マイスターです。
このニュース、既にご覧になった方も多いかも知れませんね。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「親の年収400万円未満なら授業料タダ・東大、免除枠広く」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070830AT1G2903629082007.html
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東京大学は家庭に経済的余裕がない学部生に対する授業料の免除枠を来年度から広げる。家庭の年収、構成人数などを総合的に判断して免除の可否を決めている現行制度を簡素化、年収が400万円未満なら一律に授業料全額を免除する方式に改める。国立大では初の試み。
(上記記事より)
というわけで、東大がこのような方針を打ち出しました。
最近では「格差社会」という言葉が、すっかり市民権を得たようです(もちろん世界を見れば、日本より遙かに格差の大きな国がごまんとあるのでしょうが)。
その中でも、特に問題視されているのが、教育格差の固定化です。
「高所得者の子供ほど恵まれた教育機会を受けて有名大学に進学し、所得の高い職業に就く。それが格差の拡大につながる」
というものですね。
実際には、世間で思われているほど有名大学に高所得者の子供が多いわけではないという指摘もあります。
しかしそれでも、こういった流れが今後、加速していかない保証はありません。
格差が固定化されないような社会的な仕組みを用意することは、大切なことです。
というわけで、東大の決定は、社会的にも賞賛されるものでしょう。
ところで、東大生の中で「年収400万円未満」という層は、一体どのくらいいるのでしょうか。
東京大学の学内広報で、「学生生活実態調査」の結果が公表されていますので、見てみましょう。
■「2005年 学生生活実態調査:第2部 学生生活の背景」(東京大学)
http://www.u-tokyo.ac.jp/gen03/kouhou/1348/6.html
2005年のデータを見ると、「450万円未満」が13.7%ですね。
今回の条件の「400万円」と少しずれているので、正確な数字はわかりませんが、およそ1割程度といったところでしょうか?
「学生の1割が、学費無料」と考えると、これはかなり多いように思われます。
実際には、
東大の学部の授業料は年53万5800円。いまは授業料が免除されるのは世帯の年収から特別控除額を引いた金額が基準額以下で、特別控除額や基準額は家族構成などによって異なる。例えば「4人家族、弟が公立高校生、自宅外通学」なら年収310万円以下の場合に全額免除が認められる。
(冒頭記事より)
……のようにもう少し算定方法が複雑みたいですが、それでも、それなりの人数に適用されそうです。
で、素朴な疑問なのですが、この分のお金はどこから補充するのでしょう?
例えばアメリカの有名私立大学は、元々の学費設定額が非常に高いです。
年間2~300万円とか、大変な額です。
しかし、家の所得があまりなかったり、学業が優秀だったりすると、学費が免除されることも少なくありません。返還無用の奨学金も豊富です。
つまり、「もらえる人からもらう」「裕福な家庭からもらった分を全体に分配する」という構図です。
これは、(制度の是非はともかくとして)仕組みとしてはわかりやすいです。
で、東大の場合、学費が無料になる分はいったいどこで補填されるのかなぁと、ちょっと気になりました。
寄付金を集めて作った基金の運用益……が使えるのは、おそらくまだもう少し先だと思いますし。
もしくは、この程度なら学費を無料にしても、経営が成り立つのでしょうか。
……と、こういった点も考慮に入れた上で、持続的に学費を無料にする仕組みができたのであれば、それは素晴らしいことだと思います。
いったいそのあたりがどうなっているのか、興味津々のマイスターでした。