マイスターです。
今日はワード解説です。
今日のワードは、「准教授」「助教」です。
[准教授、助教]
・教授は、専攻分野について、教育上又は実務上の特に優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授する。
・准教授は、専攻分野について、教育上又は実務上の優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授する。
・助教は、専攻分野について、教育上又は実務上の知識及び能力を有する者であつて、学生を教授する。
・助手は、その所属する組織における教育の円滑な実施に必要な業務に従事する。
(「第162回国会における文部科学省提出法律案:学校教育法の一部を改正する法律(第58条の記述)より抜粋」http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/162/05022801/003.htm)
<参考記事>
■「『准教授』新設へ 中教審『助教授は実態に合わず』」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/nyushi/TKY200411220337.html
■「大学に新ポスト案、助手改め『助教』 文科省が法改正へ」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/nyushi/TKY200501190422.html
昨年末には報道されていましたから、もうご存知の方も多いと思います。
これまで、大学の専任教員は
教授
|
助教授
|
(講師)
|
助手
という職階を定められていました。
で、論文を書いたり読んだりする人は、うすうす気づいていたことなのですが、
海外だと、教授(=Professor)の他に、
Associate Professor
って名乗っている人と、
Assistant Professor
って名乗っている人が、それぞれ、いるのですね。
[assosiate]ってのは、準…とか副…、あるいは「仲間の」とか「連合した」とかって意味です。
ここからもわかるように、アソシエート・プロフェッサーというのは、別に教授のお手伝いをしたり、教授から指導を受けたりする人ではないのです。
独立した研究者だけど、教授ほど、実績はまだ出してないってだけのことですね。
ところが日本だと、「助教授」っていう名前しかありません。
しょうがないので現状、日本の助教授さんたちは英語の論文を書くとき、「Assistant Professor」っていう肩書きを記入しているわけです。
でも実際には、日本でも、独立した研究室を持っている助教授って、いますよね。
教授に負けず劣らずの研究成果を出している人とかも、いますね。
だからそういう人は、「准教授」っていう名前にした方が、実態に合うし、国際的にもわかりやすくて、いいんじゃないか?
それが、改正の主旨です。
今現在の、「学校教育法」の記述では、各職階はこのように規定されています。
第58条6 教授は、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
第58条7 助教授は、教授の職務を助ける。
第58条8 助手は、教授及び助教授の職務を助ける。
第58条9 講師は、教授又は助教授に準ずる職務に従事する。
この規定に文面通り従っていると、助教授は独立した研究者として活動できないことになりますから、日本の研究競争力向上にとってはマイナスです。
この規定の通り、本当に「教授を助ける」位置付けに置かれている助教授さんたちも少なからずいると思います。
昔からの慣習もあるでしょう。
それを変えようということです。
「助教」を新設した理由も、これと似ています。
現在の法律だと、「助手は、教授及び助教授の職務を助ける。」と規定されています。
教授をサポートしつつ、
教授をサポートする助教授を、
さらにサポートしなければなりません。
これじゃあ、若いうちに研究者としての実績を積むなんて、夢のまた夢です。
ノーベル賞受賞者は、若いうちの独創的な研究成果で受賞を決めていたりしますが、日本のこうした研究者人事システムの上では、成果をあげることは困難でしょう。
現状では、助手の中に主に教育研究に携わっている人と、研究の補助的な業務をしている人が混在している。このため、研究補助者については今のまま助手とし、将来の教授候補として教育研究を行う人材を「助教」に登用することにした。(前述Asahi.comの記事より抜粋)
このAsahi.comの記事にもあるように、実際は、アシスタント業務をする人と、研究者として活動する人とを、分けて考えた方がいいんじゃないか。
言葉は悪いですが、そうでないと、若い研究者が教授のパシリとして便利に使われてしまうという悪慣習がなかなかなくなりません。
というわけで准教授と助教は、独立して自ら研究に従事する研究者です。
冒頭に挙げた法案を見てもお分かりの通り、
「専攻分野について、教育上又は実務上の知識及び能力を有する者であつて、学生を教授する。」
という記述は、教授、准教授、助教、みな同じです。
違うのは「優れた」「特に優れた」という部分だけで、業務は同じですよね。
「首都大学東京」は、准教授ポストの設置を既に始めています、
http://www.tmu.ac.jp/faculty/urban_liberal/10.html
↑のページ下、教員リストを見ると、「准教授」「助教授」が混在しているのがわかると思います。
今後、教授と准教授だけの、フラットな研究組織にしていくとのことです。
■「レポート3 首都大学東京:経営的視点の強化で教員人事制度も見直し」(ベセッセ社「Between」)
http://benesse.jp/berd/center/open/dai/between/2004/10/01toku_20.html
さぁ、日本の研究組織も変わりますかね~!
今日のワードは、准教授、助教(ともに、独立した研究者!)でした。
准教授の新設は、理想的には、マイスターさんのおっしゃる通りです。ただし、国立大学や有名私立大学の一部などでは自校出身者(卒業者や修了者)を教員として(主に助手で)採用する傾向がまだ残っています。
また、教育、研究実績を客観的に評価して助手採用している場合よりも、教え子の就職先をあてがうという意識の強い教員(主に教授)も少なからず存在します。
となれば、制度上フラットにしてみても実際には現在の徒弟制を引き継ぐ可能性が多いにあります。
実際に助手や助教授に先生に、何かのついでの時に話をきいても、制度導入まで1年をきった現時点でも関心は低く、あまり具体的な内容を知らない人もいます。
助手については、当方の勤務する大学ではほとんどの学部では、全員、助手→助教 と移行します。
まだ移行方法を決めていない学部もありますから、確定ではないですが、おそらく、全てが助手を助教に身分異動する可能性大です。
要するに、助手それぞれに対して助教に値する能力、実績を持っているのか審査するのは波風を立てるので嫌だから、という大人の対応なのでしょう。
また、労組が身分の不利益変更だと主張したのも影響したのかもしれません。
任期制の適用も、助手と助教を区分も、今後採用する人から、それが現実です。
こんな状況では、研究者が代替わりする20年か30年かしないと変わりません。掛け声ばかりで目も当てられない状況です。
皆様の大学はいかがでしょうか?
今回の改正法の以下の文言に引っ掛かりました。
教授:教育上又は実務上の『特に』優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授する。
準教授:教育上又は実務上の優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授する。
ならば、教授を教授、助教授を準教授に自動的に名称変更するのではなく、この際、しっかりと評価をしなおして、誰が教授に相応しく、誰が準教授かを再評価しなおすべきだ、と思います。
裏では技術職員が博士をとって”助手”になりたいと目を輝かせているようです。ぐちゃぐちゃ
大学の内部では当然だと見られていても、外から見るとおかしいなってことがあります。
国際競争力にマイナスかどうかは別にして、要は歴史的に、大学教員は、学校教育法を守らずに、勝手に実情を変えてしまっていたということでしょ?