東大が初の受験生向け説明会

マイスターです。

今日は、「鳥人間コンテスト」に対する愛をたっぷりと語る予定でしたが、すぐに取り上げないと忘れられてしまいそうなネタがあったので、そちらを優先します。

【教育関連ニュース】——————————————–

■「待ってるだけじゃ奪われる 東大が初の受験生向け説明会」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0920/001.html?ref=rss
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ブログでご紹介しているように、マイスターは、
web上で展開される企業の広告や広報についての企画を立てる会社で働いていました。

入社して、最初に座学の研修がありました。

そこで、最初に問われたのは、

「広告はなぜ必要か?」

ということ。

ブランド価値を高めるためとか、
購買意欲を高めるためとか、
就職希望者を集めるためとか、
まぁ、いろんな理由があるわけですが、

一番シンプルで根源的な答えは、おそらく、

「同じものを売ってる会社が他にあるから」

ではないでしょうか。

島に一軒しかパン屋がなければ、島の住人は、そこにパンを買いに行くしかありませんよね。
この場合、このパン屋が広告を出す意味合いは、非常に低いです。
だって、パンが欲しけりゃ、ほっといてもみんなこのパン屋にくるんだもの。

(パン屋の住所が知られてなかったり、
 その島ではお米が主流でパンの人気がなかったり、
 そういうときには広告が意味を持つけど、今回それは考えないことに。)

これまでの東大は、言ってみればこの

「島でただ一つのパン屋様」

の意識でいたんだろうな、と思うのです。

だって、ほっといても、入れる人は東大に来たんだもんなぁ。
他にもパン屋(京大とか、阪大とか、そのほか日本のあらゆる大学)はあったけど、
それは、

「ウチでパンを買えなかった人のための店」

だと考えてたんだろうなぁ、きっと。

でなきゃ、1877年の創設以来、これまでただの一度も受験生向けの大学説明会をしてこなかった理由が、説明つきません。

以前取り上げましたが、「大学案内」のパンフレットを作ったのも今年が初めてだそうです。

・東大が初めて大学案内
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50013353.html

なんで、急に方針が変わったか。

AERAの「面倒見のいい大学」シリーズに紹介されていましたが、
広報に関して、民間出身の人材を起用したというのが、直接の理由のようです。

じゃあ、なんで民間出身の方に、広報責任者をやらせることにしたか。

記事の中で、駿台予備校の方が述べています。

-5会場での説明会場を提供する駿台予備学校広報課の利倉和彦課長は「少子化で学生獲得競争が活発化したうえ、優秀な生徒の中には直接海外の一流大学をめざす動きも出てきた。東大に受かっても、別の大学の医学部に流れる生徒も増えている。東大も危機感を持ち始めたのだろう」と分析している。 –(冒頭Asahi.com記事より)

つまり、

○パンを食べてくれる島民が減ってきたので、島中からお客さんを呼び込む必要が出てきた

○パン好きの中に、島を出て、もっとおいしいパンを買い求める人達が出てきた

○他のパン屋に魅力を感じる人たちが出てきた

ということでしょうか。

気づけば、もう島の中にも外にも、同じくらいうまいパンを焼ける店が、いっぱいできていたのですね。

で、本当にうまいパンを欲しがる人たちは、多少のリスクを恐れず、
そうした様々なパン屋に通い始めていたのです。
あぁ、衝撃の事実。

こういうとき、お客さんはその事実にいち早く気づきますが、
当人であるがんこ店長は、最後まで気づかずにいたり、気づかないフリをしていたりするのです。
どの業界にもよくある悲劇です。

さて。

こうなると、原点に立ち返って「パンのうまさ」が比較されることになりますが、

そもそもこのお店は、でっかい店のカンバンだけに頼っていて、

商品であるパンをこれまでろくにアピールしてこなかったのです。

老舗ですから、実際、うまいパンを焼けるはずなんですが、
それを売るためには、店頭に並べるとか、チラシを配るとか、
そういう宣伝を少しはしなければなりませんよね。
(他の店は、もう何十年も前から、やっているわけです)

それどころか、今やこのパン屋は、

「あの店は歴史があるけど、いつまでも古いカチカチのパンを売ってるんじゃないか?」

とか、

「店頭に掲げたパンのメニューはすごそうだけど、実際に食べさせてくれるパンは、貧相らしいよ」

とか、

「あの店は、村長から送られた高価なパン焼き器をいっぱい備えているけど、客に食わせるパンのためには、使ってないらしいよ」

とか、そういう噂も立てられてしまっているわけです。
他ならぬ、島民達が持っているイメージです。

そうなるといずれ、本当のパン好きはみんな他のお店に行ってしまい、
自分のところのお客さんは、パンの味がろくにわからない人や、「パンなら何でもいい」という、違いのわからない人ばっかりになってしまうかも知れません。

そうして、店の職人達のレベルも落ちていってしまうかもしれません。

初めは小さな変化ですが、こうして店の存亡の危機につながっていく問題なのです。

東大が今になって広報に力を入れ始めたってのは、つまり、こういうことなんじゃないのかな。

パンを食べながら、そんなことを考えたマイスターでした。