文科省、メルマガで各紙の批判に反論!

文部科学省から目が離せないマイスターです。

いや一応、教育関係者である以上、この省から目を離しちゃいけないわけですけど…
今は、いち大学職員とは違った視点で、文科省が気になってます。

【教育関連ニュース】——————————————–

■「初中教育ニュース(仮称)文部科学省初等中等教育局メールマガジン
臨時増刊号 平成17年11月2日」
(文部科学省初等中等教育局内「初中教育ニュース」(仮称)編集部)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/09/05092802/006.htm
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以前、記事でご紹介した、初等中等教育に関する文科省のメールマガジンです。

・文部科学省メールマガジンの問題
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50061763.html

このメルマガが、最近、臨時増刊号を出しまくっているのですよ。

○第1号〔創刊号〕 平成17年10月13日
○臨時増刊号 平成17年10月21日
○第2号 平成17年10月27日
○臨時増刊号 平成17年11月1日
○臨時増刊号 平成17年11月2日

創刊以来、臨時増刊号の方が多いです。
特に第2号からは、一週間のうちに計3号を発行しています。

情報更新頻度が高いのは、いいことです。
ちなみに臨時に増刊号を出した理由は、以下の文面でわかります。

「中教審での審議について、とりわけ義務教育費国庫負担金に関する結論に関して、様々な報道がなされていますが、その中には、残念ながら、審議の状況を正確に承知されていないものもあるようです。
        (中略)
 今回は、義務教育費国庫負担金に関する結論が、どういう経緯をたどって答申に至ったのか、その大まかな流れについて、9月30日の義務教育特別部会から 10月26日の総会までの16時間分の議事概要から紹介します。委員の真摯な議論の積み重ねを通じて、答申が取りまとめられたことがご理解いただけると思います。」
臨時増刊号 平成17年11月1日より)

「10月26日に中教審答申が出されてから1週間が経ち、新聞各紙では答申が社説や解説で取り上げられる一方、今後の観測記事、中教審会長インタビューや委員の寄稿など、さまざまな報道が行われています。中には明らかな誤報もありましたが・・・。このあたりで一度、これまでの報道を振り返っておきたいと思います。」臨時増刊号 平成17年11月2日より)

つまり、

「義務教育費国庫負担金についての新聞の報道には、正確でない情報があるから、文科省が整理します」

ということですね。
2日連続で整理するくらいですから、さぞ、言いたいことがいっぱいあるのでしょう。

このようにメディアの報道に対し、問題の中心である文科省自身が、訂正や、反論をネットで公開するという姿勢は、歓迎すべきことだと思います。

特にここしばらくは中教審の答申だの、それに対する各紙の報道だのが続きましたから、
それに対応して情報が逐一公開されるというのは、好ましいことです。

メルマガから中教審の議事録などにリンクが張られていて、
「興味がある人はこっちも見て!」という状態になっているのも、すばらしいです。
情報の窓口になっているわけですね。

Webというツールがあるからこそ、なせるわざでしょう。
いちいち、全国津々浦々に官報と議事録を配っていてはキリがありませんからね。

で、臨時増刊したメルマガ11月2日号では、新聞各紙の報道について、真っ向から反論しています。

実際にメルマガの文章を読んでいただければわかりますが、
「官報」の類によくある、感情を一切排除したプレスリリースではなくて、

「あぁ、文科省のみなさん、腹を立ててるんだな。怒ってるな」

とか、

「文科省必死だぁ」

とかいった雰囲気が伝わってくる文章になっています。

事実関係の訂正というレベルにとどまらず、

「朝日新聞を購読されている方は、27日の社説と30日の解説記事のトーンがだいぶ違うなという印象をもたれたのではないでしょうか。これは、解説記事は毎回の審議を傍聴している記者が書いているのに対して、社説を執筆している論説委員は必ずしもそうではない、といったところに原因があるのではないかと思われます。」臨時増刊号 平成17年11月2日

など、各面の記事の主張のズレにまで言及しています。
これぞまさに、血の通った文章! 担当者の怒り心頭っぷりが、行間から漏れ伝わってきます。

とりあえず、そうした姿勢がいいか悪いかは別として、
こうした情報発信は、従来の官公庁には見られなかったものではないでしょうか?
なんだか面白くなってきたぞ!
と、無責任な立場で楽しんでしまうマイスターです。

ところでインターネットメディアでは、「書き手の人となりが伝わるような文章がよい」とされている風潮って、ありますよね。
ブログなどではそれが顕著です。

実際には、インターネットはツールでしかありませんから、客観的なデータを集めただけのブログや、官報メールマガジンなどもアリではあるのですが、なんとなく文科省のメルマガ編集部のみなさんは

「せっかくメルマガに知るんだから、従来の官報などとは一線を画したものにしよう!」

と意図しているんじゃないかな、と感じます。
それが、上述したような文章のトーンとして、表れているんだと思います。

ただその結果、(本人達も気づいてないかもしれない)ホンネとタテマエのズレも出てきているよなぁ、と感じます。

-継続してお読みいただいている読者の方はご理解いただけると思いますが、このメルマガは教育改革をめぐる様々な情報を迅速にお届けするために創刊されたものであり、自治体に圧力をかけるような意図は全くありません。また、文科省として、各市町村に対し、意見書提出を要請している事実もありませんので、誤解のないようお願いいたします。-臨時増刊号 平成17年11月1日

…とおっしゃっていますが、

このメルマガ、「圧力」というほどではないかもしれませんが、
「教育改革をめぐる様々な情報を迅速にお届けする」という目的に加えて、
「(地方六団体や新聞報道に対抗する)文部科学省の意見や主張、目的をアピールする」という意図は、
確実にこめられていると思うのです。

少なくとも、客観的な情報提供者ではありません。

たとえば、

「10月27日(木曜日)朝日新聞夕刊(東京本社版第4版)に、「義務教育費国庫負担、中学分廃止へ」との記事が載りましたが、これは完全に事実無根です。報道をご覧になって驚かれた方もいらっしゃると思いますが、ご安心ください。

「義務教育費国庫負担制度の扱いの議論は、今後も、政府、与党内で続けられて、最終決着は11月中下旬になる見込みです。私は、義務教育費国庫負担制度の所管課長として、制度の堅持に向けて引き続き励みますので、みなさんも誤報に踊らされることなく、ご支援をよろしくお願いいたします。
(ともに「初中教育ニュース(仮称)」平成17年10月27日号より。赤字強調部分はマイスターによる)

…などなど、節々に

「野郎ども安心しな!
 文科省は義務教育費国庫負担制度を死守!の立場だぜ!
 応援、夜露死苦!!」

的な表現が垣間見えてます。
新聞が先走ったのをチャンスとばかりに、自分のところのアピールをしているように見えるのですが、違うのでしょうか…?

一方同じメルマガ内で、朝日新聞の報道に対しては、次のようにな批判をしています。

「(義務教育費の扱いについて)細田官房長官が、27日夕方の記者会見で「まだ検討の緒についたばかりでございますから、方針を決めたという事実はございません。」と述べられているとおりです。

政府として決めていないことをあたかも決まったように報道するのはいかがなものでしょうか。」「初中教育ニュース(仮称)」平成17年10月27日号

つまり、「まだ決まっていないことを、規定路線のように報道するな」ということでしょう。
ごもっともです。
ただ、それを言うならこのメルマガも、

「義務教育費国庫負担制度の維持についてご支援をお願いします」

といったあからさまなメッセージを発信するのは、どうでしょうか。

注意しなければならないのは、このメールマガジンは、「読みたい人だけが読む」メディアではないということです。
現状では、文部科学省が選んだ「全国の都道府県・市町村教育委員会及び教育関係団体」は、自動的に配信先に設定されているわけです。

「興味がある人は読んでね」

ではなくて、どちらかというと

「あなた方は教育関連団体であるのだから、これを読むこと」

という姿勢です。

そんな、「関係者対象」のメルマガで、「制度の堅持に向けて励みますので、ご支援よろしくお願いいたします」という明確なメッセージを文科省の名の下に配信しているわけです。

選挙前に、利益団体の事務所のポストに政策ビラを押し込んでまわっている、町のエライ人。
そんな風に見えなくもありません。

なんだか、継続して読めば読むほど、

「このメルマガは教育改革をめぐる様々な情報を迅速にお届けするために創刊されたものであり、自治体に圧力をかけるような意図は全くありません。」

という編集部の言葉が、どうも嘘っぽく思えてくるのは、マイスターだけでしょうか。

自由に自分の主義主張を語れるインターネットメディアだ、とまでは開き直れないけど、
客観的な情報配信メディアというわけでもない。
なんだか、時と場合によって

「中立を旨とする官報的な顔」と、「ネットで自分達の声を伝えたいという気持ち」

が、都合よく切り替えられている。

それが、このメルマガの、現在の状況かなと感じます。

官公庁が情報を積極的に発信することに対しては、冒頭でも申し上げたとおり、個人的には賛成です。

ただ、それが「客観的な情報公開のフリをしてるけど、実際は関係者から支援を取り付けるためのメディア」になったら、残念です。

いっそ、はなっから「文科省はこう主張する!」とかいった名称のメルマガなら、どうでしょうか?
議論のきっかけになるし、国民から意見を集める上でもいいと思います。

でも、それはきっと、タテマエとして問題あるんでしょうね。

タテマエとホンネのズレが、このメルマガの上で浮き上がっているという感じです。

ちなみに2005年11月2日の臨時増刊号にて、

「答申を契機に、インターネット上でも義務教育費国庫負担制度について、活発な議論が進行中です。次のブログは、関連資料がきれいに整理されていましたので、国庫負担制度の行方に興味のある方は参考にしてください。
http://blog.so-net.ne.jp/gimukyoikuhi/

と、ブログにリンクが張られたりもしています。

上記で紹介されているブログ、「義務教育費国庫負担金について」という名前です。
確かに、中教審の議論を丁寧にまとめた、非常によくできたブログだと思います。ぜひ、みなさんも参考にしてください。
マイスターも、さっそく「お気に入り」に登録しました。

ただ、注意しておきたいのは、ここで紹介されているブログ「義務教育費国庫負担金について」さんは、
「中教審に関して、文科省が発信したインターネット情報を整理し、まとめるのが目的のブログ」なんだということです。
たとえばブログのメニュー欄に、「前川喜平の『奇兵隊、前へ!』」とか、「藤原財務課長が語る」とかタイトルがつけられていますが、このお二人は、ともに文科省の課長さんです。
このブログ、文科省以外のメディアが掲げた意見などは、基本的に一切、掲載されていません

文科省の発表&中教審の議論を整理したいときには、この上なく便利な良質ブログであるわけですが、
文科省メルマガにある「活発な議論が進行中」という場面を見るには、
新聞各紙のWebサイトや、他のブログなどもあわせてご覧になることをオススメします。

(時にこの「義務教育費国庫負担金について」さん、各メディアのチラシやパンフをそのまま掲載しておられますが、著作権は大丈夫なのでしょうか…?
余計なお世話かもしれませんが、ちょっと心配です。情報作成者である文科省自身が、メルマガでオススメしてるくらいだから、いいのかな?)

こんなことを書いている以上、「俺の職場は大学キャンパス」が、文科省メルマガで取り上げられることはまずないな、
と思うマイスターでした。

5 件のコメント

  • こんには。トラックバックが一つよけいについてしまいました。このコメントと一緒に一つ削除しておいていただけないでしょうか。すみません。

  • >「(地方六団体や新聞報道に対抗する)文部科学省の意見や主張、目的を アピールする」という意図は、確実にこめられていると思うのです。
    と書かれていらっしゃいますが、文科省側としてもそれは前提として書いていると思いますよ。「圧力をかけていない」という事と矛盾しているわけでもないとですし。先に言うと私は文科省を支持する側の人間ですがこの方々は本当に義務教育の未来、将来の日本の事を真に考えていらっしゃいます。文章だけではなかなか伝えるのは難しいと思いますが、私は面識もありますけれど彼らは熱意のある全うな官僚でした。

  • 今一度、矛盾点や疑問点を見出すためではなくじっくり読んでみてほしいと思います。国庫負担制度を廃止すると確実に教育にダメージを与えるという事は殆ど国民に伝わっていませんが彼らはそれを必死にアピールしてなんとか日本の教育を守ろうとしています。突然こんな長ったらしいコメントをして失礼極まりないと思いますが本当に正しいのは彼らだという事をどうしても理解してほしいのです。すみません、読んでくださってありがとうございました。

  • YSK様:
    マイスターです。コメント、まことにありがとうございます。
    こうして様々なご意見をいただけると、私自身、とてもべんきょうになりますし、私が触れられていない論点も提示して頂けるので、とてもうれしいです。
    YSK様がおっしゃっているように、私も、官僚の皆様は、熱意と善意でこうした意見を発信しているのだと思います。(私もちゃんと、このメールは、一度じっくり読ませて頂きました)
    私も、そこは理解しているつもりです。私は文科省と、それに対立する意見の、どちらの考えが正しいかは、正直言ってまだ判断できておりませんので、どちらからも距離を置きたいと考えています。
    今回の記事で私が指摘申し上げたかったのは、そうした、主張の内容よりもむしろ、これが「強制的に登録・配信されるメールマガジン上で行われた主張であるということ」でした。
    配信取り消しの方法がないメディアで主張をこうして配信するというのは、「提案・アピール」というより、もはや「通達」に近いのではないか、と思うのです。
    これが、政府が一貫して推し進める内容であればさほど問題にもならないのでしょうが、内閣と文科省で意見が対立し、互いに争っているテーマに関することでしたので、気になったのです。
    文科省の公式メールマガジンが、まだ「未決定」の問題について、文科省が選んだ教育関連機関に対し、あたかも通達のように一方的にメールを配信する…この一連の行動に対し、違和感を感じたのです。
    YSK様など、文科省の意見に賛同されている方にとっては特に気にならないことであったかも知れませんが、(文科省とは逆の)内閣の考え方を支持する方にとってみれば、果たしてこの文科省のメールマガジンは、どのように受け取れたでしょうか。
    例えるなら、「選挙中に、特定政党のビラが郵便受けに投げ込まれるようになった。しかもそれが、官報とセットになっている」という状態と余り変わらないのではないか? と、私は危惧するのです。
    以上が、私の考えでした。
    YSK様のように、ご意見をいただけますと、記事では説明不足だったかな…と思う部分がわかり、こうして改めて意見を申し上げられるので、ありがたいです。
    重ねて、御礼申し上げます。