マイスターです。
少子化などの影響により、学生募集に苦労している大学が多い昨今。
にも関わらず、人気の上昇により学生数が増え続け、2001年からの8年間で学生数が2倍になった大学がある、というのはご存じでしょうか。
【今日の大学関連ニュース】
■「テンプル大学ジャパンキャンパス学部課程の学生数、2001年比で2倍に」(大学プレスセンター)
テンプル大学ジャパンキャンパス(以下テンプルジャパン)の学生数は2004年まではほぼ横ばいまたは微増であったが、2005?2007年は二桁の増加が続き、2008年度は800人を大きく超えた(表1)。
この直接的な要因としては、2005年2月に文部科学省から外国大学日本校として第一号の指定を受けたことが挙げられる。この指定により、外国人学生の留学ビザの在留資格申請が可能になったことから、特に欧米系の留学生が増加した。
外国人学生と日本人学生の比率はほぼ半々、外国人の国籍も米国を筆頭に50カ国・地域以上と多様であり、なかでも欧米系が3分の1を占めるのが特徴である(表2)。
外国人学生数の大幅増加の間接的な要因としては、海外における日本の社会文化に対する興味が飛躍的に拡大・深化していることも挙げられよう。
かつてのフジヤマ・ゲイシャに代わり、Mangaやアニメが注目されるようになって久しいが、最近では音楽やドラマも含めたさらに幅広い日本のポップカルチャーが、驚くほど世界の若者に浸透している。
こうした「クールジャパン」に興味をもった外国人学生にとって、そのポップカルチャーを体現する世代の日本人学生と机を並べて、しかも英語(多くの場合、母国語または第一外国語)で勉強でき、さらに米国大学の学位をとれるという環境の整った大学は大きな魅力であると思われる。
(上記リリースより)
(関連記事)
■「外国大学 日本校」をご存じですか?
↑以前、本ブログでもご紹介させていただいた、「海外大学日本校」であるテンプル大学。
そのテンプル大学の学生数が、ここ数年の間に、大きく伸びているようです。
【表1】 テンプルジャパンの学部課程学生数の推移
(いずれも秋学期・カッコ内は対前年比)
2001年 425
2002年 446 (+ 4.9%)
2003年 484 (+ 8.5%)
2004年 496 (+ 2.5%)
2005年 575 (+15.9%)
2006年 678 (+17.9%)
2007年 778 (+14.8%)
2008年 850 (+ 9.3%)
【表2】 2008年秋学期における学部学生の国籍別割合
日本 52%
アメリカ・カナダ 31%
中国・台湾・韓国 5%
ヨーロッパ 3%
その他 9%
(「テンプル大学ジャパンキャンパス学部課程の学生数、2001年比で2倍に」(大学プレスセンター)より)
特に2005年以降の、15パーセント以上の増加率が目立っています。
これだけ急激に増えると、学習環境の質が保たれるのかなと思いますが、テンプル大学は「学生が授業に参加しやすい1クラス平均20名の少人数制」を打ち出していますので、この環境は維持されているのでしょう。
日本人の入学者も増えているようですが、冒頭のリリースを読む限り、欧米からの留学生が大幅に増加したことが大きいようですね。
リリースでは、2005年に文部科学省から外国大学日本校の指定を受け、外国人学生の留学ビザの在留資格申請が可能になったことが大きな要因の一つだと説明されていますが、確かに、タイミング的にはぴったり一致します。
どれだけ魅力のある大学でも、留学ビザがおりないのであれば、留学のハードルはあがります。
その障害が無くなったことで、ようやく本来の姿で学生募集ができるようになったということなのかなと思います。
逆に言えば、これまで日本は「留学ビザを出さない」という措置によって、こういった海外大学の成長を阻んでいたということでしょう。
逆に言うと、もしそれが国内の大学を保護するための政策だったのだとしたら、それはある程度有効に機能していた……と言えるのかもしれません。
そういったことを考える点で、興味深いデータです。
ところでリリースでは、Mangaやアニメのような日本のポップカルチャーに関心を持った外国人学生が、日本で学ぶという環境に魅力を感じて留学してきている、ということが紹介されています。
テンプル大学でもここ数年、こういった日本のポップカルチャーを学ぶプログラムを展開し、積極的に海外に打ち出しています。
■「テンプル大学のアニメ・マンガ夏季コース 同人誌制作実習も」(animeanime.jp)
米国ペンシルバニア州にある州立テンプル大学が、この夏に日本で行う「日本のポピュラーメディアの研究:マンガとアニメ(Studies in Japanese Popular Media: Manga and Anime)」というが5月19日よりスタートした。
(略)同大学がマンガやアニメを題材にしたサマーワークショップを開催するのは2年目である。これは、大学学部の夏学期限定コースのひとつである。
研究の目的は、日本のマンガ・アニメブームが広がる中、日本の現代文化の中におけるマンガ・アニメの存在について歴史、芸術史、人類学、社会学、文学、映像など異なる観点から考察、総合的に分析・理解するものである。
扱う内容については、キャラクターグッズとしてのハローキティのほか、「大衆文化のなかのノスタルジア」という項目に「ドラえもん、奈良美智、吉本ばなな」、「グローバル化した日本大衆文化」というテーマでは「ポケモン、キルビル、子連れ狼」などが挙げられている。
このほか、「オタク文化」として同人誌やコスプレといった項目もあり、授業の一環として学生が自分の同人誌を制作することも予定されている。
受講生はアメリカ人の学生16名が中心で、ワークショップは6週間で、毎週3日行われる。教室での授業以外にも、三鷹の森ジブリ美術館、秋葉原の東京アニメセンター、上野の「井上雄彦 最後のマンガ展」などへのフィールドトリップも予定
(上記記事より)
アメリカにあるテンプル大学の本校でも、この「Studies in Japanese Popular Media: Manga and Anime」が、海外でのSummer Programのひとつとして紹介されていました。
■「Studies in Japanese Popular Media: Manga and Anime」(Temple University International Programs)
日本校の存在が大きいのでしょう。同大のSummer Programは、日本関連のものが非常に充実しています。
↓テレビでも紹介されたようです。
■「アニメ専門チャンネル<アニマックス>でテンプル大学が紹介されました」(Temple University Japan Campus)
「日本で、日本のポップカルチャーを学びたい」と考えた外国人学生が、その目的にあった留学先を選ぼうと思ったときに一番有力な選択肢となるのは、もしかするとテンプル大学日本校だったりするのかも知れません。
日本の他の有力大学も、ここ数年の間に、日本のポップカルチャーを学ぶ学部や学科を新設し始めています。マンガやアニメ、ゲームなどを学術的に学び、クリエイターの道も目指せるカリキュラムを用意するとともに、留学生の募集にも力を入れています。
そういった大学にとっては、英語で学べ、サマープログラムなどのノウハウがあり、アメリカの学位を取得できるテンプル大学のような存在は、どこよりも手強い競合になるかもしれません。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。