

公立学校には「学年主任教員」や「教務主任教員」などの「指導職」が配置されています。「学年主任」なんて響きは、教員でなくても一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
で、この主任というのは、企業組織などの「管理職」とは若干位置づけが異なっているのです。
公立学校の教員の中には、
「教員同士に差別を持ち込む」
「主任制度は管理強化のためのものだ」

という主張で、教員の中に管理職を置くことに反対する勢力があるらしいのです。
その結果、

-主任教員に支払われる主任手当の受け取り拒否や、いったん受領した主任手当を再び教組側が集金、教組の活動に充てる運動が拡大した。日教組本部が柔軟姿勢に転じた平成七年以降も、半ば強制的に手当を集め、制度を骨抜きにする運動が各地で残っている。神奈川県では集めた主任手当で教組系の基金を創設、残高が累計四十億円にまで達するなど、税金の無駄遣いと指摘されている。-(上記記事より)

…なんてことが、普通に行われているとのことなのです。
恥ずかしながらマイスター、ここまでのことが起きていたとは、知りませんでした。
というか、一般企業などに勤める人間からすると、信じられない事態だと思います。
組織マネジメントの上で、職務や権限に差を付けることは当然だと思っていましたが、公立学校ではそうじゃなかったみたいです。

イデオロギー的な背景は色々とあるのでしょうが、少なくともマネジメントやガバナンス設計の点ではデメリットが多いんじゃないかとマイスターなどは思うのですが、いかがでしょうか。
「日本の公立学校の業務効率化が進まないのは、政府や文科省のせい」と主張される現役教員の方は少なくありませんが、原因はそれだけじゃないような気が。
むしろ、これじゃあ政府が何やっても効率化はできないのでは…。

IT機器で子供の安全を守っている事例を総務省が募集中です。
■「子どもを守る「新技術」、普及めざし募集 総務省」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200601030195.html

政府内で情報通信技術関連を担当している総務省が、子供の安全を守るための事例を集めています。
記事では、
「小学生のランドセルなどにICタグを付け、通学路沿いの自動販売機などに読み取り機やカメラを配置することで子どもの居場所を把握する」
という大阪市の実験や、
「携帯電話の全地球測位システム(GPS)を使った位置確認サービスを、子どもの所在確認に役立てよう」
としている、地域の取り組みなどが挙げられています。

もともと自律分散協調システムであるインターネットをはじめ、情報ネットワーク技術というのは、こうした取り組みにはがぜん威力を発揮します。下校時刻以降の全校児童の動きを、リアルタイムでマップ上に表現するなんてのは、容易に行えるはず。
ただ、技術的に可能でも、ひと昔前ならこうした仕組みを政府が推進するなんてことは考えられなかったでしょうね。

研修医の待遇、実態が変わってない病院もあるようです。
■「研修医、7人に1人は週90時間以上労働…筑波大調査」(Asahi.com)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060106it05.htm?from=top

03~04年、全国46か所の大学病院、医療機関で働く研修医のうち、研修開始前から開始9か月後まで追跡できた445人の調査回答を分析した結果です。
TVドラマ化もされた人気コミック『ブラックジャックによろしく』で、研修医の過酷な労働について広く問題提起がされた結果、研修医の待遇は改善されてきたといいます。
(このコミックは当時、国会でも取り上げられました)
しかし調査の結果では、実際にはまだ7人に1人の割合で、常識の度を超える重労働に従事している研修医がいるとのことです。

-労働時間が増えると、最初は自由時間を削って対処するが、90時間以上になると睡眠時間を削ることになる。その結果、患者にやさしく接することができなくなり、医療ミスを起こしやすくなることもわかった。-(上記記事より)

シャレになりません。

100%インターネットで講義を行うサイバー大学開設、今度は福岡市が挑戦です。
■「福岡に全国初のサイバー大学、ソフトバンクなど構想」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060103i101.htm

以前、長野市が特区認定申請した旭インターネット大学院大学のことをご紹介しました。
・自宅が学長室…日本発の完全通信制大学院計画、ポシャる
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50104758.html
・認可されなかった旭インターネット大学院大学について追加情報
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50105829.html

長野の計画は残念ながら認められないまま終わりましたが、今度は福岡市が、100%インターネットで講義を行うサイバー大学の開設に乗り出しました。
しかも、ソフトバンクグループなどが中心となって運営する株式会社立大学だとのこと。
Yahoo!BB等で膨大なインフラとノウハウを蓄積したソフトバンクの取り組みであるだけに、注目です。
学科構成にもオリジナリティが感じられますね。「世界遺産学科」などは、高校生だけでなく、リタイア後の高齢者の方にも向いていそうな内容に思えます。

ソフトバンクがグループを挙げて本気で取り組んだら、いずれは「放送大学」に匹敵する仕組みになるかも知れませんよ。

大手銀行が、大学と企業を仲介するビジネスを展開中です。
■「大手銀、相次ぎ大学と企業を仲介・手数料や取引先拡大」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060105AT2Y2800C04012006.html

いかにも日経らしい記事です。
銀行のこうした事業展開は、政府が設置した技術移転機関(TLO)の競合サービスとなるでしょう。
大学にとっても、企業にとっても、銀行にとってもメリットのある話です。
みなさまがお勤めする大学の取引先銀行も、こうした事業を始めたかも知れません。
そのうち営業が来るでしょうから、色々と聞いてみてはいかがでしょうか。

日本でも増えてきたMOT(技術経営)大学院の卒業生や、知材の専門家などが、銀行でこうした業務に従事するようになるのでしょうかね。

韓国でも国立大学の法人化が進められています。
■「2010年までソウル大など5ヶ所、特殊法人化」(韓国情報発信基地!innolife.net)
http://contents.innolife.net/news/list.php?ac_id=2&ai_id=52566

お隣の国も、似たようなことを行っていました。
ただしこちらは、「選択的特殊法人化」です。すべての国立大学が対象ではありません。
まずは韓国トップのソウル大学などが対象になるようです。
大学経営に関する自己決定権を強化することがねらいであるようです。

韓国の私立学校が、割り当てられた生徒の受け入れを拒否するという事態が起きています。
■「私学法改正案可決で波紋―韓国」(韓国・北朝鮮/ワールド・スコープ)
http://www.worldtimes.co.jp/news/world/kiji/051210-164421.html
■「【私学法】ソウル市の私立中高校、新入生割当を拒否」(朝鮮日報)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/12/16/20051216000005.html
■「【私学法】政府、私学の新入生割当拒否で臨時理事派遣へ」(朝鮮日報)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/12/18/20051218000016.html
■「全北宗教界、私立高新入生割当収容」(韓国情報発信基地!innolife.net)
http://contents.innolife.net/news/list.php?ac_id=2&ai_id=52722

韓国のニュースを続けてご紹介。
こちらは、かなり深刻な社会問題になっているようです。

以前、
・韓流受験戦争の後ろにあるもの ~韓国の大学事情~
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50102792.html

という記事で、韓国の学校制度についてご紹介しました。

韓国では70年代以降、「高校平準化」という政策を採っています
これは、国公私立すべての学校(普通科のみ)を学区に分け、共通試験の合格者を学区内の学校に抽選で機械的に配分するという、すさまじい荒技政策。
賛否両論を抱えながらも、現在まで韓国で運用されている方針です。

ところが今、韓国の私立学校が、「新入生の割り当てを拒否する!」という事態が起きているのです。

原因は、昨年12月に強行採決の末、与党単独で可決した「私立学校法改正案」。
横領事件が相次いだ私立学校の経営を透明化するとして、与党が昨年の総選挙で同法の改正を公約したのですが、その改正法案は、校外理事の4分の1以上を外部から登用するよう義務付けているのですね。
それが、「親北反米」色の濃い左翼的な教育方針を掲げる全国教職員労働組合(全教組)からの理事派遣に道を開くもの…と考えられているそうなのです。
「予算決算や教員人事などを通じて教育現場に親北反米的な理念を広めかねない」として、当事者である私立学校をはじめ、私立学校の経営に携わる宗教界も強く反発する大変な事態になったというのが、ことの経緯のようです。

私学関連団体と行政は真っ向から対立しており、本当に新入生が学校側に拒否される事態になりそうです。
「だったら他の学校に通う」と言いたい生徒もいるかもしれませんが、平準化政策は国公私立すべての学校を対象にしていますから不可能です。どこにも通えません。

本日冒頭でご紹介した日本の公立学校の例といい、どうも学校のマネジメントにはイデオロギーの対立が入り込みがちですね。
教師とは、生徒の学習を支援するための存在ではないのでしょうか。どうも、マイスターと学校関係者との認識がズレているようです。
一般社会の認識と学校関係者がズレていなければいいのですが。

以上、一週間分のニュースクリップでした。
韓国の事例を入れてみましたが、いかがでしょうか?

近いわりに、これまであまり教育制度等について日本では報道されてきませんでしたが、本ブログではこうしてちょくちょく取り上げていきたいと思います。

以上、マイスターでした。
今週も一週間おつきあいくださり、ありがとうございました。

6 件のコメント

  • 夢野挑戦は、公立小学校で管理職をしながら、
    密かに大学の先生も目指しています。
    大学院でお世話になったお師匠さまにいうと、
    想像もできないような努力が必要ですよ。
    というコメントを戴きました。
    どうしたら、大学教師の道が開かれますか。
    教えて戴いたら嬉しいです。
    そうそう夢野挑戦も研究主任になったとき組合に先生から
    主任手当の拠出を言われました。
    その学校の実力者に言われると、断れませんでした。

  • >組織マネジメントの上で、職務や権限に差を付けることは当然だと思っていましたが、公立学校ではそうじゃなかったみたいです。
    そもそも主任なんておいて、職務を区別することはできても、差別化ができないのだから、何も利点がない。
    だから無くせばよいこと。
    分掌なんてもちまわりでやっているのだから。
    「何でも屋」の公立教員のレベルでは「あったりまえ」の感覚です。
    (と、いうより、私自身が中に入ってびっくりでしたよ)

  • >「日本の公立学校の業務効率化が進まないのは、政府や文科省のせい」と主張される現役教員の方は少なくありませんが、原因はそれだけじゃないような気が。
    >むしろ、これじゃあ政府が何やっても効率化はできないのでは…。
    主幹をおき、コンピュータを導入しては担当主任をおき、英語を入れては担当主任をおき、特別支援もおき、どんどん名前だけおいていって、効果的な研修も、その時間も与えず、持ちたくもない、持てない責任を押し付けられる。それの何が効率化なのでしょうね。

  • 政府がやっているのは施策の丸投げ、多忙化であって、効率化ではないですから。
    決してスリム、スマートな方向ではないですよ。
    (まあ、それは現場からの声を聞かない態度に表れていると思いますがね。教師同士の連携、共同は崩壊しつつあると思います。)
    さっさと実効性のあやしい主任手当なんて、交通費にもならない中学の部活手当にでもまわしてあげて、ツギハギの効率化を考え直さなければならないのでは?

  • 夢野さま:
    こんにちは、マイスターです。せっかくコメントをいただいていたのに、お返事が遅れてしまい、大変失礼いたしました!
    夢野さんのブログは、コメントをいただいてすぐ、拝見いたしました。
    現場経験を元にした豊富な実践知を体系化できるような研究者、そしてそれを次の世代の教員養成に活かしていくような教育者を目指されているのかなと推察いたします。これは、たいへんすばらしいことだと思います。
    今後、教職大学院という、教員養成のプロフェッショナルスクールが開設されていくのは、ご存知かと思います。
    こうした機関で教育にあたる教員には、単なる「実務経験」だけではなくて、最先端の研究成果に触れながらアカデミックに物事を考え実践的研究を生み出していける、研究者としての素養も求められているようです。
    こうした背景を考えても、夢野さんのビジョンは、まさに時代が求めているものなのではないかと思います。
    さて、大学教員になる方法ですが、私は教育学部のスタッフではないので、あくまで個人的な意見として、申し上げてみたいと思います。
    夢野さんの場合、すでに現場でかなりのキャリアを積まれており、また修士号も取得されているのですね。
    そして、教員養成に関わっていきたい、という強い希望をお持ちであるとのこと。
    となるとやはり、従来型の伝統ある教育学研究に携わるというよりは、プロフェッショナルスクールである「教職大学院」の教員を目指されるのも手ではないかな、と思います。
    中教審の素案では、教職大学院では、教員の4割を実務経験者にするということになっていますから、夢野さんのキャリアを考えれば、可能性は決して低くはないのではないかと思います。
    どのような教員を、どのように採用するかというのは、大学院によってそれぞれです。
    大学のwebサイトに、教員公募の情報が載っていることもあります。応募条件が詳しく書かれていることも多いので、まずはそうした発表情報をチェックされてみるのがよさそうですね。
    またスタッフ編成については、大学院ごとの方針というのもあるようです。
    たとえば東京大学の「学校教育高度化専攻」は、実践的研究をつむぎだす研究者としての側面を重視しているようですし、
    兵庫教育大学などは、現場の経験を持った「実務家教員」という面を重視しているようです。
    (以上は、「『Between 217号』進研アド社」の、教職大学院の特集に書いてありました)
    こうした学校ごとの違いについては、大学主催のシンポジウムなどで情報を集めたり、直接大学教員にお問い合わせになったりするといいかも知れません。
    優れた実務家教員を4割集めるというのは、どこの大学にとってもなかなか難しいことですから、ご自身の出身大学をはじめ、各大学にこちらから積極的にアプローチしてみるのもいいと思います。
    あとは学会発表や、学会誌への投稿などの経験がおありですと、「単なる実務家ではないぞ」という点で、よりアピールしやすいのではないでしょうか。
    以上はあくまで私なりの考えですので、教育学部の関係者など、よりお詳しい方にもご意見を聞いてみてくださいね。
    今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
    (※この点にお詳しい方がいらしたら、コメントをお願いします!)

  • マイスターさん、質問に答えて下さりありがとうございます。とても参考になりました。実践に埋没しがちな日々ですが、なんか勇気と希望が湧いてきました。勿論、簡単に叶う夢ではないと思います。司法試験に合格するより難しいかもしれません。でも、夢見る公立小学校教師のままで終わりたくないですね。