コンセプトとか、テーマとか、ビジョンとかいう言葉、大好き。
【教育関連ニュース】——————————————–
■「岐阜大など『中期計画に遅れ』 文科省評価結果」(読売オンライン:中部:教育)
http://chubu.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyo050917_1.htm
・各国立大学の中期目標・中期計画の素案(平成15年9月)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/03101701.htm
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先日のニュースクリップでもご紹介した通り、国立大学の中期目標に対する評価が公表されました。
Asahi.comの記事は、「落第ゼロ」を大きく報道していましたが、
こちらの読売は、「業務の効率化」や「情報提供」などの項目別で「やや遅れている」と判断された大学が14校に上った、という点を批判的に捕らえた記事です。
具体的にどの大学が「遅れているか」を出している記事はAsahi.comを含め全然見られなかったので、貴重です。
・定員割れ
・ガバナンスの問題
・効率化の遅れ
などが理由に上げられています。
定員割れは、様々な原因が考えられますし、個別に考えるべきことですので、ここでは取り上げません。
ただ、マイスターが大学職員である関係上、どうしても
2番目、3番目の問題は気になります。
そこで、↓の大学の、具体的な中期計画を見てみました。
岩手大:自己点検・評価の全学的取り組みが不足
茨城大:事務の効率化・合理化の取り組み不足
群馬大:教授会の審議事項の整理などが必要
広島大:組織活動の改善などが十分に達成されず
大分大:経営協議会の活用が不十分
宮崎大:人事評価システムの整備の遅れ
冒頭でも取り上げた通り、ここのリンクに、「素案」段階のものがまとめられています。
素案ですので、最終決定案とは若干変わっているかも知れませんが、
複数の大学の「方針」の違いをざっと比較するには、便利です。
たとえば、茨城大学。
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4 事務等の効率化・合理化に関する目標を達成するための措置
(1)事務組織の機能と編成を見直し、柔軟で効率的な組織編制とする。
(2)業務の簡素化とIT化を推進する。
(3)事務等の業務の効率化を図るために、外部委託等を検討し、導入する。
(茨城大学中期目標素案
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/03101701/015.pdfより)
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これが、進んでないってことですか…。
どれでしょうか。
(1)が進んでないんだったとしたら、悲しいですね。
群馬大学で問題とされているのは、ここ↓。
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2)- (1) 学部長その他の部局長補佐システムを強化する。学部等の規模に応じて、副学部長ないし学部長補佐等を置き、学部等運営の効率性・機動性を高める。また、学部等の運営会議もしくは運営委員会の規模及び任務を再検討するとともに、必要に応じて、企画戦略室(仮称)を設置し、学部長等のリーダーシップが有効に発揮できるようにする。また、必要に応じて、当該学部等の運営に関して高い見識を有する学外者(非常勤職)を上記企画戦略室に参画させ、運営面での活性化を図る。
(2) 教授会等の審議事項の整理、審議資料の電子化等を実施し、意思決定過程の合理化と効率化を図る。
(3) 教育研究を評価する全学的組織を設置し、評価基準・評価方法を確立し、評価結果を公表するとともに評価結果に基づき全学的視点からの戦略的な資源配分を行う
(4) 学部長等に、一定の裁量経費枠を認め、学部等の戦略的な資源配分が可能となる措置を講ずる。
(群馬大学中期目標素案
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/03101701/018.pdfより)
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「教授会等の審議事項の整理」が必要とのご指摘でした。
そんなに、整理できてないのでしょうか。
こういっちゃなんですが、
「審議事項の整理ができてない教授会」って、すっごく想像しやすいです。
続いて、「組織活動の改善などが十分に達成されず」とされた広島大。
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4 事務等の効率化・合理化に関する目標を達成するための措置
【事務組織の機能・編成の見直しに関する具体的方策】
(1) 事務局・各部局ごとに個別に行われていた業務を見直し,新たな運営組織によって効率的・合理的な大学運営を行う。
(2) 業務の効率化・高度化を図るため業務マニュアルを作成し,情報や業務ノウハウの共有化を進める。
(3) 組織活動の要素とされている,戦略,組織(人),業務の流れ及び情報化の在り方を見直し,サービス機能の強化,企画・立案機能の強化を図るとともに,スリム化と効率化を達成する。
(4) 情報の共有化と電子申請等を可能とする電子事務室を構築する。
(5) 「文書館」を設置し,行政文書の整理・保存と管理の一元化を図る。
(6) 財務会計システムや人事・給与システムなど,これまで個別に構築されてきた各種の業務システムを,統合的なデータベースを基盤とするERP(統合基幹業務システム)として再構築する。
(広島大学中期目標素案
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/03101701/066.pdfより)
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問題になっているのは(3)?
もし、そうだとしたら、それって非常にまずいのでは。
組織の基本ですよ。
もっとも、これが十分にできている大学なんて、日本にいくつあるかわかりませんが。
続いて大分大学。
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Ⅱ 業務運営の改善及び効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置
1 運営体制の改善に関する目標を達成するための措置
○全学的な経営戦略の確立に関する具体的方策
・役員会・経営協議会・教育研究評議会などにおいて,人的・物的資源の有効活用と財政基盤の強化のために,学内コンセンサスの円滑な形成に留意しつつ全学的な経営戦略を確立し,公表する。
(大分大学中期目標素案
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/03101701/079.pdfより)
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経営協議会の活用が不十分、とのこと。
結局、旧態依然としたガバナンスで動き続けている、ということでしょうか?
最後は、人事評価システムの整備の遅れを指摘された、宮城大学。
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3)人事評価システムの整備・活用に関する具体的方策。
1 教職員の適正配置を確保する観点から、教職員の業績評価システムを構築する。
2 教職員の業績を評価し、その結果が適切に反映される給与システム等の構築を図る。
4)柔軟で多様な人事制度の構築に関する具体的方策
1 産学連携や地域貢献のために教職員の学外活動を促進する勤務形態を導入する。
2 柔軟な兼職・兼業の基準の策定を行う。
(宮城大学中期目標素案
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/03101701/080.pdfより)
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業績評価システムと、それを反映する給与システムの構築が、できていないらしい。
というわけで、普段ほとんど目にすることのない資料を見てしまいました。
じっくり見ると、結構、面白いです。
たとえば、
・事務組織の編成を見直し、機能的な組織にする
・教員、職員が一体となって効果的に動ける組織とする
・事務職員の専門化を図る
といった項目は、実はほとんどの国立大学の中期目標に入っています。
どこの大学も、事務職員の活用について、よく勉強されているのがわかります。
ただ、ほとんどの大学が、実行すべき中期目標にしている割に、こうした取り組みが普段全然聞かれないのは何故でしょう…?
ほんとに、みんな、やってるのかな?
もちろん、大学によって書かれている内容にも差はあります。
事務職員の活用法や、今後の方向性について、たとえば群馬大学などは、なかなか具体的な方策を書いています。
(詳細は、群馬大学の中期目標を参照のこと)
それに対し、事務職員軽視のオーラが出ているのが、大分大学。
「事務職員の専門性向上のため,SD(自己啓発)への積極的な取り組みや業務遂行に有用な民間研修等への積極的な参加を推進する。」
SDは、自己啓発だそうです。
中期目標にこんなことが書かれるようでは、組織だった高度な大学業務の遂行は望めなさそうです。
これらの中期目標、結構面白いですよ。
教育、研究については、どの大学も似たり寄ったりのことしか書いていません。
それに対し、事務組織への言及では、内容的にも、書かれている文章量としても、かなりの差が出ています。
「事務は…まぁ、どうでもいいよ」
とか思って書かれたんだろうな…なんて文書は、一目でわかります。
みなさんも、ぜひ、お時間のある時にご覧あれ、
ところで、冒頭の発表なんですが、
■「国立大学法人評価委員会 総会(第11回)の開催について」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/kaisai/001/05091201.htm
ずいぶんと、こっそり公表するんですね。
マイスターなんか、実質、傍聴、できません。
そのくせ、webにはまだ公開されてません。
いったいどーなってるんだ文科省。
国立大の裏側を見た気がするマイスターでした。
詳細なご紹介有り難うございます。
国立大学は、従前から分相応の競争をしてきたと考えております。今回の法人化に伴い、組織能力の違う大学とも競争しなければならないと考えたと推察できます。また、事務的能力(人数を含む)の差は歴然としており、さらに文書作成能力の差により見た目の違いが表出していると考えております。
真に、違いが出てくるのは次の中期目標・中期計画だと考えます。
コメントありがとうございます。マイスターです。
ktさんのおっしゃる通り、文書作成能力による見た目の違いも確かにありますが、それ以上に、「特定の事項に言及しているか、していないか」、また「言及の内容、具体性」に、差がついていると感じました。
ご指摘の通り、次の中期目標・計画の内容には、さらに大きな差が出てくると思います。
今回の各メディアの報道で不満だったのは、より改善が進んでいた大学が公表されていないことです。
先日のAsahi.comの報道では、
「『特筆すべき進行状況』とされたのが東京工業大など7校」とありますが、どのメディアも、こちらについて詳しい内容を伝えてくれていません。
こちらもご紹介できれば、より良かったのですが…。
具体的にもう少しだけ書きます、
全体比較ではなくて、歴史区分別に比較して頂くと、より分かり易くなります。
なるほど、よくわかります。
↓このような感じで、ですね。
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50037992.html
ただ、元々、今回のように国立大学に中長期の計画を立てさせたり、競争をさせたりする背景には、国立大をこうした帝大、官立大時代からの序列化から脱却させるという意味合いがあると思います。
実際にはそう簡単にはいきませんが、理念は、そうです。
もちろん地域別の役割や、各大学の規模に適した役割があるとは思いますが、各大学さんがそのあたりをはっきり表現されていないので、こちらからは触れていません。
(ほとんどの国立大学さん、見ているところが、東大とあまり変わらないのです。関係者にだけわかる「微妙な」部分にはちょっと差がありますが、大筋では「ミニ東大」を志向されているようです)
メディアも、歴史区分別の大学評価には、言及してはいません。
私自身も、今後日本が目指すべきところを考えると、歴史区分別に大学を評価することには抵抗がありますし、各大学さんが、自らそうしたポジショニングを目標として掲げていないこともありましたので、今回はそのような記述は避けました。
しかしご指摘の通り、現状をよりわかりやすく理解するという意味では、歴史区分別に大学の中期目標を見てみるというのも、面白いかもしれませんね。