マイスターです。
ここ数年、増えている、大学の移転や統廃合に関する話題。
今年に入ってからも何度かご紹介してまいりましたが、また新たな事例が加わってしまうようです。
【今日の大学関連ニュース】
■「三重中京大:短大ともに廃止 来年度から募集停止」(毎日jp)
三重中京大と同大短期大学部(ともに三重県松阪市)を運営する学校法人「梅村学園」(本部・名古屋市昭和区)は、両大学・短期大学部を廃止する方針を決めた。23日午前、梅村光久理事長補佐が松阪市役所に山中光茂市長を訪ね、来年度からの学生募集停止を報告した。25日に大学で学生や保護者らに学校の方針を説明する。
関係者によると、大学(現代法経学部・定員200人)は4年前から定員割れに陥った。今年度の入学者は155人にとどまり、07年度は2億7600万円の赤字決算。短期大学部(食物栄養、こどもの2学科・定員計200人)も今年度入学者が148人で、07年度決算は4300万円の赤字だった。少子化傾向が続く中で、赤字体質の脱却は不可能と判断したとみられる。
三重中京大は県と松阪市が誘致し、82年に松阪大学として開設。梅村学園が運営する中京大(名古屋市)とともにアピールしようと05年、三重中京大学に校名を変更した。短期大学部は64年に松阪大短期大学部として開設。05年に現在名に変更している。
(上記記事より)
梅村学園は、2大学・1短期大学部のほか、2高等学校・1中学校・1幼稚園を傘下に持つ大きなグループ。
2大学というのは、スポーツでもよく知られる「中京大学」と、今回、募集停止が報じられた「三重中京大学」のことです。
■「三重中京大学|三重中京大学短期大学部」
記事にあるとおり、三重中京大学とその短期大学部は、4年前から定員割れ。
かなりの赤字を出していたようです。
もともと「松坂大学」だったのですが、2005年、知名度のある中京大学のブランドを借りる形で校名変更。しかし残念ながら、十分な学生数の増加は見込めなかったようです。
今後も経営の回復は不可能と判断し、今回の決断に踏み切ったということでしょう。
松阪市自治会連合会の西村勇喜会長は「市が鳴り物入りで誘致した大学で、教育文化ゾーンの一角をなしてきただけに、とても残念だ。校名を変えるなど学園はいろいろな手を打ったが、少子化の波を乗り切ることができないということだろう。不況下の中でまた大きな暗いニュースだ」と残念がった。
(略)大学近くで38年前から店を構えている中華料理店「幸来軒」の村田幸善店長(61)は「大学ができてから、この地域は活性化し、学生であふれていた」と大学があることの効果を実感していたという。だが最近は、学生が減り、学生を対象にしていた飲食店の一部は閉店に追い込まれているという。「今後、この地区がどう変化するか心配だ」と険しい顔をした。
(「三重中京大・短大:廃止方針で、松阪市民「寂しくなる」 /三重」(毎日jp)記事より)
募集停止を不安に思っている在学生や地域の住民の方々のご意見が、上記の記事にありますので、よろしければリンク元もご覧下さい。
大学ができてから、確かに地元は活性化されていたようです。
そのために松阪市も、敷地を譲渡し大学を誘致したわけで、市も今回の募集停止を深刻に受け止めています。
松阪市役所にはこの日午前、三重中京大と同大短期大学部を担当する学校法人「梅村学園」の梅村光久理事長補佐が訪れ、山中光茂市長に2010年度からの入学者の募集停止の方針を説明した。
(略)市は大学誘致の際に敷地を譲渡した経緯があり、山中市長は「地域への貢献度が高かっただけに残念」と厳しい表情。今後、跡地の利用方法などを議論していく必要性を指摘し、「市民への影響を最小限に抑える方法を検討したい」と強調した。
(「三重中京大の学生ら「悲しい」 廃止に地域も動揺」(中日新聞)記事より)
自治体が、街の活性化のために多額の予算を投入して大学を誘致することはよくあります。
ただ昨今では、そうした大学が募集停止を発表するケースも多く、地元では大きなコストをかけて大学を誘致した行政の責任を問う市民の声もあがっています。
松阪市でも今後、そうした動きが出てこないとは限りません。
(過去の関連記事)
■東海大学開発工学部が募集停止
■皇學館大学社会福祉学部が募集停止・キャンパスも撤退
■ニュースクリップ[-2/22] 「皇学館大が撤退和解金…市債残金と同額6億5976万円」ほか
地方の政治家や行政にとって大学の誘致は、いまや自分達の責任を市民から問われかねない、リスクのある行動になりつつあります。
こうした事例が積み重なっていけば、地方自治体は、大学の誘致に消極的になるでしょう。
大学側にとっては、新キャンパス等の展開がしにくくなるということです。
昔から、街の活性化のために大学の新設や誘致を公約に掲げる市長や議員の候補者はいましたが、今後は減ってくるかもしれません。
選挙参謀だったら、「先生、そのネタは危険です」とアドバイスするかもしれません。
大学も行政も、経営に対してより慎重になるという意味では、悪いことばかりとは言えませんが……。
さて、そんな状況下、また大学・大学院の設置認可が諮問されています。
■「大学・大学院の新設、18年ぶり1ケタに…8校の認可を諮問」(読売オンライン)
塩谷文部科学相は16日、来春の開校を目指す大学7校、大学院大学1校の設置認可を大学設置・学校法人審議会に諮問した。
少子化で経営環境が厳しくなる中、大学・大学院の新設は18年ぶりに1ケタにとどまった。
戸板女子短大(東京都)が来春の学生募集をやめて戸板女子大になるなど、計5校が短大を改組して大学を新設する。
(上記記事より)
さすがにと言うか何と言うか、18年ぶりの「1ケタ」だそうです。
逆に言うと、昨年までは厳しい市場環境にもかかわらず、2ケタ新設されていたわけです。
■「平成21年3月末申請の大学等の設置認可の諮問について」(文部科学省)
この7校のうち、5校は短大から四年制大学への改組。
のこりの2校は、
・大阪物療大学 保健医療学部 診療放射線技術学科
・日本保健医療大学 保健医療学部 看護学科
……ということで、ともに医療系。
この少子化時代においても、「医療系だけは例外」という市場予測があるのでしょう。
確かに、現時点では医療系は好調です。
ただ1982年に松阪大学が開学したときにも、2009年の段階で募集停止を発表することになるとは、行政も含めて誰も予測していなかったと思います。
医療系の大学は、設備投資の額も大きそうですし、周囲への影響も小さくないでしょう。
経営が順調にいくことを願うばかりです。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
医療系だと専門学校でもやっている訳で、大卒のステータスで引き付けている側面があるのではないでしょうか?