おそるべし、年末。
しかも、忘年会ピークはまだこれからです。
胃腸薬、買っておこうかな…。
日曜日ですので、恒例、一週間分の教育ニュースクリップをお届けします。
今週は、「予算」という言葉をやたら見かけたように思います。
公立学校教職員の削減をめぐって、文科省VS政府の駆け引きが続きました。
■12/10「文科省・族議員と行革相・財務省、教職員数削減で対立」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20051210ur01.htm
■12/15「教員は2万3千人減に 公務員総人件費改革、文科省試算」(Asahi.com)
http://fish.miracle.ne.jp/adaken/link/educationnews.htm
■12/15「教職員削減は『自然減』…政府方針」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20051216ur02.htm
国と地方の公務員の大幅な削減方針について、中馬行政改革相や財務省は「聖域」を作らない姿勢を示しておりました。
これに従い、公立学校の教職員の数は「児童生徒の減少に伴う自然減を上回る純減の確保」を目指すとされていました。
しかしこうした流れに、文部科学省や関係議員が反発。
「少人数指導を進める必要があり、教員減はこの目的に逆行する」ということで、教職員を例外扱いとするよう強く主張します。
中馬行革相や財務省は「地方公務員を減らすには、一番人数の多い教職員に手をつけないわけにいかない」(財務省幹部)などと反論。
そりゃそうです。
結局、給食調理員や用務員ら教員以外の職員の民間委託を積極的に進め、大幅に減らすこととし、教員は自然減にとどめることで折り合ったとのことでした。
文科省の「この時代に、教員を減らすとは何事か!」という主張ももっともですが、それを言うなら、自衛官だって地方公務員だって、中央省庁の役人だって、みんな減らすわけにはいかないのですよね。
東アジアの緊張は解ける気配がないし、地方分権で自治体のスタッフは今後より高度な業務を担うことになるし。
でも国の財政は崖っぷちなのですから、どこかを削らざるを得ない。で、一番人数が多いのが学校教職員だというわけです。
そりゃ、政府から削減を迫られるのも、無理からぬ話ですよ。
ところで、「自然減を上回る純減」というのは、誰かをクビにするということでしょう。
で、文科省は、「教員をクビにするのは断固反対だが、職員ならOK」というところで決着させたわけです。
「学校で働く職員全体では、基本指針通り、自然減を上回る純減とすることが可能」ということですから、職員はその分、大胆にアウトソーシングになるのでしょう。
大筋で、こうした合理化は正しいと思います。
ただ、マイスターなどは、公立学校の教員の多忙ぶりの背景には、「何でも教員がやる」という職務分担のあいまいさがあると考えていますので、教員の数を維持するだけでは、問題が先送りにされるだけではないかと思います。
・小中高校の学校職員イノベーションには、疲弊した教育現場を変える可能性がある!?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50109670.html
↑詳細はこちらの記事で書かせていただいたのですが、本当はむしろ、教員以外のスタッフをより高度化させることが、日本の教育現場にとって必要なんじゃないでしょうか?
人材確保法の見直しについても報道がありました。
■12/17「公立小中の先生、給与優遇見直しへ 人材確保法、廃止も」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200512170232.html
-経済財政諮問会議が11月、同法について「廃止も含めた見直しを検討する」と提言。24日の閣議決定では「廃止を含めた見直しを行う」と踏み込み、「能力主義」(中馬行革相)などに基づく柔軟な給与制度に改める方向で検討に入る。政府の行革推進事務局は「新制度で、おのずと総人件費は抑制される」(幹部)と効果を期待する。
文科省が見直しに同意した背景には、時間外手当など勤務実態をより給与に反映する制度に改める狙いもある。同省は教職員の勤務実態調査や諸外国との比較も検討していく考えだ。 –
諸外国との比較も検討していくとあります。
↓本ブログで以前、諸外国との比較を何度かしておりますので、改めてデータをご紹介しておきます。
・教育に対する投資の内容が、国によってこんなに違う!
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50081836.html
日本の教員は、残念ながら「教育より雑務を多くこなす学校労働者」という位置づけで設計されているのが、OECD各国との、労働時間や給与の比較でよくわかります。
こうした現状に一番不満を持っているのが、他ならぬ、現場の教員の皆様ではないでしょうか。
人材確保法が見直しまたは廃止されるという報道について、現職教員の方々の間には批判もあると思いますが、これはむしろ、教員の業務をハッキリさせるチャンスと言えるかも知れませんよ。
前述した通り、高度化した職員が学校運営の業務を中心的に担い、ボランティア(リタイアした教員や企業出身者なども含む)や学生インターンが教員のサポートをし、教員は授業を中心とする教育に専念するというのが、マイスターが考える最も理想的なビジョンなのですが、いかがでしょうか?
学校をとりまく環境は変わってきていますし、学校に求められる役割も増えています。
何もかもを教員が担当するという、その枠組みを、そろそろ見直さなければならないのではないかなと思います。
人材確保法の見直しは、そうした議論のきっかけにできるのではないでしょうか。
子供をまもるための制度が整備されてます。
■「文科省がスクールガード拡充へ 来年度予算、大幅増要求」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/1218/TKY200512170297.html
こちらはまさに、教員がすべての役割を担いきれないけど、緊急に対応が迫られているという問題の例でしょう。
(1)学校内外を巡回して子どもを見守る安全ボランティア(スクールガード)の養成・研修
(2)そのスクールガードの指導役として元警察官らを地域学校安全指導員(スクールガード・リーダー)に委嘱
(3)学校の安全のための先導的な取り組みを進めるモデル地域を指定して財政支援
という事業です。
約900人のスクールガード・リーダーが委嘱され、約9000の小学校がスクールガードによる巡回対象になっているとのこと。
ボランティアを養成・組織する人間を計画的に配置し、最小のコストで最大の社会価値を生み出すというのは、米国のNPOなどに見られる手法です。
不幸な事件をきっかけに生まれた取り組みではありますが、こうした試みが、日本の学校組織を変えていくかも知れません。
授業でも、ボランティアの力を取り入れるところが出始めています。
■「小中一貫支える教育ボランティア」(現代教育新聞)
http://www.gks.co.jp/2005/sogo/practice/05121201.html
こちらは、授業でボランティアを活用する例です。
企業の社員をボランティアとして派遣している、IBMの事例が紹介されています。
企業は社会に存在する一市民として、社会に対して貢献する責任があるというのが、現代の企業経営の考え方の一つです。
これをCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)と言います。
マイスターは企業の広報企画に携わっていたのでよく知っているのですが、日本の大企業の多くがCSR報告書などをwebサイトで公開しています。
経営学部卒の方や、大企業にお勤めの方は、こうした概念を割とご存じです。
教育現場の方にはもしかするとあまり浸透していないかも知れませんが、遠慮は要りませんので、ぜひ企業の力を活用してください。
盲・ろう・養護教育のシステムが一本化される動きです。
■「学習障害児らを通級指導対象に 中教審が答申」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200512120093.html
-現行の盲・ろう・養護学校については、児童生徒の半数近くが重複障害学級に在籍する実態を踏まえ、障害種別を超えた「特別支援学校」に転換することが適当だと提言。地域の小中学校を支援するセンター的な機能を持たせる。ただ、特定の障害に対応する学校を設けることも可能だとした。教員免許状についても、障害種別ごとに設けられているものをLD、ADHDなども含めた「特別支援学校教員免許状」に一本化する。
さらに、現行の制度では、一般の教員免許状だけでも盲・ろう・養護学校の教員になれるとの経過措置が取られていたが、高い専門性を備える必要があることから、この経過措置は一定期間の後に廃止し、「特別支援学校教員免許状」の保有が義務づけられる。-(上記記事より)
とのこと。
盲・ろう・養護学校が一本化するというのは、以前のニュースクリップでご紹介しましたが、免許も「特別支援学校教員免許状」に一本化されるのですね。
で、「特別支援学校教員免許状」を持っていないと、こうした学校の教員にはなれなくなります。
競争原理を働かせる制度のはずが…
■「公取委、“生徒数談合”に警告」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20051216ur04.htm
■「公取委、定員削減申し合わせで宮城の私立学校団体に警告」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20051215AT1G1504D15122005.html
「宮城県私立中学高等学校連合会」が起こした、独占禁止法違反。
「合意文書には『1校も脱落しないように』という趣旨の内容が記されていたという。」
とあります。
れっきとした不正事件ですから、よい子は真似してはいけません。
京都女児刺殺事件、大手塾の対策です。
■「密室化防止、大手塾の対策 京都女児刺殺事件」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200512100224.html
■「安全対策の想定外 塾関係者に衝撃 京都・宇治女児殺害」(Asahi.com gooニュース掲載)
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/shakai/20051210/K2005121000171.html
■「塾で高まる防犯意識 入退室時 保護者にメール」(神戸新聞 gooニュース掲載)
http://news.goo.ne.jp/news/kobe/chiiki/20051215/20051215011.html?C=S
塾の講師として働く大学生が、勤務中に生徒を刺殺するという痛ましい事件が起きました。
各塾とも、対応策を急いでいます。
学校の教師がプロであるのに対し、「塾」はセミプロやアマチュアが子供に接することも多いはず。
考えてみれば、起こりえる話だったのかも知れませんが…しかし、いくらなんでも想定外のことだったと思います。
ちなみに、厳しく鍛えた正社員の「プロ」だけを講師にする塾というのも、あります。
これは、抜本的な対策の一つかも知れません。
■「競う教師力(1):研修授業はミラー越し」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20051213us41.htm
■「競う教師力(2):教壇への道 難関25倍」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20051214us41.htm
ここまで徹底すると、もはや、学校の教員以上と感じる方もいるでしょう。
事件が起こる一方で、教育面で塾を信頼する家庭は増えています。
■「小学生の塾費用16%増加 学力低下の不安から」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200512150331.html
ただし事件の結果、この数字が若干変わるかも知れません。
変わらないかも知れません。
以上、今週のニュースクリップでした。
今週は、数がいつもより多かったです…教育に関して、学校に関して、捨て置けない報道がいっぱいあった一週間でした。
今週も、一週間おつきあいいただき、ありがとうございました。
来週も、どうぞよろしくお願いいたします。マイスターでした。