MITの権威をさらに強化する「MITが選ぶ2009年の10大注目技術」

マイスターです。

大学や大学教授というのは、世間的にはある種の権威、オーソリティーだと見なされています。

「あの大学の教授がすごいと言っているのなら、きっとすごいのだろう」
「あの大学が選んだのなら、きっと価値があるものなのだろう」

……等々、社会の中の様々な価値を評価・判断する際、大学から出された意見が強く参考にされることはよくあります。
これは大学の「知」に対して、社会が大きな信頼を寄せているからこそです。

たまにこうした権威が良くない方向に機能することもありますが、一方で多くの場合は、そう間違ったことにはなりません(だから信頼され続けているわけです)。
信頼に足る権威であり続けるというのは、ある意味、研究機関においては最も重要なことかもしれません。

さて、今日はこんな話題をご紹介したいと思います。

【今日の大学関連ニュース】
■「MITが選ぶ2009年10大注目技術 – 超大容量ストレージ、生体マシンなど」(マイコミジャーナル)

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の出版部門が発行する「Technology Review」が、「The 10 Emerging Technologies of 2009」と題して2009年に注目すべき新興技術トップ10を紹介している。医療分野やコンピュータ関連ソフトウェアで1年以内に実用化が見込まれるものもあれば、バイオやナノ技術で将来的に有望な基礎技術まで、今後われわれの生活に影響を与えそうなものが満載だ。ここでは、
(上記記事より)

上記は、マイコミジャーナルの記事。
マサチューセッツ工科大学(MIT)が発表した、「The 10 Emerging Technologies of 2009(MITが選ぶ2009年の10大注目技術 )」を紹介するものです。

この元になっているのは、↓こちら。

■「Special Reports 10 Emerging Technologies 2009」(Technology Review)

こちらで紹介されているのは、いずれも興味深い技術です。
ご興味のある方はぜひ、ご覧ください。
この中の一部は、上記のマイコミジャーナルにて、日本語で紹介されてもいます。

例えば、この中の一つ「Biological Machines」というのは、↓こんな研究。
既にご覧になって驚かれた方も多いかと思います。

■「昆虫をラジコンのように操る、日本人MEMS研究者の足跡」(マイコミジャーナル)

さて、この「「The 10 Emerging Technologies of 2009」。
「Technology Review」誌で、以前から同様の発表が続けられています。

■「The 10 Emerging Technologies of 2008」(Technology Review)
■「10 Emerging Technologies 2007」(Technology Review)

ちなみに「Technology Review」というのは、MITが出版(またはWeb公開)している、科学技術に関する専門情報メディア。
MITが所有する企業「Technology Review Inc.」によって出版されている、というのが正確です。

Technology Review and Technologyreview.com are published by Technology Review Inc., an independent media company owned by the Massachusetts Institute of Technology. The oldest technology magazine in the world (est. 1899), Technology Review aims to promote the understanding of emerging technologies and to analyze their commercial, social, and political impacts.
「About Us」(Technology Review)より)

このように、1899年に創刊された、「世界で最も歴史のある技術誌」だとサイトの説明にはあります。

これだけでも、MITの取り組みの広さ・深さを想像させるに十分です。
が、さらにこの雑誌が毎年、「The 10 Emerging Technologies of 2009」のような情報を発信しているというのが、なんともニクイところ。
この発表が、科学技術界におけるMITの権威を、強化する結果になっているように思われます。

それでなくても、科学技術におけるMITの権威は、世界中に知られています。
「あのMITが予想する、今年の10大技術」
……なんていう情報は、メディアにとっては格好の話題でしょう。

きっと世界中のメディアで、この10大技術が紹介されています。実際、アメリカの大学の雑誌が発表しただけの特集を、こうして日本にいるマイスターも目にしているのですから。

結果、「科学技術」と「MIT」のイメージのセットは、さらに世界中の人々にすり込まれるというわけです。
これは、大変なPR効果です。
MITと「Technology Review」が発揮しているプラスの相乗効果、見逃せません。

学術誌をはじめ、専門的な情報を発信するメディアを持っている大学は珍しくありませんが、その中で、学外に注目されているものはあまり多くはないでしょう。まして、世界中からとなると、ほとんど稀だと思います。

内容の充実度では「Technology Review」負けていないぞと思っても、他のメディアへの波及効果でこのレベルに追いつくのは大変です。

ちなみに一般にメディアは、ネタにしやすい情報を好みます。
「The 10 Emerging Technologies of ○○○○」のように、毎年、何らかの評価を継続して発表し続けるというのは、メディアにとっては取り上げやすい話題。

↓以前の記事でご紹介した、大学のコンテストも、その一例です。

(過去の関連記事)
■メディアで紹介される 大学主催のコンテスト

あとは、上海交通大学が実施している、世界大学ランキングもその一つかも知れません。
「The Times Higher Education」や「US News and World Report」のものと並んで、よく引用されるランキングですが、このランキングで「上海交通大学」の名を知ったという人も、多いかも知れません。

このように、毎年必ず同じ時期に発信される情報というのは、ニュースを報じる側にとっては格好のネタ。
この時期になったら必ずあれを取り上げよう、なんていう「年間サイクル」を決めているメディア関係者も多いと思います。

上記のMITと「Technology Review」の取り組みを参考にして、情報発信の仕方にひと工夫してみると、そのうち皆様の大学の情報も、メディアから毎年取り上げられるようになるかも知れません。

なおもちろん、情報自体の楽しさ、面白さも大事です。

■Technology Review

↑この「Technology Review」、今回の10大技術以外の記事も、非常に面白そうです。
情報の質・量に加え、表現の方法でも読ませる工夫がないと、エンジニアや学生だって好んで読み続けようとは思わないでしょう。

最近は日本の大学の広報誌なども、かなり編集に工夫がなされ、魅力的な内容になっていますので、もう一工夫して、ぜひ多くの人達に読まれるようにしてみてください。

以上、そんなことを思ったマイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。