財布の中にいつもキャベジン、
マイスターです。
さて、今日は、お便りをいただいていますので、それについて書きたいと思います。
いつもと趣向が違いますが、学ぶことの多い事例だと思いますので、ご紹介させてください。
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先日、某大学にておきたこと。
教務課のカウンターのところに、ひとりの学生がやってきました。
日本人ではなく、アジア系の学生で、26~7歳くらいだと思われた、そうです。
「現在、専門学校を卒業見込みの学生です。
卒業したら、○○について学びたいので、
ここの大学の○○学科に入りたいのですが、
どのようにしたら入れますか?」
話を受けた教務課員は、入試について詳しく説明するために、入学課の中堅職員に声をかけました。
ところがこの入学課員が問題でした。
「えー、○○学科の入試は○月○日になっておりまして、センター試験を利用しての入試もございます。どちらにしても数学と英語は必須です。この○○学科は人気がありますので、かなり高いレベルの学力が求められます」
以上、カウンターでの説明終了。
その学生は、困惑していました。
いくらなんでも、説明が事務的過ぎます。
おそらく東南アジア方面からやってきたであろうその学生が、そもそも、センター試験の制度やレベルを知っているわけもありません。
英語と数学、と言われても、どの程度のレベルの問題が求められるのかもわからないでしょう。
教務課員が、「センター試験の制度はご存知ですか?」とたずねると、案の定、その学生は日本の大学の入試制度についての知識を、何一つ持っていませんでした。
そこで教務課員は、センター試験の概要、問題のレベルは基礎的なものが多いが合格の為には点数を多くとる必要があること、一般的な試験との定員人数の違いなどを説明しました。
また自分の大学の入試問題サンプルを示して、一般入試での数学の出題範囲などを説明しました。
入学課員は、
「まぁ、どっちにしても、○○学科は人気があるからねぇ。こっちの△△学科の方が簡単ですよ?」
といいました。
学生は、また「えっ…」という顔をして、困惑しました。
自分は○○学科に興味があってきたのに、いきなりそんなこと言われても…という顔です。
そもそも、日本の入試制度について説明を受けたばかりで、頭の中がこんがらがっている状態です。自分の中で、何をどうすればいいのか、整理ができていないのに違いありません。
そこで教務課員が、
「どういったことを学びたいですか? 興味のある分野とかはありますか?」
と聞くと、学生は、いま専門学校で学んでいる内容を説明して、もっとその分野の勉強をしたいということを語りました。
教務課員は、何しろ教務課員ですから、カリキュラムや研究室の研究内容については知っています。
そこで、学生が興味を持ちそうな分野についての説明をしました。
やはりカリキュラムなどから考えても、学生が最初に希望していた、○○学科がよさそうです。
学生は、とても興味を持ったようでした。
知っている教員もいるようでした。
英語はまだ学力が足りないと思うけれど、がんばります、といって学生は資料を持って帰りました。
結局、教務課員がほとんどのコミュニケーションをしていました。
入学課員は、学生が帰った後、
「いまからじゃ間にあわないよ、あの学生」
と教務課員に笑いながらいいました。
教務課員は、手伝ってくれたお礼を言いつつ、
「でも、がんばって欲しいですね。
カリキュラムなどに関する質問が来たら、今みたいに、教務課員もお手伝いできると思いますから、いつでも呼んでください」
といいました。
入学課員は、
「はぁ」
と、ちょっと迷惑そうな顔をしながら、席に帰りました。
(以上、このやりとり、マイスターはどう思いますか?)
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以上、関東の私立大学職員さんからいただきました。
ネタをいただいて、感謝します!
マイスターがこの話を元に考えたことは、大きく分けて以下の2点でした。
<1:この入学課員は、アドミッションに関する責任をぜんぜん持たずに働いている>
まず、入学課員の対応が、あまりに役人的過ぎるように思います。
本来入学課というのは、企業で言えば、営業です。
この事例の学生は、自分のやりたい分野について強い興味を持っているようですし、わざわざカウンターを訪れたわけですから、かなり有力な潜在顧客です。
そんな若者を前にして、こんな事務説明だけで、仕事をした気になっているとしたら、大いに問題ではないでしょうか。
仮に、学力的に入学が難しくても、モチベーションがあるなら、翌年にまた受験してくれるかもしれません。
また、知り合いに、
「あの大学は対応もいいし、説明を聞く限りでは内容も充実しているようだ。いい大学だ」
と、宣伝してくれるかもしれません。
逆に、ネガティブな印象が伝わっていく可能性もあります。
そう考えると、無愛想にも手抜きにも思えるこの入学課員の対応は、致命的です。
勝手な推測ですが、普段から営業担当というより、事務処理係的な意識で仕事をされているのでしょう。
結果が、自分の責任になるとは思っていない態度で、プロとは言えません。
こういう対応がまかり通るようになると、組織としては、危険です。
余談ですが、アメリカの大学のアドミッション・オフィスは、入学に関する一切の決定権を握る部署です。同時に、一切の責任を負う部署でもあります。
なので、優秀な学生を逃すと、そのオフィスの責任問題になります。
一般的な日本の大学の入学課とは、権限と責任の大きさがまるで違います。
<2:セクション主義は危ない>
この事例では、偶然にも、教務課員が一緒にいたわけですが、
普段から、こうした質問をしてくる学生さんなら、
教務課員が入学に関する質問に対応してもいいんじゃないかと思います。
入学後のカリキュラムや研究室について、入学課の職員が勉強をしていることがもちろん大事です。
しかし、限界はあります。
たまたま、知らないことを聞かれることだってあるはずです。
そのときは、入学課のカウンターに、教務課の職員を呼んできて、説明してもらえばいいんです。
学生課の職員を呼ぶことだってあると思います。
また、学部・学科事務室の担当者や、場合によっては研究室にいる教員を呼んでもいいと思います。
極端な話、在学生に知り合いがいたら、その学生に説明してもらうなんてのもアリです。
しかし、全国の大学の入学課で、そこまでやっているところってあるでしょうか?
マイスターの大学では、たぶん、やってません。
今回の事例に出てくる某大学の入学課でも、これまた勝手な推測ですが、やってないんじゃないかと思います。
学生が最初に入学課のカウンターに行っていたら、カリキュラムの詳細や、研究室の研究内容などについては、この学生は知らずじまいだった可能性があります。
それって合理的でないよなぁ~、と、合理主義者のマイスターは思うのです。
特に入学は、最も重要な仕事ですから、他の課が普段から協力する体制を作っておいた方がいいと思います。
この事例では、教務課員に、適切な対応をとるコミュニケーション能力があったのでなんとか柔軟に対処することができていますが、なかなかこうはいきません。
普段から、在学生や教員も巻き込んだ「全学団結体制」を組んで、対応できる人間を増やしておくべきです。
一般企業の営業から転職して入ってきた職員、なんて最高ですよ、たぶん。
でないと、見えない機会損失が増えるばかりです。
今後も、みなさんのお便りを募集しています。
「これってどうなの?」
「こんなことについて書いて欲しい」
「海外の大学について調べて欲しい」
など、なんでも歓迎です!
留学生に対して、その態度はまずいでしょ。というのが私の意見です。その職員の方は、特に差別意識なく、対応したと思いますが、一人の日本人の大人がそんな対応しかできないのと思っちゃいました。私もマイスターに直接少しお話しましたが、留学生の対応には少し戸惑い(難しさ)を感じてます。(只今、勉強中ですが)そういう意味を込めて、もっと良い対応、(日本の大学の価値を問われているんだ)というくらいの気持ちで対応を望みます。
また、教学部門の課はどこも離れていて、学生をタライ回しにしてしまうことは問題です。
打開策として、私の上司が話していたのですが、教学部門の課を全部同じ部屋(一つのオフィス)にまとめ、専門分野で班を分けておき、複雑な学生からの質問に対応できるという仕組みです。またこの空間であれば、専門(自分)の課をやりながらも他課の仕事内容が見え、協力もスムースにいく、異動の時も一から他課の業務を勉強しなくて良いという点があります。
この案は、場所がない、スペースが狭くなる、という問題はありますが、業務を円滑にかつ職員の処理能力を上げていくには良い策だと思いました。校舎が離れている大学には、さらに効果的だと思います。
そうですよね、留学生の方は、また違ったニーズや背景を持っている方も多いですよね。
より豊かなホスピタリティが求められると思います。
「留学生のお悩みについては、入試から卒業まで、何でも面倒を見るよ!」みたいな窓口があってもいいかもしれませんね。
あと、各部門の配置についてですよね。
お便りをいただいた大学は、ちょっとわかりませんが、マイスターの大学は、偶然にも教学部門が全部、広いひとつの部屋に集結していて、そのおかげでカバーできていることがいっぱいある気がします。
最近は組織改革をして、ペニーさんの案のような「教学センター」にまとめるところもあるみたいですね。私も、その方がいいと思います。
また「学部事務室」を強化して、各学部ごとに入試から就職、卒業までの窓口をなるべく一本化していこうという例もあるようです。(中央大学総合政策学部など)
みなさん、やっぱり最初から最後まで、一人の学生のサポートをしたいのでしょうねー。
教育の原点ってそうだよね、やっぱりみんなそうしたいよね、と思います。
マイスター、コメントありがとうございます。他大学では一つにまとめている体制が当たり前なんですね。初めて知りました。うちは頑張らないと…
社会人として初めての夏休みを迎えますが、就活で一年以上禁止していたゲームを解禁し、一日中やる事を野望としてありますが、ブログでマイスターが紹介している本を借りたり、買ったりして読んでいきたいと思います。夏休みといえばやっぱり読書ですよね。読書感想文のために、ひぃひぃ言って、泣いて読んでた小学生時代が懐かしい(^^)
いやー、まだまだ上でご紹介したのは、「先進的な事例」っていうところじゃないかな、と思います。
大学全体としては、各部署が分散してしまっているところが多いですよ、きっと。