マイスターです。
■明治大学がマンガの図書館を設立
↑以前の記事でご紹介した、明治大学によるマンガの図書館、正式名称「米沢嘉博記念図書館」のwebサイトがアップされたようです。
京都には京都精華大学と京都市による「京都国際マンガミュージアム」がありますが、大学が独自の研究拠点として、こうしたマンガとサブカルチャーの専門図書館を設立するというのはおそらく、日本初でしょう。
明治大学には日本のポップカルチャーなどを研究する「国際日本学部」がありますので、この図書館もそのあたりで活用されるのかと思います。
現在、こんな感じで、収蔵される資料が出番を待っている様子。
放っておいたら失われてしまったかもしれない資料が、こうした形で大学の蔵書になるというのは、面白いですね。
心配なのは、おそらくこの領域のコンテンツは毎年、莫大な量が新たに制作されているので、そのうちこの図書館も手狭になるかもしれない、ということくらいでしょうか。
2号館、3号館ができる日も遠くないかも……。
さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。
【学生は閲覧できます。】
■「内定取り消し企業を公表」(中国新聞)
広経大をはじめ、広島修道大(安佐南区)広島国際大(東広島市)呉大(呉市)など10大学と2短大は、内定取り消しの実態を学生から聴取し企業に確認した上で情報を交換。これを基に広経大は1月末から、学生と教職員だけが閲覧できるHPへ、取り消しをしたり辞退を強く迫ったりした企業名の掲載を始めた。
他の多くの大学や短大も、就職相談窓口で学生から質問された場合、企業名や経緯を説明する。また、学内の企業説明会への参加拒否や求人票の閲覧禁止の措置も取っている。
これに対し、内定を取り消した広島県内のある企業の採用担当者は「業績悪化でやむを得ず取り消した。大学にも事情を説明したが厳しい対応だ」と受け止める。
(上記記事より)
内定取り消しをした企業に対する、大学からの報復措置のような形です。
一方的に採用・不採用の通知を受けて翻弄されるのではなく、抑止力となる行動を大学側もとっていこう、ということでしょう。
企業側にとっては厳しく感じられるかも知れません。地元の企業にとっては、地元で採用できる学生が会社生存のための唯一のリソースですから、この措置が原因で衰退していくところもでないとは限りません。
でも大学側が何もしなければ、今後も内定取り消しを行う企業は出てくるでしょうから、学生側は翻弄され続けるままです。
個人的には、現状では、これくらいの措置は仕方がないと思います。
ただ最終的には、「内定」という不安定な立場が長く続くという日本の就活のあり方を変えないと、根本的な解決はしないだろうとも思います。
【少年の人生を変えた、島の研究所。】
■「きっと『ふるさとに戻る』 池田君、黒島中ただ一人の卒業生2009年3月18日」(琉球新報)
9年前にたった一人で竹富町立黒島小中学校に入学した池田晃雄(あきお)君(15)が14日、再び一人で同校から巣立った。島内に高校はなく、夢をかなえるために親元を離れて石垣島の高校に進学する晃雄君を、両親や教師、住民らが笑顔と涙で激励した。
「晃雄に“ふるさと”をつくってあげたくて、この島に越してきました」。卒業式の中で、父章光(あきみつ)さん(45)と母敦子(あつこ)さん(45)のメッセージが流れた。都会で生まれ育った2人にはふるさとと呼べる場所がなかった。横浜の団地で暮らしていた13年前、料理人の章光さんが黒島の宿泊施設から誘われ、初めて家族で島を訪れたとき、「ここで晃雄を育てたいと思った」(敦子さん)と、親せきも知人もいない黒島に移り住んだ。
(上記記事より)
家族で離島に移り住み、「たった一人の生徒」となった少年の話です。
周囲の方々に見守られながら、自分の目標を定めてたくましく卒業していく様子は、読む者の胸を打ちます。
中でも、黒島研究所という機関が身近にあったことが、彼に大きな影響を与えたようです。
島では人生を変える出合いもあった。島内にある海洋生物研究所「黒島研究所」だ。小学校6年のころから調査を手伝ううち、海の研究者という夢もできた。
「海に関する仕事に就くために島を出て進学し、大学にも行きます。つらいときはふるさとであるこの島を思い、夢をかなえてこの島に戻ってきます」と力強く宣言した晃雄君に、黒島一哉校長は「生物学者池田晃雄の名を耳にする日を楽しみにしている」とエールを送った。
敦子さんは「15歳で自分の目標を定められるなんてすごいこと。学校、地域、そして研究所の力が晃雄を変えてくれた。この島に来てやっぱりよかった」。目を潤ませながら、誇らしげに息子を見詰めていた。
(上記記事より)
黒島研究所は、「特定非営利活動法人日本ウミガメ協議会」が運営している海洋生物の研究所。
主に、ウミガメやサンゴの研究をしているそうで、展示室などのミュージアム的な機能も備えているのだとか。
現在、自治体や大学により、全国の至る所で、小・中学生の方々と研究者の方々の触れあいの場が設けられています。
1日限りの接点であることも多いでしょうし、中には上記の記事のように、中長期にわたって関わるケースもあるでしょう。いずれにしても、子供達に対し、研究者が与えられる影響は小さくありません。
そんなことを、改めて感じさせてくれる記事です。
【非科学的な授業?】
■「大学の『風水科目』廃止に待った!継続求める声が噴出―中国」(レコードチャイナ)
武漢科技大学で学生に人気の高い選択科目「建築と風水」が廃止されることになり、中国全土から継続を求める声が噴出している。新聞晩報が伝えた。
風水は中国で1960年代後半から70年代前半まで続いた文化大革命時代には「迷信」とされ、厳しく禁じられた。ところが時代が変わり、最近では不動産の購入時などに活用する人が急増しているという。
そんな流れを反映してか、同大中南分校で昨年、選択科目に「建築と風水」を設けたところ、受講を希望する学生が殺到した。ところが大学側が「社会的な圧力」を理由に来学期からこれを廃止することを決定し、物議を醸している。中国の各ポータルサイトが緊急アンケート調査を実施した結果、2万5000 人以上が「廃止に反対」と回答した。
(略)復旦大学の教授らは今回の決定に対し、「大学で多様な知識を学べるのは良いこと。法律や社会道徳に反しないものであれば自由に開講すべき」と語っている。
(上記記事より)
中国はもちろん、日本でも、「風水」という言葉は使われています。
ただ現代では、占いと同じように、社会の中でそれなりの認知度を得てはいるものの、非科学的な理論体系だという印象がありますね。
風水にしても占いにしても、その歴史は古いですし、特に古代社会について研究するためには、理解をしておく必要があるでしょう。
ただ、これを大学の正規の授業の一つとして認めるかどうか、というと、このように賛否両論に分かれるのですね。
どの国にも何かしら、こういった分野がありそうです。
ちなみに、香港や上海などには、世界中の名だたる建築家による近代的なビルが建ち並んでいます。
中には、不可思議な形のものもありますが、その理由は、「風水」だそうです。
マイスターは学生時代、香港で行われた建築・都市計画のワークショップに参加したことがあるのですが、そのときに教えてもらいました。
香港では、近代的な建築物であっても、作る際に風水を意識しないわけにはいかないのだそうです。
そこまでいくと、大学でも教えないわけにはいかないんじゃないか、という気がしますが、どうなのでしょうね。
【高校の授業で組み立てたミニSLを全国に寄贈。】
■「ミニSLを母校千五小へ寄贈~日本工業大学の大川理事長」(足立よみうり新聞)
日本工業大学は、日本工業大学駒場中学校、日本工業大学駒場高校を併設する。高校では昭和52年から、ミニSLを教材として造っている。
完成させるには、700点におよぶ部品を図面に従い、工作機械を駆使しながら組み立てていく。入学してから卒業までにやっと1台ができあがる息の長いカリキュラムだ。
これまで完成したミニSLは、北海道から沖縄まで多くの施設に寄贈され、子どもたちを楽しませてきた。
(上記記事より)
日本工業大学の附属高校が行っている取り組み。
卒業までの長い時間をかけて1台を組み立てるという点も、それを全国の施設に寄贈するという点も、とても素敵です。
最近ではいくつかの大学でも、地域でものづくりを教えたり、街中の壊れた設備を直してまわったり、子供達のおもちゃを直したりといった取り組みが、教育の一環として採り入れられています。
作ったもので人に喜んでもらい、社会に貢献するというのは、「技術者の原点」。
こうした取り組み、ぜひ今後も長く続けて欲しいです。
【世界最高学府にも差別の影?】
■「ハーバード大のアジア系学生、広まるアジア人差別に抗議集会―米国」(レコードチャイナ)
米国ではバージニア工科大学で1月に発生した中国人留学生による殺人事件などをきっかけに、アジア系学生への非難や反感意識が拡大している。一連のアジア人差別事件を受けて、ハーバード大学の学生は学内紙で集会を呼びかけ、100人余りが集会に参加した。異なる肌の色、性別、バックボーン、年齢、環境を持つ学生が集まり、「多彩な色、ひとつのハーバード」というスローガンを掲げ、偏見や差別をなくすよう訴えた。
中国系学生の黄さんと韓国系学生の李さんは、宿舎の壁や校内ホームページ上にアジア系学生蔑視の語句や文章が並び、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」状態になってしまっているが、恨みと偏見を甘受することは出来ないと声を上げ、和やかで包容力のある共同認識を得たいと述べた。
(上記記事より)
あまり穏やかでない話題です。
ハーバード大学は、アイビー・リーグの中でも「多様性」を重視する大学だと聞いたことがありますが、そんな良き伝統も、しばしば揺らぐことがあるのでしょうか。
短期的なすれ違いに過ぎないことを願うばかりです。
そのためにも、こういった対話の取り組みが学生の間で行われることは、大事ですね。
以上、今週のニュースクリップでした。
今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。