大阪府立大学 入学式での橋下府知事の「あいさつ」が話題に?

マイスターです。

ここ最近、公立大学の話題が熱いです。

■悩める国際教養大学
■公設民営の名桜大学が、公立大学法人への移行を検討?
■京都市立看護短期大学、佛教大学に統合 公立から私立へ?

公立大学は、地方公共団体が設置する大学。
地域のために、(主に)地元の税金で運営されています。

ですから「地域への貢献」は、公立大学の存在意義の柱とも言えるもの。
地元を活性化させるための教育・研究を行うために、大学があると言っても過言ではない。
……と、少なくとも自治体の皆さんは考えています。

私立とも国立とも違う、重要なミッションを背負う公立大学。
そんな公立大学だからこその難しさも、色々とあるようです。

【今日の大学関連ニュース】
■「しっかり学んで 府大入学式で知事、辛口エール」(大阪日日新聞)

大阪府立大の在り方を抜本的に見直すことを表明している橋下徹知事は六日、大阪市で開かれた府立大の入学式で祝辞を述べ、「皆さんは府民の税金で勉強することをしっかり認識してもらわないと困る」と新入生約二千二百人に辛口のエールを送った。
橋下知事は「ありとあらゆる予算を削る中で、百億円超の税金が府立大に入っている」と指摘。「皆さんがしっかり勉強し、社会で活躍できる人材になることで府民に還元してほしい」と訴えた。
(上記記事より)

■「橋下知事、府立大入学式で持論訴える」(nikkansports.com)

府民の税金で勉強することを認識して-。大阪府の橋下徹知事が6日、年間約100億円の運営費交付金を出す大阪府立大の入学式でのあいさつで、約2000人の新入生らに対し「費用対効果」を徹底する橋下イズムを訴えた。祝いの場での異例の厳しい言葉に、大学関係者からは「学生に真意が届いたのかどうか…」と戸惑いの声も上がった。
府立大の在り方について、存廃を含めた抜本的な改革に乗り出す方針を示している橋下知事。府職員の人件費や行政サービスのカットに取り組んでいることを強調した上で「府民は住民サービスを削られても、みなさんの学ぶ機会を保証するために税を納めている。だからこそ皆さんは府民に還元しなくてはいけない」と、勉強や研究を通じて具体的な“成果”を挙げるよう求めた。
(略)府の担当者は「しっかり勉強してほしいという知事の叱咤(しった)激励」とみる。だが大学関係者は「入学式の場で言われた学生が、知事の真意を理解できるか心配だ」と困惑を隠さなかった。
(上記記事より)

何かと話題になっている、大阪府の橋下徹知事。
様々な発言などが、メディアによってしばしば取り上げられているようです。

ここでご紹介させていただいたのは、大阪府立大学の入学式で、橋下府知事が新入生に伝えたあいさつの一部。
コストカットなどに腕をふるい、そのことで賛否両論を呼んでいる橋下府知事らしい発言、ということなのか。この入学式のあいさつは、いくつかのメディアでクローズアップされていました。

背景には、知事が大阪府立大学について、存廃を含め抜本的な改革を検討していることも関係しているのだと思われます。

■「『教育資金に』 奈良の男性、大阪府立大基金に7500万円寄付」(MSN産経ニュース)

大阪府の橋下徹知事が存廃を含め抜本的な改革を検討している大阪府立大学(堺市中区)が、橋下改革の対抗策として3月に創設した「大阪府立大学基金」に、奈良県在住の元会社役員の男性から約7500万円の寄付があったことが10日、分かった。寄付は元役員の個人資産の一部で、教育資金としての活用を希望しているという。府立大は「基金を通じて独自の財源を確保し、大学の存続を図りたい」としている。
府立大をめぐっては、橋下知事が今年2月、年間約100億円の交付金を出している運営状況について「存在意義が十分理解されていない」と述べ、大阪市立大(大阪市住吉区)との統合も含めた改革を表明。基金の創設は、減額が予想される交付金を補(ほ)填(てん)する狙いもあるとみられ、存廃をめぐり両者の駆け引きが今後も続きそうだ。
(上記記事より)

↑このように、色々と駆け引きも展開されているようですね。

そんなことも意識してか、冒頭の2つの記事にも、メディアで報道されている「橋下知事イメージ」が見え隠れしているようで、

辛口

「費用対効果」を徹底する橋下イズム

祝いの場での異例の厳しい言葉

大学関係者は「入学式の場で言われた学生が、知事の真意を理解できるか心配だ」と困惑を隠さなかった。

……などの印象的なワードが並んでいます。

マイスターは橋下府知事の普段の政治姿勢にはあまり興味ありませんし、知事のファンでも、あるいは反対者でもありません。
ただ、上記のあいさつを見ただけの感想を言えば、個人的には別に辛口だとも、「異例の厳しい言葉」だとも思いませんでした。

府民は住民サービスを削られても、みなさんの学ぶ機会を保証するために税を納めている。
だからこそしっかり勉強し、社会で活躍できる人材になることで府民に還元しなくてはいけない。

これ、別に「橋下イズム」というわけじゃないのでは。
大阪府立大学の置かれている状況はさておいても、すべての公立大学にとって自明の「前提」であり、橋下知事だけがおっしゃっていることではないと思うのですが、いかがでしょうか。

むしろマイスターは、これらは大事なメッセージであり、あらゆる公立大学の入学式でこうしたことをきちんと学生達に伝えるべきなのではないか、とすら感じました。

ややもすると、国立大学や公立大学を、単に「私立よりも学費が安くてお得な大学」と考えている学生やご家庭も、少なくないのではないかと思います。

確かに、安くてお得です。が、それはチープな教育しかしていないわけでも、お金がどこかから湧き出ているからでもなく、公的な税金が代わりに投入されているだけの話。
どこかの誰かが、学生の負担を肩代わりしているからに他なりません。

これは、理屈の上では理解されていることなのですが、あんまり意識されることがない前提です。

もちろん、国公立大学に入学したからと言って、税金だの地域貢献だのを、日常的に意識する必要はないでしょう。
ただ、一度くらいこうした話を聞くのは、悪くないことだと思います。普段は忘れていて、ふとしたときに思い出すくらいは、していただいてもいいんじゃないかな、なんて思います。
(私立大学も、多かれ少なかれ税金がかかっているという点では同じですから、こうしたことは大事なのですが)

入学式は、ちょうど良い機会。
それも学長が言うのではなく、来賓である知事が伝えるというのは、役割分担としても筋が通っているように思います。

大学を巡る様々な駆け引きの状況をご存じの方がご覧になったら、別の感想を持たれるのかもしれませんが、今回のあいさつだけを見れば、個人的には違和感はありませんでした。

以上、マイスターでした。

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(おまけ)

ちなみに↓こちらの方のコメントも紹介されていました。

■「『勉強は適当で』新入生に祝辞 首都大学東京で入学式」(MSN産経ニュース)

首都大学東京(原島文雄学長)の入学式が7日、東京国際フォーラム(東京都千代田区)で行われ、真新しいスーツに身を包んだ新入生約2500人が出席した。
来賓の石原慎太郎都知事は「何か若者じゃなくてはできないものを見つけて感性、情念を磨くことが重要」と強調。「大学の勉強は適当でいい。みなさんにやってもらいたいのは、まず、いい友達をいっぱいつくること、2つ目は趣味を持つこと。趣味のない人間は魅力がない。趣味の世界に耽溺(たんでき)してもらいたい」と祝辞を贈った。
(上記記事より)

タイトルだけ見ると対照的です。
ただ都知事も、実際には色々なメッセージを新入生に贈られたのではと思うのですが、どうして記者の方は「勉強は適当で」の部分をタイトルに持ってくるのでしょうね……。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

5 件のコメント

  • ぎゃー、これは恥ずかしい!
    大変失礼いたしました。
    ご指摘、ありがとうございます。直しておきました。

  • 現役府大院生(工)です
    言いたいことは分かるんですが橋本さんが知事になってから、研究資金削減が叫ばれてどの研究室も資金確保に奔走してます。そのせいで指導教官はいつも出張中
    太田知事の時代に赤字が増えたのは事実。でも約100億円の交付金といってもそのうち半分以上は国からの地方交付金でしょうに・・・
    大学院生ともなれば日付けが変わるまで実験を行うのもざらです。それを「存在意義が十分理解されていない」と切って捨てられると、やるせない気持ちでいっぱいです。
    理系の基礎研究は地味で一歩一歩着実に成果を積み上げていくしかありません。これからは、基礎研究ではなく「金になる研究」をしていくんだろうなと思うと仕方ないかもしれないけど残念です。
    橋本さんは私立文系出身だし、国公立理系の基礎研究の重要さを理解できていないんじゃないかしら

  • 府大工学部は大企業に研究員を多く輩出しています。
    企業は安く大量のエンジニアを雇えます。
    府大工学部の貢献度は大きいと思います。

  • ひどく古い記事にコメントしてすみません.
    たまたま検索していたらひっかかって気になったので.
    今年度は入学式終了後に部活紹介をする時間が取られていたので彼(橋下知事)のコメントを聞いたのですが,それは嫌なものでした.
    今回の給付金がらみの話を追っていると,
    彼は”府立大の学生に一生懸命勉強して欲しくて交付金を支払っている”
    のでは 無 い のはすぐ判ります,
    彼は,
    単年度で大学をつぶすことができなかったから
    “仕方なく”
    払っているのです.
    大学への交付金を福祉に使いたいとか
    (府大には看護大も福祉学科も含まれているのに!)
    私学に売却すればいいとか
    君たちの教育にお金を払うのは無駄だと思っているんだけどなんか払わないとまずいみたいだからそのままにしといてやるよ.
    と言われて,そうだなぁ,じゃあ頑張って勉強するか!とは思いません.普通.
    部分を取り出すとまっとうなことを言っていますが,文脈を見るととても同意できたものではないです.
    彼は「府民へのサービスから,警察官の給料まで削りました.でも府大には100億出してる」
    と入学式で語りました.まるで府大への資金は削っていないんだから,というような口調でした.
    でもその前年度.府大への交付金は10%カットされています.
    彼は警察官の給料を削りました.でも警察を無くそうとしたわけではない.
    対して府大相手には,交付金を削り,ネガティブキャンペーンを張り,挙句交付金をゼロにできないか,つまり”つぶせないか”検討したのです.
    なぜそんな比べ方をされなければならないのです?しかも「それよりマシだろ?」と言われたのですよ.
    入学式で学生に新入生に語るべき内容であるとはとても思えませんでした.
    確かにお金の配分がおかしいと感じることはあります.
    でもそれは,学生が勉強していないのではなく
    運営がおかしいのです.理事会で言うならわかります.何故それを学生,しかも新入生に対して訴えるのでしょう?
    それをそこで言うと大阪府/府立大にどのようなプラスがあるのでしょう.
    新入生は旧帝大だろうが地方国公立だろうが,同じ立場です.何も罪はありません.
    府立大はすばらしくいい大学ではありません,
    お金が無くて古い校舎の耐震強度を
    “測定してもらえない”こともあります.測定したら耐震工事しないといけないけどお金ないから.
    でも,入学式のときはやはり,
    「一生懸命サポートするからこれから頑張ってくださいね」
    くらい言われてもいいと思うのです.
    なぜ大学生初日に
    「サポートはしたくないけど,やらないとまずいからやってやるよ,精々役に立てよ」
    などといわれなければならないのでしょう.
    税金を使っているという認識はあってもいいでしょう.しかし,それを語るのに入学式という場が適切だとは思いません.語り方も不適当です.