マイスターです。
“Yes,we can!”
一体、何度聞いたことでしょう。様々なところで引用されています。
↓日本の大学の卒業式でも、引用されていたことは、以前の記事でご紹介しました。
■それぞれの卒業式 2009(1)
そろそろフィーバーも落ち着いてきた、アメリカのバラク・オバマ大統領について先週、こんな報道がありました。
【今日の大学関連ニュース】
■「アリゾナ州立大、オバマ大統領に名誉学位を授与しない方針 卒業式でスピーチ」(AFPBB News)
アリゾナ州立大学(Arizona State University、ASU)は来月の卒業式でスピーチをする予定のバラク・オバマ(Barack Obama )米大統領に名誉学位を授与しない方針であることが10日報じられ、話題になっている。
米国では、大学の卒業式でスピーチをする来賓に名誉学位を授与するのが通例。オバマ大統領はアフリカ系として初めて米大統領に就任し、2冊のベストセラーも書いているが、アリゾナ州立大は名誉学位に値する業績とはいえないという立場をとっている。
報道によると、同大の広報担当者は「われわれは1つのことに長年取り組んだ場合に業績と認めています。オバマ大統領は就任したばかりですので、業績とは認められません」と述べたという。
(上記記事より)
「米国では、大学の卒業式でスピーチをする来賓に名誉学位を授与するのが通例」
という一行が、マイスターには既に新鮮です。
そんな習慣があるのですね。
記事によると実際、アリゾナ州立大学は過去に、
・同大への大口寄付者
・映画監督
・詩人
・スーパーマーケット経営で成功した実業家
・弾劾されたナバホネーション(Navajo Nation、アリゾナ州など3州にまたがる先住民居住地)のトップ
……といった方々に名誉学位を授与しているそうです。
こうしたスピーチにお声がかかるのは普通、既に社会で十分成功している方々でしょうから、「名誉学位」の名前通り、ちょっとした儀礼的な贈り物、くらいに受け取っているのかもしれませんね。
でも、「慣例として行われていることが、行われない」ケースが生じると、違和感を覚える方も出てくるのでしょう。
大人気のオバマ大統領に失礼な、といって同大の方針に批判的な方もいらっしゃるようです。
地元紙イーストバレートリビューン(East Valley Tribune)は、アリゾナ州立大でスピーチする大統領がいなくなってしまうとして、大学に再考を求める社説を掲載した。オバマ大統領は5月17日にノートルダム大学(Notre Dame)の卒業式でスピーチをする予定だが、こちらは名誉学位を授与する予定だという。
(「アリゾナ州立大、オバマ大統領に名誉学位を授与しない方針 卒業式でスピーチ」(AFPBB News)記事より)
大統領が、名誉学位くらいで一喜一憂するとも思えませんが、慣例的に行われている名誉学位授与を敢えてしない、ということで、大統領が「コケにされた」ような見え方になる可能性はあります。
政治家にとってイメージ戦略は重要ですから、行くことでイメージを損ってしまうリスクがある大学は、確かに今後、政治家は避けるかもしれません。
ただ、今回の決定は、大学の考えというよりも、現学長のマイケル・クロウ氏の方針によるところが大きいようです。
同大の規定では、「その職業を通じて教育と社会に多大な貢献をした」人物に学位を授与すると定めている。もっともアリゾナ州出身の故バリー・ゴールドウォーター議員は、上院議員を1期務めた時点で名誉学位を授与されている。
(「オバマ大統領を祝辞に招くも名誉学位は授与せず 米大学 」(CNN)記事より)
この通り、過去には地元の政治家が、わずかな任期で学位を受けている模様。
そして、マイケル・クロウ学長のコメントが↓こちら。
MSNBCのコメンテーターが「あの人たちは芝刈りで学位を取ったんじゃないのか?」と述べるなど、同大の方針は笑いの種になっているが、マイケル・クロウ(Michael Crow )学長は「私は学長就任時、わが大学に寄付をした人と現役の政治家には名誉学位を授与しないと宣言した」と述べ、決定を覆すことはないと述べた。
(「アリゾナ州立大、オバマ大統領に名誉学位を授与しない方針 卒業式でスピーチ」(AFPBB News)記事より。強調部分はマイスターによる)
ポリシーをお持ちの学長のようです。
政治家もさることながら、「わが大学に寄付をした人」にも名誉学位を出さないというのは、なかなか言えることではありません。
このコメントを読むと、学長の方針に賛同する方も出てくるかと思います。
マイケル・クロウ氏が学長でいらっしゃる間は、とりあえず政治家は同大のスピーチには来ないと思いますけれど。
■それぞれの卒業式 2009(1)
↑以前の記事でも、ES細胞の研究助成を解禁したオバマ大統領が出席するという理由で、地元のカトリック系大学の卒業式を欠席すると発表した司教の話題をご紹介させていただきました。
アメリカでは、大学の卒業式が、ポリシーとポリシーのぶつかり合いの場になっているようです。
日本なら、こうした意見の主張の仕方に「大人げない」眉をひそめる方も多いと思いますが、そこはアメリカらしさでしょうか。
このように、ひと悶着あったアリゾナ州立大学の卒業式ですが、一方で↓こんなことも起きています。
■「オバマ大統領の祝辞が聞ける卒業式、招待状の売買が問題に」(CNN)
オバマ米大統領が卒業式の祝辞を述べる予定のアリゾナ州立大学で、卒業予定者が卒業式の招待状をインターネットなどで販売していることが判明した。大学側は、関係者の席を奪うことになるとして、販売している学生を見つけ次第、処分すると警告している。
アリゾナ州立大学の卒業式は5月13日で、会場はフェニックスのサン・デビル・スタジアム。卒業予定者は約8000人で、学生1人につき家族など6人を招待することができる。
この招待状が、インターネット上で「販売」されている事態が次々と判明した。ネット掲示板「クレイグズリスト」では、1枚当たり50─100ドル相当でやり取りされているほか、「1枚につきビール30本と引き換えます」とうたっている人物もいる。
(略)招待状が売買されている状況に、大学側は「オバマ大統領の祝辞を聞く機会を、同窓生や学校職員などの関係者から奪う行為」と厳しく批判。大学の規則に照らし合わせ、処分するとしている。
(上記記事より)
やはり大人気なオバマ大統領でした。
チケットがネットで売りさばかれているあたりは、アメリカらしいというか、大学生っぽいというか。
あと、大統領が来るとはいえ、「学生1人につき家族など6人を招待することができる」というのも、あまり日本では見かけないシステムですね。
大学の寄付金獲得戦略とも関わっていそうな気が、したりしなかったり。
日本ではつい最近、大学の入学式に参加する保護者が多いことが話題になりましたが、そのうち、こんなやり方になるかもわかりませんね。
というわけで昨日に続き、政治家スピーチネタでした。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。