マイスターです。
先日、東京大学の五月祭に行ってきました。
赤門前には、↓こんな掲示が。
webサイトでも、事前にマスク着用のお知らせが掲載されていましたので、一応持って行ったのですが、お客さんはほとんどマスクしていませんでした。
一方、出店などを運営している大学生の皆さんには、着用している方も多かったようです。
さて、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。
【法科大学院の志願者が減少?】
■「法科大学院 適性試験の志願者、6年連続の減少」(Asahi.com)
大学入試センターは29日、来月21日の法科大学院の適性試験(大学ごとの試験の前に実施される統一試験)に1万282人が出願したと発表した。適性試験が始まった03年は3万9350人だったが、6年連続の減少となった。
今回の前年比の減少幅は21.7%。多くの法科大学院で来春入学者の定員を削減する動きが進んでおり、センターはこれが志願者減につながったとみている。
(上記記事より)
法科大学院に入学するには、大学入試センター、もしくは日弁連法務研究財団が実施している適性試験を受験する必要があります。
その適性試験の志願者が減っているということはつまり、法科大学院の志願者が減少しているということ。イコール、「法曹志願者が減った」ということに他なりません。
日弁連法務研究財団の試験の方も、志願者は3年連続で減少しているそうです。
政府は、法科大学院の定員を引き下げるよう、各大学に働きかけています。
ここにきて、その「成果」が現れてきたということでしょう。
なおこの適性試験に関しては、司法試験の成績との間に相関関係が見られないと報じられています。
(過去の関連記事)
■法科大学院「適性試験」で、一律に入学者の足切りを実施するのは適切か?
法科大学院の志望者が減っていくのは、今は良いのかもしれませんが、かといってあまりに競争倍率が下がりすぎても困る。適正な水準を保つのが大変です。
それに、「法科大学院の志願者が減る」というとき、一番その減少幅が大きいのは、既に職を得ている他学部卒業生なのではないか、という気もします。
最初から法曹を目指していた法学部生は、そう簡単にはあきらめません。早いうちからダブルスクールなどで対策を重ねてきた人も多いでしょうし。
一方、他の学部を出て社会で働いている人にとっては、定員が減った法科大学院を目指すのはあまりにリスキー。じゃあやめようかな、と思い直した人も多かったことでしょう。
法科大学院の当初のミッションである「多様な法曹の輩出」という部分は、定員を絞れば絞るほど、難しくなっていくような気がしなくもありません。
そのうち法学未習者の募集定員を減らし、既習者の定員を増やすような大学院も出てきそう。ジレンマです。
【あいさつ運動も。】
■「『本気のあいさつ』始めます」(読売オンライン)
浦安市海楽の市立浦安中(生徒573人)生徒会は6月、地域と連携した「本気のあいさつ運動」をスタートさせる。まず、心のこもったあいさつとはどのようなものか、生徒会役員が同市の明海大学のゼミを受講して学び、その成果を校内に周知。その上で、自治会、PTA関係者らと共に朝の通学路などに立ち、登校する生徒たちへのあいさつを実践する。その場限りのもので終わってしまいがちなこの種の運動を、しっかり根付かせるのが狙いという。
(上記記事より)
一見すると、全国どこの学校でも行っていそうな運動ですが、
生徒会長の氏家和也君(15)(3年)ら生徒会役員は「あいさつは、明るい学校づくりの基本。何とか定着させよう」と、実効性のある「あいさつ運動」の計画を、3月から練り始めた。地域ぐるみでの展開を考え、スローガンを「目を見て、笑顔で、元気よく」と決めた。
そうした中、明海大学で「おもてなしの心」をテーマにした講義があることを知り、運動に生かすため「受講したい」と打診したところ、ホスピタリティ・ツーリズム学部の岩下哲典教授が、これを快諾。6月8日に受講できることになった。
登校時の生徒たちに向けたあいさつの実践は、同月23、24日の両日に計画されている。生徒会の呼びかけを受けた北栄4丁目、海楽中央の周辺2自治会と浦安中PTAの関係者も一緒に通学路に立つ予定で、運動盛り上げのための横断幕も設置する。
こうした運動の展開により、生徒同士の一体感と、周辺住民との良好な関係づくりを目指す。教職員向けの研修会も予定されており、岩下教授が出席してアドバイスする。
(上記記事より)
……と、大学教授が関わっている点がポイント。
ホスピタリティ・ツーリズム学部の講義を生徒会役員が受講し、学校での運動に活かすそうです。
教職員向けの研修会にも、教授が参加するとのこと。
教育は、その学校の関係者だけではなく、皆でつくるもの。
地域の学校の運営に、外部の方が加わるのは良いことです。
今回のケースのように、大学ならではの参画の仕方もあるでしょう。
【漢字能力検定の今後。】
■「学校の約3割、『漢検』見直す動き…入試や授業で利用」()
財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市)の一連の問題で、これまで漢字検定を入試や授業に取り入れてきた大学や高校、小中学校のうち、読売新聞が全国の87校を抽出して実施した調査の結果、約3割で利用を見直す動きがあることがわかった。「資格の信頼性が失われた」「保護者の反発が強い」などが主な理由だ。一方で、6割以上が、「漢字検定そのものは有益」として、継続する方針。前理事長の大久保昇容疑者(73)(背任容疑で逮捕)らが役員を辞任して新体制となった協会は、学校現場の〈漢検離れ〉を食い止めようと躍起だ。
全国の小中高校では団体で受検をしている学校も多く、協会のホームページによると、1000以上の大学・高校などが入試で評価の対象としている。
読売新聞社が、漢検を利用している全国の小中高校など87校について、4月末から5月中旬にかけてアンケートを実施したところ、26校(29・9%)が団体受検や単位認定などについて、今年度から見直すと回答した。
(上記記事より)
様々な疑惑により、社会から厳しい目を向けられている日本漢字能力検定協会。
そのあおりで、漢検の利用を見直している学校も増えているそうです。
ただ、「日本漢字能力検定協会」という組織の運営には不正や疑惑があったとしても、検定の内容そのものに問題があったわけではないのです。
感情的な反応をしても意味がありません。
大人の方々は「なんで漢検なんか受けさせるんだ!」……なんて、学校にクレームを言ったりしないよう、過剰反応せず、冷静に判断をお願いします。
【「エリートになるには」 国別のルート。】
■「政治家の元の職業は?米は弁護士、中国は技術者が多い―英誌」(レコードチャイナ)
2009年5月26日、中国青年報(電子版)によると、英経済誌「エコノミスト」がこのほど、各国の政治家の元の職業が何だったか、世界人名録に記載されている各国の政治家約5000人を調べたところ、それぞれの国ごとに特徴があることが分かった。
米国では弁護士出身の政治家が多く、オバマ大統領も弁護士出身で、ハーバード大学のロースクールを修了した経歴を持っている。ヒラリー・クリントン国務長官やエリック・ハンプトン・ホルダー司法長官、ジョセフ・バイデン副大統領などもやはり弁護士から政界入りした。
一方、中国ではエンジニア出身の政治家が多い。胡錦濤主席は水力関係のエンジニア、温家宝首相は地質エンジニアだった。江沢民・前国家主席も元は電力関係のエンジニアだ。
このほか、エジプトでは学者出身の政治家が多く、韓国では役人から、ブラジルでは医師から身を転じた人が目立つ。また、軍人出身の政治家が多い国も多数見あり、こうした傾向は、それぞれの国の生い立ちとも深く関係しているのだという。
(上記記事より)
これは面白い調査結果です。
ロースクール出身者が多いアメリカや、エンジニアが多い中国のイメージは、以前からしばしば報道されていましたが、エジプトでは学者出身、韓国では役人出身、ブラジルでは医師出身、なんて傾向は知りませんでした。
いわゆる知的エリートの職業層が国によって違うという面はあるかもしれません。
それに加え政治家の場合、「お金」と「人脈」を集めやすい職業という要素もあるでしょう。
その国が今、最も重視している部分を反映しているような気もします。
我が国では……どうなのでしょう?
日本では科学技術立国を標榜しているにもかかわらず、いわゆる「理系」出身者が政治・行政のトップに少ないという事実が、以前から指摘されています。
官僚出身者の方も多いと思いますが、いわゆる二世議員も目立ちますね。彼らの職業はどう定義すればいいのでしょうか。
政治家の候補を担ぎ出す政党の方々は、本人が何をしてきたかよりも、家柄や出身大学のブランド、それに選挙資金を自力で負担できるかどうかといった点を重視しているようにも思われますが。
【トイレ清掃に大卒者が殺到。】
■「【中国のアンケ】就職難もここまで?公共トイレ清掃に大卒者殺到」(サーチナ)
中国蘇州市が応募した“公衆トイレ所長”に大卒学生4名が採用されたとテレビ局、遼寧衛視の「第一時間」が伝えた。応募条件は小学校卒以上であり、中国インターネット上では「人材の無駄ではないか」との声が上がっている。
2003年から蘇州市は300の公共トイレを設置、無料開放を進めており、今回58ケ所の各公共トイレで管理人を募集した。応募者870名中、大卒者40名が参加し、4名が採用された。抽選方法は抽選であった。
職務内容は2年間のトイレ管理。政府から与えられる運用費は11万元から14万元(約16万~20万円)で水道代、施設修理費、清掃員の給料などを管理する。管理がよければ年末にボーナスももらえる。
このニュースを受け、中国大手サイト新浪網(SINA)では「40名の大卒者が“トイレ所長”に立候補したことをどう思うか?」とのタイトルで大規模なインターネットアンケートが実施されている。
2009年5月26日現地時間15:00、投票数は1万1429票。「理解できる。就職難の現在、どんな仕事内容であれ自立ができるなら価値がある」 53.9%(6156人)。「理解できない。小学校レベルの学歴しか求めていない仕事を大学生が行うのは人材の無駄遣いだ」37.4%(4276人)。「どちらとも言えない」8.7%(995人)。
(上記記事より)
日本もそうですが、中国や韓国でも、大卒者の就職問題が深刻になっています。
職を求める大卒が増えたため、従来なら大学を出てまでやる仕事ではないと思われていた職にも、応募者が殺到しているという状況です。
様々な意見が出ているようですが、「仕事がないのだから仕方がない」「無職ではいられない」というのが、応募した本人達の言い分だと思います。
「小学校卒の人用の求人にまで大学生が流れ込んでくると、学歴のない人はどうすればいいのだ?」と就職事情を心配する声も多かった。
(上記記事より)
……なんて声も。これは、日本も同じですね。
日本でも実際、市区町村の職員で、大卒であるにもかかわらずその事実を隠し、高卒までの人のための採用枠に応募して働いていた方々が問題になり、解雇された例が何度か報じられました。
ちなみに「トイレ掃除」と聞くと気の毒な気もしてきますが、月に約16万~20万円が支給され、管理がよければ年末にボーナスももらえるという給与水準は、日本で「フリーター」として働いている方々より高かったりするのでは。
日本の社会のあり方も含め、色々と考えさせられます。
以上、今週のニュースクリップでした。
東大の五月祭に行って感じたのは、お客さんの側に、「気合いを入れて着飾った女性が多い」ということ。東大生ではないと思います。
なるほどなぁ、という感じでした。
あと、東大志望者と思われる高校生達や、そのご家族と思われる方々も多いです。
遠方から、観光にやってこられたご年配の方々の姿もちらほら。
そんな方々にとっての人気スポットは、やはり赤門前。
当日は、その赤門前に、
……という猫が寝ており、皆さんに大人気でした。
写真撮影をする人が絶えなかったです(マイスターもその一人ですが)。
↑よく見ると、親猫(?)の首の上に、子猫(?)が乗っています。
ともにすやすやと寝ていて、不安定な場所にもかかわらず、落ちそうで落ちない。
寝ている場所が場所だけに、受験生の間で「落ちない猫」みたいな縁起物キャラクターになれそうです。
今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。