ニュースクリップ[-6/7] 「大学院博士課程:定員減を 大学院重視を転換、教員養成も見直し--文科省」ほか

マイスターです。

2つほどイベントのご案内を。

■「美大ブログサミット開催!」(美大日記::ムサビの手羽)

日時:2009年6月14日(日) 11:00-12:30
会場:武蔵野美術大学鷹の台キャンパス 1号館104教室(第2講義室)

以前の記事でもご紹介させていただいた「ムサビコム」、「ムサビ日記」でおなじみ、武蔵野美術大学の手羽イチロウさん。
そんな手羽さんが春に「美大TV 」を新たに立ち上げられたことは、業界人なら既にご存じでしょう。
まだ見ていない、という教育関係者や美大志望者はすぐチェックするように。

上記の通り、美大TVにも関わっていらっしゃる各美大のブログ担当者及び広報担当者が集まって、大学ブログと美大の可能性を語るトークショーが開催されるそうです。大学の垣根、超えてますね。
今回の参加大学は京都造形芸術大、東北芸術工科大、多摩美術大、武蔵野美術大の4校だそうです。
来週ですので、ご興味のある方はぜひどうぞ。

■「学生・生徒が自発的に活躍する学校づくり ~高校が大学から学ぶこと、大学が高校から学ぶこと~」(日本女子大学)

2009(平成21)年7月4日(土) 16:30 ~ 18:30
日本女子大学 西生田キャンパス 西生田成瀬講堂 南ホール

サブタイトルが、とても気になりますね。
学校改革で全国的に知られる、京都市立堀川高校の荒瀬克己校長によるご講演だそうです。
NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』などでも取り上げられていましたので、教育関係者以外でもご存じの方は多いのではないでしょうか。
大学関係者、高校関係者、それぞれにとって参考になるお話しが聞けると思います。

さて、それでは今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

【定員見直し。】
■「大学院博士課程:定員減を 大学院重視を転換、教員養成も見直し--文科省」(毎日jp)

大学院博士課程の修了者の就職難が問題化していることなどを受け、文部科学省は5日、全国の国立大学に対して、博士課程の定員削減を要請する通知を出した。これまでの大学院重視の政策を大きく転換することになる。また、少子化の進展を踏まえて教員養成系学部の定員の削減なども要請しており、現場のリーダー養成を目指して08年度に始まった教職大学院制度にも影響を与えそうだ。
(略)文科省はこれまで、研究拠点を大学の学部から大学院に移す「大学院重点化政策」を進めてきた。しかし、就職難への不安などから地域や分野によっては定員割れが相次いだため、政策を大きく見直すことになった。
また、教員養成系学部については、少子化による需要減や採用数の動向などを踏まえた定員見直しを要請した。
教員養成をめぐっては教職大学院の制度が08年度に始まったばかりだが、今回の需要減を前提とした学部定員の見直しは、こうした新しい教員養成を担う大学院制度運営のあり方などを左右するとみられる。
さらに、新司法試験の合格率が低迷している法科大学院も見直しの対象とし他の学部などについても「必要に応じて見直すよう努めること」とした。
(上記記事より)

かつて文部科学省が打ち出した大学院重点化の方針により、大学院卒の人数が急増。
その結果、大学院を修了しても学んだことを活かせる職場がないという状況が発生していました。

そんな状況を打開するために政府はこれまでの方針を転換し、博士課程の定員削減をはかることにした様子。各所から、賛否両論でそうです。

定員を見直すのは大事だとマイスターも思います。
ただ一方で、「博士課程修了者=研究者」という限定されたキャリア観を、もうちょっと広く捉え直すための取り組みも、まだまだ不足しているんじゃないかという気がしないでもありません。

(過去の関連記事)
■新潟大学 ポストドクターをインターンシップで派遣する取り組み

教員養成系学部も、定員見直しを迫られているとのこと。ただ、始まったばかりの教職大学院にとってこれが逆風になるかどうかは……それぞれの大学院次第だと思います。

【使われるの?】
■「『この学生はWinnyを使っていません』――『検査証』発行ソフト、ネットエージェントが発売」(ITmedia News)

ネットエージェントは6月2日、P2Pファイル交換ソフトの使用履歴を検査し、使用していない場合には「検査証」を発行するソフト「P2Pファイル共有ソフト 検査証明ソフトウェア」を発売した。
就職活動中の学生が、就職希望先企業に検査証を提出し、「自分を採用しても、Winnyなどを通じた情報漏えいにはつながらない」とアピールするためのソフトで、大学など就職を控えた学生のいる教育機関に販売。教育機関が学生にソフトを貸し出し、学生は自宅のPCを検査、証明書を発行する――という流れだ。
(略)同社は、「Winnyなど依存性の強いP2Pファイル共有ソフトを使っている人材の採用を、情報漏えい防止上のリスクと考える企業も存在する」とし、同ソフトが企業のリスク回避と学生の就職支援につながると説明している。
(上記記事より)

ちょっと変わったサービス。
ただ、企業の側は、P2Pソフトの使用歴をそこまで考慮して採用活動を行うのかどうか。

学生が大学やあちこちの企業に提出する「検査証」が、同社の宣伝媒体と同じ意味を持つ……という点が狙いなんじゃないかという気がしますが、どうなのでしょうか。

【ノーマライゼーション。】
■「障害者が働く『学食』が開店 群馬県の福祉系大学」(Asahi.com)

身体などに障害のある人が従業員の半数以上を占める「学食」が、群馬県立県民健康科学大学(前橋市)に開店した。看護師や保健師の卵である学生たちとの交流が期待されている。
「ありがとうございました」
料理を盛りつけていたピンク色の制服姿の20代男性が、セルフ式のカウンターで昼食を注文した女子学生らに言葉をかけた。
男性には知的障害がある。まだ声は小さいが、食堂を運営する社会福祉法人「すてっぷ」(同市)の新井亘総務課長は「開店したばかり。これから声も大きくなりますよ」とほほ笑む。
学生食堂「マザーズキッチン」(約200席)は今年4月6日から営業している。年度末で、食堂業者の切り替え時期に当たっていたことから、大学が福祉法人に打診したのがきっかけ。健常者と障害者が一緒に生活するノーマライゼーションにもかなうと法人側も快諾した。学食名には、母親のような温かさで学生を包みたいという意味を込めた。
(略)車いすの人、知的障害、自閉症など、働いている人はさまざまだ。常勤従業員9人のうち、20~40代の男性4人、20代の女性1人が何らかの障害がある。料理の盛りつけや皿洗いなどで午前9時から午後4時まで働く。
(略)以前は別の作業所で清掃などの仕事をしていたものの、寝坊で、いつも遅刻していた20代の男性従業員が毎朝9時に出勤できるようになった。
(流)学生と従業員が話す機会はまだ少ないが、今後、一緒に献立を考えるなど、交流のあり方を検討中だ。看護学部3年の都築正也さん(22)は「毎日顔を合わせれば、自然に仲良くなる。遊びや恋愛などプライベートの話もできるようになるはずです」。
大学の志村重男事務局次長は「バリアフリー社会を目指すためにも貴重な経験だ。学生と従業員が毎日、笑顔であいさつを交わす食堂になってほしい」と話した。
(上記記事より)

ノーマライゼーションの発想を地でいく事例。
働いている方々も、この大学の学生さんも、日常生活を送る中でお互いに学び合うところが多そう。
関わる全員にメリットを生む、良い取り組みだと思います。

【キャンパスへの銃持ち込みをめぐる議論。】
■「乱射事件に米は何を学ぶ? 大学校舎に銃携行 19州で合法化模索」(東京新聞)

二〇〇七年四月に教室などで三十三人が死亡した米バージニア工科大銃乱射事件の記憶も色あせぬ中、米国で大学教室内への銃持ち込みの合法化を求める動きが広がっている。全米五十州のうち、同事件前から合法化されていた西部ユタ州に加え、反対派の集計では少なくとも十九州で推進派議員による法案作成などの動きがあるという。
米国では、昨年二月にも中西部の北イリノイ大で乱射事件が起き学生らが死亡した。だが中西部ミズーリ州や南部テキサス州では、銃携帯の免許所持者に大学建物内への銃持ち込みを認める法案が州議会に提出された。
ミズーリ州では、バージニア工科大の事件から丸二年の四月十六日に下院で可決。テキサス州でも五月十九日の上院一回目の投票で賛成票が上回った。結局、今回は両州ともに時間切れで廃案となったが、今後も各地で推進派の動きが続くとみられている。
(上記記事より)

ここ数年、銃による事件が続いているアメリカの大学で、上位のようにキャンパスへの銃持ち込み合法化を推進する動きが起きているとのこと。
持ち込み合法化に反対する声も多いようなのですが、一方で

ミズーリ州議会に法案を提出したマンズリンガー下院議員(53)=共和党、写真=は「大学に通う私の娘や学生たちの安全を守りたい。大学は今『銃のない場所』だからこそ犯罪者の標的になる」と力説。大学の教員らが免許を取り、銃を携帯すれば、むしろ犯罪抑止につながると主張する。
テキサス州で合法化支持の立場をとる青年政治組織幹部のトニーさん(22)は「大学は銃を持ち込めないといっても現実には何の検査もない。法を犯す覚悟なら容易に持ち込める。法を順守する人だけが(身を守る)銃を持たず、犠牲になっている」と強調する。
(上記記事より)

……という意見も根強いのだそうです。

(過去の関連記事)
■米ルイジアナ工科大で銃撃事件
■再びアメリカの大学で乱射事件

キャンパスにこっそり持ち込まれる銃を完全に取り締まることは不可能でしょう。
ただ、これまでに銃乱射事件を起こした人達は、報道を見る限り、自分が生き残らないという前提で行動を起こしていたようにも思えます。銃持ち込みの合法化が、こうした犯行者達にとって本当に抑止力になるのかなぁ? ……という気もします。

銃携帯の是非は、アメリカならではの歴史や社会背景もありますから、なんとも言えませんが……うーむ。

【同性愛やトランスジェンダー学の教授職を新設。】
■「『同性愛』学の教授職を新設へ、ハーバード大」(AFPBB News)

米名門のハーバード大学(Harvard University)が、同性愛やトランスジェンダー学の教授職を新設することになった。関係者が3日明らかにした。
同大のゲイ・レズビアン連盟によると、教授職の新設にかかる150万ドル(約1億4500万円)の費用は同連盟のメンバーならびに支援者が提供し、同性愛研究の分野で著名な学者を定期的に招聘(へい)したいとしている。
初代教授は2010年の秋学期に向けて任命され、文理学部で女性学委員会の協力のもと、ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー、セクシャリティについての授業を行う。
(上記記事より)

ES細胞研究助成を解禁したという理由で、オバマ大統領がカトリック系大学の教職員や学生から抗議を受けたりしているアメリカ。
一方で、上記の記事にあるような取り組みを行っている大学もあるというのが、すごいです。
教授職の新設にかかるお金を、同大のゲイ・レズビアン連盟およびその支援者が提供している、という点もポイントでしょうか。

でも、記事に書かれているトピックは、現代社会を考える上でいずれも重要。学問として研究する意義は大きいと思います。

(過去の関連記事)
■オバマ大統領が出席する予定の大学卒業式 いろいろと大騒ぎに

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。