マイスターです。
世の中で、「いつか留学したいなぁ」と思っている人は、少なくないでしょう。
留学を考える理由は、ひとそれぞれ。
外国語で専門課程を学ぶことに意味を見いだす人、ばりばりのディスカッションにまみれてたくましくなりたい人、日本で学べない分野の勉強をしたい人、経歴にハクを付けたい人……色々なタイプの人がいると思います。
いずれにしても、自分を変えたいという想いが、人を留学に誘うのかなと思います。
でも、実際に留学する人は、ごくわずか。
目的があいまいで最後の踏ん切りが付かないとか、職を辞して海外に行く経済的余裕がないとか、日本を離れられない訳があるとか、やっぱり人それぞれ色々な理由があるのでしょう。
そんな中、日本にいながら、アメリカのカリキュラムによる、アメリカ式の教育を英語で受けて、アメリカの学位を取得する方法がいくつかあります。
そのひとつは、「外国大学日本校」に通うこと。↓以前の記事でもご紹介させていただきました。
「外国大学 日本校」をご存じですか?
他、通信教育という方法もあるでしょう。アメリカの大学には、通信教育に力を入れているとこも少なくなく、国外からも履修できる大学はあります。
そして、あまり知られていない選択肢が、米軍基地の中にある「基地内大学」への入学です。
「基地内大学」は、
青森県(三沢)
神奈川県(横須賀、厚木、座間)
東京都(横田)
山口県(岩国)
長崎県(佐世保)
沖縄県
……などに存在しています。
米軍基地に駐留している米軍兵士には、家族を連れてきている方も少なくありません。
ですので、子供のために小学校から高校、大学、大学院まで基地内に備えているのです。
基地内であらゆるサービスを自国式で受けられるようにするというのは、アメリカっぽい発想かもしれませんね。
日本の大学の基準ではなく、アメリカ国内の認証を受けて設立された教育を行っている学校ですので、卒業して得られるのはアメリカの学位であり、日本の学位ではありません。
で、この大学や大学院の中に、日本人通学生を受け入れている学校があるのです。
例えば、以下のような大学が該当します。
○University of Maryland
○University of Phoenix
○TROY University
○Central Texas Collage
このあたりに関しては、以下のサイトが詳しいです。
■「米軍基地で国内留学 ~基地内カレッジプログラムの紹介~」
普通に留学をすれば、渡航費や現地での生活費など、学費以外のお金も相当かかります。
それを節約できるのですから、海を渡ることなくアメリカの正規の大学教育が受けられるのは、お得と言えばお得。
さらに、知られざるお得ポイントもあります。
日本人がアメリカに行き、現地の大学に進学する場合、学費は「International Student」という扱いとなり、割高になります(アメリカの州立大学の多くは、州内の学生と外から来る学生とで学費が全然違うのです。4年間通ったら、それはもう大変な金額となるでしょう)
しかし、基地内の大学には国の防衛費が投入されており、アメリカ人学生と同じ料金で通うことができてしまうのです。
まるで「裏技」のような話です。
そんな、色々と気になるポイントが多い基地内大学。
昨今では、留学に関心を持つ学生さんや社会人の方も少なくないようですし、さぞ注目されている……のかと思いきや、↓こんな報道を見つけてしまいました。
【今日の大学関連ニュース】
■「基地内大学日本人新入生が減」(中国新聞)
岩国市の米海兵隊岩国基地内にある大学2校への日本人の入学希望者が激減している。これまでの入学者130人のうち、卒業生はわずか5人。高い英語力が必要とされ、途中で挫折する学生も多いという。市は「あくまで米国人向けの大学だが、市民もぜひ利用してほしい」と呼び掛けている。
基地内大学への日本人の就学は1991年度に始まった。セントラルテキサス大とメリーランド大の2校で募り、ビジネス経営学や心理学などを専攻できる。規定の単位を満たせば、各校の卒業資格が得られるという。
授業はすべて英語のため、入学時は一定基準の英語力が必要。市国際交流室によると、現在の日本人学生は3人。91年度は27人だった入学者数も、ここ数年は年間1人程度に減っている。
(上記記事より)
岩国基地には、University of Maryland、およびCentral Texas Collageがあります。
が、この2校への日本人新入生が減っているそうなのです。
上記の記事のリンク元には人数グラフが掲載されていますが、確かに、減少の一途をたどっているのは明白です。
どうしてなのでしょうか。
日本の大学業界では、まさに「米国式」のリベラルアーツ教育を標榜する国際教養系の学部が、大流行中。海外への留学者も増えています。
英語で高等教育を学ぶことの重要性は、年々高まっています。
だったら、基地内大学の進学を希望する人も増えそうなもの。
基地内大学は本来、アメリカ軍関係者とその家族のための教育機関ですので、入学では軍関係者が優先されます。その上で、定員にゆとりがあったときに日本人学生は受け入れられるというわけですから、たいへん狭き門、のはずなのですが。
減っている理由は、ちょっと考えただけでも、
・日本の大学が国際教養系の学部を充実させたことにより、そちらに学生が流れた
・基地の外にも外国大学日本校が増えたため、そちらに学生が流れた
・基地内大学に入学できるほどの英語力を持った学生が減少した
(あるいは、そうした学生は他のところに行った)
・思ったほどの教育が得られないのでは、など、基地内大学に対する期待値が下がった
・米軍基地に対するイメージが悪化した
・アメリカ式教育のニーズそのものが、実は失われてきた
・日本人に対する、基地内大学の広報体制が弱まった
……など、様々なものが思いつきます。
日本の大学以上に、多くの要因に影響を受けていそうで、断言はできません。
ただ、上記の記事では、岩国基地のことしか述べられていませんので、減少しているのは岩国基地だけ、という可能性もあり得ます。
■「平成21年度岩国基地内大学就学希望者募集について」(岩国市総務部総務課国際交流室)
↑こちらが、岩国基地の大学の、日本人学生募集のページ。
市の、総務部総務課・国際交流室が作成しています。
今の日本の大学の受験生募集の姿勢に比べたら、正直言って、あまり魅力的には感じられません。
「基地内大学へ関心をお持ちのかたへ」というファイルもありますが、「岩国基地内大学についてのFAQ」なんて項を見てみると
[基地入門が許可される日・時間はいつですか?] 授業がある日・時間に限り、許可されているようです。基地入門許可の取り扱いは、基地の警備情勢によって変更されることがありますので、注意してください。
[これまでの就学者と卒業者は何人ですか?] 平成3年度から20年度に、岩国基地内大学就学推進委員会を通じて就学を開始した人は、約130名です。このうち卒業者が5名ですから、卒業は決して容易ではないようです。また、卒業に必要な単位を取得していくためには、インターネットによる通信教育(DE)との組み合わせが有効なようです。
……などなど、「ようです」が多くて、なんだかはっきりしない感じ。
市のご担当者は、大学には間接的に関わっているお立場でしょうから、色々とやりにくいのだろうな……と推察します。
でもこんな怪しい紹介のされ方では、確かに誰も、積極的行きたいはと思わないかもしれませんね。
では、他の基地ではどうなのでしょうか。
三沢市などは、日本人学生の募集に熱心の様子。
■「三沢基地内大学就学協議会」
■「三沢基地内大学」(三沢市)
■「三沢基地内大学就学事業」(財団法人青森県国際交流協会)
三沢市の場合、日本人学生の受け入れを実現させるまでに、様々な経緯があったようです。
その辺りの詳細が↓こちらのサイトにまとめられていますので、ご興味のある方はどうぞ。
■「三沢基地内大学 青森県民就学実現への記録」
こうした経緯があるからこそ、募集に熱心なのかもしれません。
ただ、学生数の推移に関する情報は、残念ながら見つけられませんでした。
三沢でもやはり基地内大学に進学する日本人は減少しているのか、あるいはそうでもないのか、知りたいところです。
基地内大学の状況を調べてみることで、日本の大学の現状や、高等教育マーケットの動きについて、何か面白い知見が得られるかもしれません。
以上、報道を見ながらそんなことを考えた、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
そもそも基地内で大学留学できるって、団塊ジュニアが受験適齢期の頃ですら余り知られていなかった訳ですし。主に地元民が中心だったというのが、ホントのとこだったのでは。
しかも、最近では海外留学ですら単に語学研修程度では割高に過ぎるし、余程名が通っていないと(日本ばかりか海外ですら)就職とかで苦労するだけに、行くだけのメリットを見出せないのかも。