「桜美林大学大学院 大学アドミニストレーション専攻」の科目等履修生になっておよそ一ヶ月。二科目履修していて、両方とも面白いのですが、特に「大学マーケティング戦略論」の楽しさは鼻血モノです。(←最大級のほめ言葉のつもり…)
かつて他大で修士課程の大学院生をやっていた頃、非営利組織マーケティングの授業も取っていたのですが、今はあのときより10倍面白く学べます。そりゃそうだ、今は実際に自分が非営利組織に勤めているんだもん。
加えて、この授業で扱われる理論や手法などは、プロデューサー時代の体験ともリンクするものです。個人的には、面白くないはずがないのでした。
履修する前から「こりゃ面白いだろうな」と予想してはいたのですが、十二分に楽しめています。まだ四回しか授業は行われていませんが、モトはとったぞ、という気分。
現職の大学職員の方は、履修して損はありません。
特に、民間企業から大学職員に転職された方は、元気になれると思います。
オススメです、大学マーケティング戦略論。
さて、授業の本筋の内容をそのままブログにアップするのはどうかと思いますから、それは実際にいつか皆様にも科目履修生などの形で受講していただくとして…。
こないだ、授業中にこんな言葉がぽろっと出てきましたので、ちょっとご紹介します。
「CASE産業」
これ、聞いたことのある方、いらっしゃいますか?
マイスターは、授業で初めて知りました。
1960年代くらいのアメリカで、民間企業の人々が、高等教育機関のことを揶揄して使っていた言葉なのだとか。
Copy
And
Steal
Everything
…の、頭文字なのですね。
1960年代のアメリカは、大学がまだ、売り手市場を謳歌していたころです。
第2次世界大戦と朝鮮戦争の退役軍人達に奨学金を支給するGI法案、女子学生の増加、人種差別撤廃による、アフリカ系アメリカ人達の進学など、背景には様々な要因があるでしょうが、とにかく、マーケティングなど不要なくらい、アメリカでは大学進学者が増えていたのです。
売り手市場を謳歌している組織が、わざわざめんどくさいマーケティングなど、行うわけがありません。
というわけで、当時のアメリカの大学は、
●ルーチン作業の繰り返し。すべてが前年と同じ。
●他大の取り組みを「参考」にして、真似する、コピーすることしか考えない。自分達でゼロから物事を企画立案しない。
という状態だったのですね。
それで、“Copy And Steal Everything” などと呼ばれてしまっていたわけです。アメリカにもこんな時代があったのね。
さて、授業中にこの言葉が紹介された時、教室にいる人々(ほぼ全員が現職の大学事務職員)は、みんなビミョウな表情になりました。
みなさんも、もうおわかりでしょう。
現在の日本の大学の在り方が、ズバリ、CASE産業です。
一見、どの大学もこぞって大学改革を推し進めているように見えますが、マイスターなどは、「ずいぶん横並び主義なんだなぁ」と感じるのです。
とりあえず、競合大学と同じことをやっていればひと安心。
パンフレットやwebサイトには、「時代の変化に合わせ、学生の皆様のために○○センターを設けました」などと書いてあるけど、実はライバル校のコピー。
そんなケースが、目に余るくらい多いです。
最初に改革案を考え実行したパイオニア校と、それをコピーした大学とでは、パンフレットに書かれている内容にはあまり違いがないのですね。でも実際にその大学で有効に機能しているかどうかを見てみると一目瞭然。フレームだけコピーしても、もともと「本学の教育はこうあるべきだ」という議論があって生み出されたアイディアじゃないわけですから、コピーはシステム全体の中で生きていないのです。死んでいるのですね。学生さんの利益になっていればいいけれど、必ずしもそうなっていない、うまく活用されていないことも多いのではないでしょうか?
にもかかわらず、コピーした当人達は、「コピー元」の成功イメージしか持っていないので、自分達の大学も同じようにうまくいっていると勝手に思いこんでしまうのです。
(こうしたことは別に大学に限った話ではなく、企業でも政府の政策などでも、容易に起こりうることです。気を付けていないと、誰でも犯してしまう間違いですから、気を付けましょう)
そもそも大学はそれぞれミッションが異なりますし、立地も学部学科も、カリキュラムも教育方針も、学生達の人数や学力レベルも、みんな千差万別なはず。
本当に競争をしているのなら、もうちょっと各校が違う施策を打ち出してきてしかるべきと思うのですが、実際は見事にライバル校同士、似通った改革案ばっかり出しているのには、やっぱり、なんだかちょっと違和感を覚えます。
・研修を終えて:情報のパイプを作るのはいいけれど
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50028616.html
マイスターは以前から、大学の過度な横並び意識にはちょっと不安を感じていました。上記の記事(一年近く前ですね…)に書いたのはその一例です。
ライバル校同士がお互いに情報を交換しあい、学び合って成長していくというのは悪いことではありませんし、むしろ民間企業にはない長所だと思います。
また、他校で成果を上げた取り組みを参考にすることで、学生さん達にメリットが生まれるのであれば、それもそう非難されるべきことではないように思います。
でも、そういう馴れ合いにどっぷり浸かった結果、自分でモノを考えない組織になってしまうということは、これはこれで非常に恐ろしいこと。
ライバルの真似をして「○○センター」のような施設を作ったりすることは、数年もあればできますが、ゼロから物事を考えなくなってしまった組織を変えるのは、そんなに短期間にはできないのです。
そうした中長期的な組織イメージがないまま、対処療法的に他大学の真似をしてしのいでいるのは、危険です。
“Copy And Steal Everything”
マイスターも含め、日本の大学関係者は、自分達がCASE産業になっていないかどうか、常に我が身を振り返るように心がけた方が良いのかも知れませんね。
以上、マイスターでした。
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