ニュースクリップ[-3/1] 「京大、『ライダーマン』がお出迎え 国公立大入試の二次試験始まる」ほか

マイスターです。

さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

【戦え受験生。】
■「京大、『ライダーマン』がお出迎え 国公立大入試の二次試験始まる」(京都新聞)

京都大吉田南キャンパス(京都市左京区)に25日、入試シーズン恒例の、キャラクターに変身した「折田先生像」が登場した。今年は「仮面ライダーV3」に出てくる「ライダーマン」が二次試験の受験生を出迎えた。
京大前身の旧制三高の折田彦市の銅像は、相次ぐいたずらで大学側に撤去され、その後は作者不詳の張りぼて像が毎年登場している。
ライダーマンは正義と平和を求めて悪の集団「デストロン」と戦う京大出身の科学者。次代を担う若者にもライダーマンのように活躍してほしいとのエールを込めたとみられる。受験生らは、突如現れた正義のヒーローの前で写真を撮ったり、不思議そうに眺めたりしていた。
(上記記事より)

京都大学・折田先生像をご存じない方は、↓こちらをご覧下さい。

(過去の関連記事)
■京大の有名人 折田先生(像)

今年はライダーマンですか。
先日の記事で、「毎年必ず同じ時期に発信される情報というのは、ニュースを報じる側にとっては格好のネタ」と書かせていただきましたが、そういえばこちらもそんな一例ですね。

マイスターはライダーマンの設定にあまり詳しくないので、試しにWikipediaを見てみたところ、

自分の研究が世に認められなかった助手時代にデストロンのスカウトを受け入団した(両親を失った幼少時からデストロンの援助を受けていたという設定もある)。デストロンが悪の組織であることを知らないまま、平和のためと信じて研究を続け、科学班のリーダーとして頭角を現した。
「仮面ライダーV3」(Wikipedia)記事より)

……とあったのですが、京都大学出身だったのですか。
きっと色々苦労されたのでしょう。

それにしてもこのライダーマンの設定……今となってはなんだか、色々と考えさせる内容ですね。

【内容が固まらないうちに設置申請?】
■「大阪国際大、学部新設でずさん計画」(MSN産経ニュース)

大阪国際大(大阪府枚方市)が、平成19年4月に文部科学省に提出していた新学部の設置に関する届け出書類の内容を、昨年4月の学部発足までに変更し、文科省から改善を求める指導を受けていたことが28日、わかった。
(略)届け出に変更があったのはビジネス学部と現代社会学部。約3割の科目について、担当教員や受講できる学年などが変わっていた。教員らに十分な説明をしないまま届け出書提出の準備を進めた結果、両学部の選任教員や非常勤教員に欠員などが生じたという。
同大は「ずさんな計画をしてしまったことは事実。学生に迷惑をかけて申し訳ない」としている。
(上記記事より)

3割の変更というのは多いですね。
計画に問題があったことを大学も認めているようです。

今回の事例は、もちろん大阪国際大学に問題があるわけですが、このように大学関係者に突貫工事で学部や学科を準備させる市場環境が続く以上、似たような事例は今後も出てくるかもしれませんね。

【生協のバスが渋滞の原因? 受験生の到着に遅れが。】
■「スキーバスが受験バス“妨害” 東北大入試」(河北新報)

国公立大2次試験が行われた25日、仙台市青葉区の東北大川内北キャンパス前で、大学生協東北事業連合(仙台市)が企画したスキーツアーの大型バスによる渋滞が起き、仙台市交通局が受験生向けに運行した臨時バスが遅れるトラブルがあった。
交通局によると、午前8時すぎ、川内北キャンパス近くの扇坂バス停前に貸し切りバス4台が停車し渋滞が発生。臨時バスは午前7時半から17台でピストン輸送する計画だったが仙台駅に戻るバスが大幅に遅れた。
交通局職員が貸し切りバスの運転手に移動を求めたが、「乗車場所を勝手に変更できない」との返事だったという。ツアーバスは約30分、客待ちをした。
交通局は回送していた8台を臨時バスとして運行。最後のバスが仙台駅を出たのは、試験開始まで30分を切った午前9時33分だった。東北大経済学部を受験した岩沼市の高校3年男子生徒(17)は「8時半から仙台駅で待ったが、バスが来ない上、ノロノロ運転で不安になった。着いたのは試験開始ぎりぎりだった」と話した。
(上記記事より)

大学生協の企画によるツアーバスがバス停前に停車した影響で、受験生のための臨時バスが大幅に遅れたとのこと。

たくさんの人数を遅延無く輸送しなければならない受験のときは、交通機関で様々な臨時の措置がとられたりするようです。
そろそろ入試も終盤ですが、混乱のないよう、関係者の皆様はどうぞご注意下さい。

【学祖が企業によって商標登録される?】
■「『大隈重信』を商標登録!? 佐賀市と早大 怒る」(佐賀新聞)

「佐賀の七賢人」の1人で、総理大臣を務め、早稲田大学を創設した大隈重信(1838-1922年)の名前を、福島県の会社が商標登録しようとしていることが24日、分かった。偉人名では既に「江藤新平」が登録され、吉田松陰らの登録について山口県萩市が異議を申し立てるなど問題化している。佐賀市は地元の偉人の新たな問題発覚に「偉人の名を独占することは問題」と、意見書提出を検討。早大も「看過できない」と反発している。
登録出願しているのは福島県須賀川市の食品卸・小売会社。特許庁によると昨年7月、日本酒など5種の酒類に「大隈重信」と名前が使えるように出願した。同社は詳細については「担当者が不在で答えられない」としている。特許庁は審査中だが、認められれば名前を商品に使う際は同社の許可が必要になる。
(上記記事より)

■「『大隈重信』商標登録 申請取り下げへ」(佐賀新聞)

佐賀の七賢人の一人で早稲田大を創設した「大隈重信」の名前を特許庁に商標登録申請していた福島県の食品卸小売会社は25日、申請を取り下げる意向を示した。早大側や遺族らが強い不快感を示したためで、意向を無視してまで登録することは会社のメリットにならないと判断したとみられる。
同社関係者によると、「販売向上につながると思って申請したが、大学側や親族が想像以上に強い不快感を示している。そのような状況の中、無理して商標登録しても会社に利益はない」とし、同日までに申請を取り下げる方針を決めたという。
(上記記事より)

早稲田大学創設者である「大隈重信」の名前を、日本酒などの商品名に使おうと考え、商標登録しようとした企業が出現。
早稲田大学や、ご本人の遺族の方々、そして出身地である佐賀市などが反発した結果、申請が取り下げられることになりました。

いけるかと思って試しにやってみた、という感じだったのでしょうか。
歴史上の有名人が商標登録されたケースは実際にあるようですので、有名人が関わった大学は、注意が必要かもしれません。

【女性優遇、是か非か。】
■「女性教員採用の大学支援、理系対象に給与補助…文科省」(読売オンライン)

大学の女性教員比率を引き上げるため、文部科学省は新年度から女性を新規採用した大学に財政的な支援を行う。女性の比率が特に低い理学、工学、農学系を対象に、研究費や、300万円を上限に年間の給与の半分を補助する。公募で5大学程度を選び、それぞれ1億円を補助する計画で、女性増員の起爆剤になるか注目されている。
(略)女性教員の比率は、国立大学協会が00年6月に「10年までに20%」という数値目標を設定した。しかし、文科省が育児との両立支援などを始めた06年度以降も、微増にとどまっている。
科学技術振興機構の北沢宏一理事長は「環境整備だけでは不十分。逆差別というような反対を抑え、女性を優先採用するなどのルール作りが必要だ」と話している。
(上記記事より)

こうした措置は、「アファーマティブ・アクション」や、「ポジティブ・アクション」などと呼ばれます。
「積極的差別是正措置」と訳されることもあるでしょうか。
「機会の平等」のみならず、「結果の平等」にも一歩踏み込んだ形で、マイノリティや、社会的に不利な立場にある集団の社会的地位を引き上げ、格差を解消しようとする行為、とマイスターは理解しています。

例えばアメリカの大学の中には、民族的にマイノリティに属する受験生のために入試で特別枠を設けたり、あるいはアングロサクソン系白人男性などと比べて有利になるように評価したりするところがあります。
アメリカの社会全体の割合で見ると、マイノリティの家庭では、貧困から抜け出せず、そのため子供に高いレベルの教育を与えられないという負のサイクルに陥っているケースが、比率として白人家庭などよりも高いのです。
そこで、そのサイクルを断ち切るために、一歩踏み込んだ是正措置をとるわけです。

(過去の関連記事)
■大学で女性研究者を増やすためには?

以前の記事でもご紹介しましたが、日本において、なんだか女性が特に少ないと思われているのが、研究者や教員の世界。特に大学レベルでの女性の少なさ、中でも理工系のそれは顕著です。

教育現場で活躍する女性が少ないというのは、そこで学ぶ学生達にも強い影響を与えます。
そこで上記のように、「一歩踏み込んだ措置」が推進されるわけです。

なお、こうしたアファーマティブ・アクションには、「逆差別ではないか」という批判がつきもの。
つまり、同じように優秀であっても男性だからという理由で不利になる人がいるのは良いのか、というわけです。また、もともと優秀な人材なのに、「女性だから採用されたのだろう」などという評価を受けるのはイヤだ、という声もあると思います。
確かに行き過ぎは良くありません。

ただ、日本の大学における男女の偏りをこのまま放置していても、この先あまり良い影響を残さないだろう、というのも事実。
文科省の動きに先行し、既に名古屋大学や北海道大学では取り組みが始まっています。この流れはしばらく続くでしょう。

ちなみに今では、↓こんな話題もあります。

■2015年には大学生の7割以上が女性に?

30年後くらいには、「男性の優遇措置」が議論されているかもしれません。

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。