最近コピーをとるために席を立つと、5割の確率で立ちくらみを起こすマイスターです。
大丈夫か、俺。
日経ビジネスに、「敗軍の将、兵を語る」というコーナーがあります。
いかにもおっさんむけビジネス誌っぽいタイトルですね…。
破綻した!とか、
つぶれた!とか、
売り上げが急激に落ち込んだ!とか、
そういう企業のトップが毎回登場して、自らの「敗因」について語るというコーナーですね。
人気のコーナーのようです。
さて、日経ビジネス7月4日号では、そのコーナーに
話題の「萩国際大学」の理事長、安部一成氏が登場しました。
大学関係者向けの雑誌じゃ、
「本学はこういう理由でつぶれちゃいました。私の責任は○○です」
なんて記事にはなかなかお目にかかれませんから、貴重です。
安部氏は、山口大学経済学部長、東亜大学学長などを経て、
萩国際大学の理事長に就任しました。
萩国際大の前理事長、刀禰勇氏が急に辞められて、ピンチヒッターを頼まれた、とのことです。
記事の中で安部氏は、「当初計画が甘かったのがすべての原因だ」と振り返っています。
1997年、萩国際大は設立されています。
設立にあたっては、山口県と萩市がそれぞれ20億円ずつ出資し、萩市の市長も大学の理事として名を連ねています。
そもそも萩国際大の設立を企画したのは、「萩女子短期大学」を経営していた権藤義幸氏(萩国際大元理事長)です。
この萩女子短大は一時は人気でしたが、少子化でかげりが見え始めます。そこで、この権藤氏は、四年制大学を作ろうと思い立つわけです。
最初は他の市町村に話を持ちかけますが、持ちかけた先の市長選挙で、大学誘致反対派が勝ってしまったため、萩市に話を回したのです。
この記事を読む限りでは、大学に経営戦略も何もなかったように思えます。
どの場所でも、大学を設立できればつぶれないという楽観的な見通しがあったのでしょう。
さて萩市の市長は当初、この計画に疑問を持っていました。
しかし、
「大学を通じて地域を活性化しよう」
という市民や商工会議所の声に押される形で、設立は決定されます。
さらに安部氏は、
「山口県って政治が強いところでして、昔から何かやるときには政治家を動かす(中略)…恐らく文部省にもどんどん政治的な圧力をかけたのではないですか」
と、語っています。
事実、安部氏も山口大経済学部長の頃には、学科新設のために政治家にずいぶんお願いした、と語っています。
萩国際大のときにも、政治家が動いていたのでしょうか。
さらに当時の文部省は、「国際」と「情報」がついていればどんなに甘い計画でも、設立認可を出しました。
文部省の思惑、
政治家の動き、
地域活性化を求める市民の声、
安易に大学設立を計画した権藤元理事長、
そんなものに基づいて生まれたのが、萩国際大学だったようです。
なんて不幸な生い立ちでしょう。
初めから教育や研究の成果ではなく、
地域の活性化や、
政、官のメンツ、
そしてお金儲けの手段として期待されていた大学だったわけです。
まっとうな経営者がこんな計画を見たら、うまくいくはずがない、と即断するのではないでしょうか。
大学は資金運用の規模、経営に求められる安定性、関わる人間の多さなどからいっても、上場企業の経営者のような能力を持つ方に経営されてしかるべきだと思います。
設立においても、正しい審査なり客観的な評価なりを経て、開学されなければならないはずです。
本来なら文部科学省がその役割を担うはずですが、この萩国際大のケースからも、文科省がチェック機能を果たせていないことがよくわかります。
設立後の自転車操業っぷりは、他の新聞記事やブログでも紹介されていますので、ここではあまり触れません。
2003年11月、初代理事長の権藤氏は辞任します。
萩商工会議所会頭だった刀禰氏が跡を継ぎますが、この方も、2004年8月には辞めます。
「お2人とも、要するに、投げ出したんですよ。再生のめども立たないのに、自分が責任者として借りた借金が目に見えて増えていったんですから」
と、安部氏は語ります。
「理事長に就任する時に、野村(萩)市長から『お金のことでは一切迷惑をかけない』と言われました」
とも。
なんだかもう、何がなにやら、です。
誰も彼もが無責任。
大学は、前近代的な経営をしている、と普段から思うマイスターですが、
萩国際大は、もう近代化以前の問題で、経営責任者不在です。
(もっとも、実際の決定権は教授会が握っていて、理事会は形骸化、なんて大学は日本全国どこにでもあるでしょうから、萩国際大だけが特別ひどいわけでもないとマイスターは考えます)
明確な教育、経営ビジョンと、
タフで優秀な責任者(経営者)。
これらを、大学に求めてはならないのでしょうか?
昨日の記事に続き、大学組織(政治、行政含む)の限界を見た気がします。
大学業界は、志ある優秀な理事長を随時募集中ですよ。
マイスターさん:
「日経ビジネス」の同記事を読みました。ありがとうございます。
非常に淡々としていて、拍子抜けしてしまいました(苦笑)。
インターネットで見つけたのですが、相模女子大が人材を募っています。
事務系職員の最高職位である参与を一般公募するという試みも、これから始まるかもしれませんね!
職名:大学参与
職務内容:経営方針に従い財務・総務・労務・法務等の業務執行にあたる
応募資格:大卒以上。 54 ~ 62 歳。企業・自冶体・大学院等で上記業務を経験 し、企画力・マネジメント能力のある方。
企業経営には体力がいると思うので、年齢制限がなければもっと注目を集めると思うのですが。。。
マイスターです。お返事が遅れて大変失礼いたしました。
いつもコメント、ありがとうございます。
あの記事、読まれましたか!
そうなんです、なんか、淡々と「敗因」を語っているんですよ…(^_^;)
相模女子大の情報、ありがとうございます!
「企画力・マネジメント能力のある方」というのが、いいですね。
確かに年齢制限がなければ、さらに画期的な人材が集まりそうです。
「楽天」の副社長だった本城慎之助さんは、現在、公募の小学校長をされていますが、就任時は32歳だったみたいです。
30代の大学幹部がいたって、いいですよね。