中央大学理工学部の事件

マイスターです。

中央大学理工学部で起きた事件は、全国に衝撃を与えました。

マイスターは毎年、塾大連携プログラムを実施するために中央大学理工学部に通っており、個人的には非常に馴染みのある場所で、教職員の皆様にも非常にお世話になっています。
あのキャンパスでこのような事件が起きたことは、ショックです。

またご家族の皆様や、仲間を奪われた大学の皆様の悲しみはいかばかりかと思うと、やりきれません。
被害に遭われた教授に心より哀悼の意を表すとともに、一刻も早い犯人逮捕を願います。

犯人が誰なのか、なぜこのような事件が起きたのかということは、警察が調査中ですので、捜査結果を待つしかありません。

事件が起きた後、様々な観点からの報道が行われています。
学校というのは、本来、「社会で最も安全であってほしい場所」。
だからこそ、なおさら事件にショックを受けた方が多いのかもしれません。

■「本学教授殺害事件について」(中央大学)

1月14日、大学構内において本学教員が殺害されるという事件がありました。このような事件が起きたことは誠に痛恨の極みであります。今後このような不幸な事件が起きないように万全の対策を講じて学内の安全に全力を尽くすつもりであります。
今までも大学として警備体制をとって参りましたが、このような事故が起きないように今後最善の安全対策を確保いたします。
被害に遭われた髙窪 統教授に心より哀悼の意を表すとともに、一刻も早い犯人逮捕を願っております。
理工学部長 田口 東
(上記ページより)

このような事故が起きないように今後最善の安全対策を確保する、という大学のコメントが公表されました。
報道を見ても、安全対策について触れている記事は少なくありません。

実際、↓こういった学生の声も掲載されています。

東京都文京区の中央大学理工学部校舎で高窪統教授(45)が殺害された事件から一夜明けた15日朝、同大では予定通り授業と試験が実施された。しかし、キャンパス内への出入りの際、身分証の提示を求められるなど厳重な警備が敷かれ、事件のあった1号館では2階以上が立ち入り禁止となった。
(略)14日に高窪教授の講義を受ける予定だった大学2年の女性(19)は「こういう事件を2度と起こさないためにも、校門での学生証の確認は必要なのでは」と話した。「どうして高窪先生だったのだろうと思う。怖いし、早く捕まってほしい」と小さな声で続けた。
「身分証チェック、警備厳重に=事件から一夜明けた中央大」(時事ドットコム)記事より)

物理学科一年の松岡祐平さん(19)は「犯人が見つかっていないのですごく怖い。来週から試験もあるので不安がある。大学の構内には誰でも入ってこれるので、学生証や身分証の提示をさせて、入構を制限してほしい」と話した。
応用化学科四年の女性(22)も「防犯カメラの取り付けには反対だが、誰が入構しているのかはチェックできるようにしてほしい。安心して勉強ができない」と不安そうに話し、授業に向かった。
「廊下、内階段に血液 中大教授刺殺 コート男逃走経路か」(東京新聞)記事より)

日常を過ごしている場で、このような事件が起きたのですから、不安になるのは当然のことです。

しかしながら、大学が行える安全対策にも限界はあります。

今回の事件が起きたのは、研究棟でした。
研究棟に限定して言えば、研究機密などを保護するという観点から、建物の入り口にIDカードによるセキュリティをかける大学もあります。人目につきにくい研究棟のセキュリティを強化するだけでも、ある程度、防犯の効果はあるかもしれません。ひとつの現実的な対応方法ではあります。

ただ、本当に犯行を決意している人間なら、その他の場所でいくらでも犯行を行うでしょうから、完全な安全対策にはならないでしょう。
それに大学によっては、研究棟を、学生や企業の方、高校生などが自由に訪問できるよう、敢えてアクセスしやすく設計しているところもあります。

大学キャンパスは基本的に、不特定多数の方々が出入りする場所。正課の学生だけでなく、その他多くの方を招き入れるようなキャンパスを目指している大学も少なくありません。
学生と教職員だけが入れるようIDカードなどでセキュリティをかけることも、できなくはありませんが、そうした選択をする大学はそう多くはないでしょう。
事件直後の現在は、入校制限をかけたり、警備を厳重にするのも当然の措置だと思いますが、ずっとこの状態を維持するということは考えにくいように思います。

そもそも今回の事件は、大学だから起きたのではなく、社会のどこででも起きうる事件です。
「許しがたい犯行が起きた場所が、たまたま大学の構内だった」
……ということだとマイスターは思います。

そのような状況の中、地域と共生し、社会に開かれた立場をとりながら、かつ可能な限りの安全対策を実行するというのは、極めて難しいミッションです。

銃乱射事件が起きたアメリカでも、こうした問題は大きなトピックになっているようです。
日本でも、そういったことを考えなければならないのでしょうか。

以上、マイスターでした。

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(メモ)

参考になるかは分かりませんが、小学校の事例をひとつご紹介します。

2001年に起きた大阪教育大学教育学部附属池田小学校の事件の後、小中学校の安全対策は大きく変わったそうです。
小中学校の校舎設計は、それまで「地域に開かれた」オープンな設計案が流行していたのですが、安全確保という面から、従来のような閉じられたプランへの揺り戻しが起きたそうです。

そんな中、敢えて大胆にオープンな設計でつくられたのが、福岡市立博多小学校

この学校の安全対策のコンセプトは、「児童の安全は、人の壁で守る」です。
部屋の配置を工夫し、またガラス張りなどをうまく使っているため、外から誰が入ってくるかが、常に複数の場所から見えるのだそうです。「人の目」が常にあるようにしたわけです。
保護者や地域住民の方々の集まりなどを、敢えて積極的に学校内で開催することで、この「人の目」を増やしたりもしているのだとか。
クローズにするのとは、真逆の発想ですが、確かに子供達は守られます。また、「皆で子供達を守ろう」という意識も芽生えるでしょう。

小学校の場合は、見慣れない大人が入ってくればすぐに異常に気づきますから、前提は大学と同じではありません。
ただ、廊下や階段なども含め、同じフロアの様子が常に掴めるというのは、防犯という点では有効な考え方だと思います。

大学でも、最近つくられた新しい大学などでは、研究棟の中の壁や間仕切りをガラス張りにする例が少なくないようですが、これは防犯の点でも意味を持っているように思います。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。