マイスターです。
大学では、色々な学問が学べます。
文学や工学、法学といったジャンル別の学問の他、特定の国や地域を総合的に研究対象とする分け方(例えばアフリカ学や日本学など)なんてのもありますね。
そんな中、ちょっと珍しい学問領域を研究している大学があるようですので、今日はそちらをご紹介します。
【今日の大学関連ニュース】
■「充実 北大の『南極学』」(読売オンライン)
未来の優れた極地研究者を養成しようと、北海道大が全国で初めて「南極学」コースを開設し、今年度で2年目を迎えた。海外の大学と連携して、国際的に活躍できる人材の育成に力を入れている。
3月上旬、サロマ湖で行われた南極学コースの「海氷実習」。参加者は10日間、オホーツク海から流れ込んだ海水が凍る湖面の上で、氷柱を掘って内部を分析したり、氷柱を薄く切る技術を学んだりした。
「南極や北極まで出向くのは大変。でも汽水湖のサロマ湖なら、『海氷に近い氷』で安全に実習できる」。指導にあたる青木茂・北大准教授(41)はこう強調する。実習には豪タスマニア大の学生2人も参加した。
今月16日からは、別の学生と教員計4人が、米アラスカ大の協力で、北極海で海氷実習を行っている。
地球温暖化の防止が世界共通の課題となり、南極や北極への関心も高まっている。極地での研究は、各国の協力が欠かせないため、2006年7月、米、英、豪など12か国の大学が国際南極大学(IAI)を設立した。日本からは、寒冷地の雪氷や生物を研究する低温科学研究所を持ち、100人近い南極越冬隊員を輩出している北大が参加した。
各大学は南極学のカリキュラムを設け、互いの学生が受講できる。北大は昨年4月、大学院にIAI認定の南極学コースを開設。通常の修士課程から独立した少人数の特別プログラムで、昨年度は3人が南極学の修了証書を受けた。今年も3、4人が修了を目指している。
(略)青木准教授は「南極と北極は地球環境の異変が最初に表れる。こうした変化を社会に正しく伝えていく若手研究者を育てたい」と話している。
(上記記事より)
そんなわけで、北海道大学の南極学カリキュラムです。
世界12カ国の大学・研究所で構成する国際南極大学に認定されたコースです。
■「International Antarctic Institute(国際南極大学・日本語サイト)」
国際南極大学のwebサイトによると、日本からは北海道大学の他、国立極地研究所(NIPR)極域科学専攻、そして東京海洋大学および東京海洋大学海洋科学部が参加しています。
■「次世代のリーダー養成 :南極学カリキュラム」(北海道大学)
アムンゼン隊、スコット隊が、南極点を制覇して100年。当時、人類未開の地への行程は、スコット隊がその帰路悲劇にみまわれたように、命をかけた大冒険だったにちがいありません。しかし、今では南極大陸は冒険の地から、サイエンスのフィールドへと、姿を変えています。
また近年、異常気象や地球温暖化など地球規模での環境問題がとりざたされ、その影響が最も早く観測される場所として、極地研究の重要性はますます大きなものになっています。そのような中、2007年春北海道大学に、『国際南極大学』の認定プログラムとして『南極学カリキュラム』が開講しました。
(略)これまで、北海道大学は雪氷学や寒冷地研究において、国内外の大学をリードしてきました。南極学カリキュラムはそんなバックグラウンドを生かした、魅力的なカリキュラム構成となっています。現時点では、主に北海道大学の環境科学院の大学院生を対象に開講されますが、今後は学内の他の研究科の学生にも受講できるように間口を広げていきたいと考えているそうです。さらに、理系のみならず文系学部の院生にも興味のもてる内容にし、受講する機会を作ることも計画されています。
(略)南極学カリキュラムで所定の単位を取得すれば、それぞれの学生が元々所属する大学院で専攻する修士号に加え、南極学修了証書 (Diploma of Antarctic Science) を取得できます。また、さらに専門的に学べば、将来的には「国際南極大学」の『Master of Antarctic Science』を取得することも可能になるということです。
(上記記事より)
↓こちらのページに、そのカリキュラムが掲載されています。
■「環境科学院 南極学カリキュラム」(北海道大学)
他大学では学べなさそうな、専門的な科目名が並んでいます。
英語での講義もあるようですね。
本人次第で、同様に南極学コースを設けている海外の大学の研究者とも交流する機会も得られるでしょう。冒頭の記事にあるように、かなり充実した内容だと思います。
なお授業の中心は大学院生対象ですが、スイス・アルプスやサロマ湖での実習を含め、学部生向けの授業もいくつか開講されています。
「環境を学びたい」という受験生は結構いると思いますが、「どのような形でそれを学ぶか」というところまでは、あまり調べていない人もいるでしょう。
そこで、異常気象や地球温暖化といった地球規模での変化が最も早く観測される場所、つまり南極のような極地研究を学びませんか、というのが、北海道大学の提案なのです。
非常に特色があるアプローチです。
内容も国際レベルですし、これまでの北海道大学の極地研究の実績があってのプログラムでしょうから、他大学では、そう簡単に同じことはできないでしょう。
こういった特色あるプログラムやカリキュラムについては、このブログでも積極的にご紹介していきたいと思います。
これはすごい! というカリキュラムをご存じの方は、ぜひ教えてください。
ところで、北海道大学のページを見ていて、もうひとつ興味深かったことがあります。
ページの一番下に、
取材協力:科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)
の文字がありますね。
これは北海道大学が設ける、↓こちらの教育組織のことなんです。
■「北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)」(北海道大学)
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(通称コーステップ)は,科学技術コミュニケーターを育てるための教育組織です。科学技術コミュニケーターとは,科学技術の専門家と一般市民との間で,科学技術をめぐる社会的諸課題について双方向的なコミュニケーションを確立し,国民各層に科学技術の社会的重要さ,それを学ぶことの意義や楽しさを効果的に伝達することができる人材です。
(「CoSTEPの理念」(北海道大学)より)
このCoSTEPが、北海道大学公式サイト上の、「南極学コース」の説明ページの取材にも関わっているというわけです。
「南極学」というのは、専門的に語られてしまうと、私達のような一般市民には縁遠い学問のように思えてしまいますが、それをうまく橋渡ししているのが、このCoSTEPだというわけです。
研究大学としての北海道大学が、こういった教育プログラムを学内に備えて持っているという点は高く評価されると思いますが、それがこのような形で大学広報に関わり機能しているというところには感心させられます。
学内の教育プログラムがうまく連携し、良いサイクルを作っているのかなと思います。
他大学の方々にとっても、参考になる部分がありそうです。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。