女王の教室

今月はじめに教員に送ったメールの返事が今日来たマイスターです。
「今、海外出張中です。帰ったら確認します。以上」
出張に出たのは先週末じゃなかったっけ、それまでの2週間はいったい、とディスプレイに突っ込んでおきました。

さて、油断するとどんどんカタい記事になるのがこのブログ。
そこで、今日は素材をひねってみました。

最近、学校を扱ったドラマやコミックが人気ですね。
教育現場を舞台にした物語というのは以前からありますが、最近のブームは、教育に関する世間の不信感を背景にしている気がしないでもありません。

■女王の教室 公式webサイト(日本テレビ)
http://www.ntv.co.jp/jyoou/

今日の素材は、これです。

マイスター、このドラマ、まだ先週一回見ただけです。
それまでのあらすじは、上記のサイトで観ました。便利な時代ですね。

タイトルの通り、まるで女王のように振舞う小学校教諭と、それに抵抗したくてもできない子ども達とを描いたドラマです。
(きっと最後の回まで見ていれば、脚本家の様々な意図が見えて来るんだと思いますが、これまでの回の話は、大まかに言ってこんな感じです)

マイスターがテレビで視聴した回は、学校の「創立祭」で、先生が考えた創作ダンスを子ども達にやらせる、という話でした。

で、この教師がとんでもない奴でして、どうとんでもないかは、上記の番組サイトの「ストーリー」のコンテンツをクリックして見ていただければわかります。(お昼休みとかに見てみてください)

良識派(?)の教師の方が見たら、卒倒するか、テレビをぶっ壊したくなるかのどっちかでしょう。

で、ドラマを見ていて、日本の教育の問題点をわかりやすく指摘しているなぁ、と思うところが多々、ありました。

テレビを観ていると、ドラマですので、腹が立ったり、子ども達を応援してみたり、どきどきしたりするわけですが、マイスターはこんなブログを書いている関係上、そういった問題点にびびーんと反応してしまいます。

きっと慢性的にネタ不足なので、ネタになりそうなことに反応するのですね…。

●教室で行われていることを、相互監視する仕組みがない

「女王の教室」というタイトルがすべてを物語っていますよね。
校長が教師の授業をチェックして回ったり、同僚同士で授業を評価しあったり、という空気が、日本の学校にはあまりありません

よく言えば相互の信頼がある、悪く言えば、お互いに指導力を批判されることを恐れて、なぁなぁになっているという状態です。

「学級王国」という言葉は、たまに耳にします。
教員の多くは卒業してすぐ「先生」と呼ばれる生活に突入するわけです。
他の職業に比べて、かなり特殊な環境であるといえるでしょう。
そんな中、子ども達とだけ向き合っていると、自分が王様になる「学級王国」を作りたくなる。
そんな話を、大学院時代に知り合った教員の皆様から伺いました。

(実際、「学級のまとまりがない」とか批判されるので、ある程度、王国作りもやむを得ないと見なされているようです)

そういった王国化に気づくことも、予防することも、気づきにくいのが日本の学校なのではないでしょうか。

●他の教師の「教育方針」を批判したり、指導したりする仕組みがない

ドラマでは、職員室の風景が出てきます。
他の同僚の教員が「なんだかあの先生の指導の仕方はおかしい」と気づくわけです。
で、気づいて、本人に「指導がおかしいのではないですか、やりすぎではないですか」と意見するわけです。

でも、「今の子ども達には、厳しさが必要です」とか、「学校は、社会のルールを教えるところだ」とか、もっともらしい反論をされると、それ以上、何も言えないのです。

教頭も弱腰で、「それじゃあ、何も問題ないですね」と、逃げてしまいます。
じゃあ授業を見せてみろ!とか、それは違う!とか、言いません。

普通に考えれば、授業の内容を批判できない風土ってのは、かなり危険な要素だと思います。

でもこのドラマを見てると、確かに職員室ってこんな感じっぽいよな、と思えてしまいます。

実際はどうなのか、現役教員の方に、ご意見いただきたいところです。

●わかりやすく、目に見える成果を、他の教員や保護者は評価する

子どもに指導を徹底した結果、先生が考えた創作ダンスは何の失敗もなく披露されます。

で、保護者はビデオを持って「うちの子うまくやってるわぁ」とか、大満足です。
教頭もそんな風景を見ながら、うんうん、と満足そうです。

実際には、子ども達はみんなこんなダンスやりたくないわけで、当日の集団サボタージュまで計画します。
が、教師が「ちゃんとやったら罰を免除してあげる」とか「あなたが通うダンス教室の先生を呼んでおいたわ」とか、脅迫に近いことをして、出席させるわけです。

ドラマではそんなシーンがあるのですが、これ、マイスターの小・中学校時代もそうでした。

もちろん、さすがにサボタージュを考えたり、脅迫されたりはしてませんが、先生の趣味丸出しのダンスを、なんだかよくわからないままに練習させれられていた気がします。
で、失敗しないように練習させられた結果、発表会では好評だったりしました。

小学生では、好きなことをやらせると楽をしようとする、とか、
この年齢では、何をやらせるかは教員から指導した方がいいんだ、とか、
教育的見地からは色々あると思います。

けど、どうなんでしょう。
集団行動を身に付けさせるという視点で見れば、確かに教育は成功しているけど、
このやり方でいくと、ダンスは嫌いになるだろうなぁ、と思います。
芸術教育とか、感性の教育という意味では、大失敗しているようにも思えます。

こうした現象については、劇作家で演出家の鴻上尚史氏も、著作のいずれかで指摘していました。
実際、小・中学校の音楽の授業や、ダンスの授業をキッカケに、音楽やダンスが嫌いになる子どもは多いようです

先生が決めたとおりのダンスや演劇をやると、子ども達の感想は、「うまくできた」とか、「ちょっと失敗した」とかです。
自分達に考えさせたダンスや演劇だと、「楽しかった」という感想が出ます。

で、保護者や同僚に受けがいいのは、先生が決めたダンスなのです。
子ども達に考えさせると、しっちゃかめっちゃかになったりもしますから、あまり大人の評価はよくありません。

それってどうなのだろう。

でも、自分もこどものときそうだったなぁ、と、ドラマを見ていて思いました。

Yahoo!テレビによれば、「女王の教室」の視聴率は16.6%。

結構、興味を持って見られている範囲かな、と思います。

このドラマが好調なのには、

「こういう先生、いたよ!」

とか、

「こういうのって、ありそうだわぁ」

とか、思っている人が多いってことも理由の一つとしてあるんじゃないでしょうか?

マイスターは、さすがにここまでひどい先生にはあたりませんでしたが、
一歩間違えればこうなっていたかもしれない先生には、
何度か子どものときに会っています。

記事にしてしまった以上、今後も見続けなければならないのでしょうか、このドラマ。