マイスターです。
(過去の関連記事)
・ニュースクリップ[-8/27] 「医学部定員を一時増員」ほか(2006年08月27日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50237525.html
↑以前のニュースクリップでもご紹介しましたが、地方の医師不足が問題になっています。それに対応する大学の動きについて、またいくつかご紹介します。
■「山形大医学部:退職医らを地域の一般医に 教育センターを開設--来月 /山形」(MSN毎日インタラクティブ)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/wadai/archive/news/2007/03/20070328ddlk06040449000c.html
山形大医学部は、退職した専門医や研究を中心にしてきた医師が地域の医療機関で一般医として勤務するための研修機関「総合医学教育センター」を4月から開設する。当初は08年4月に開設する計画だったが、開設を知った専門医ら3人が研修を希望したことから、前倒しで開講する。
(上記記事より)
一般医が足りていない、というわけで、山形ではこのような取り組みを行っています。医師として地元に残ってくれる若者が少ないのなら、既に地元に根を下ろしている人材を活用しようという発想ですね。
以前にもご紹介しましたが、いよいよ開設のはこびとなったようです。
■「総合医学教育センター:リフレッシュ医学教育」(山形大学医学部)
http://www.id.yamagata-u.ac.jp/isen/refresh.htm
日本社会の年齢構成から考えると、こういった試みは今後、全国で必要になってくるように思います。
■「旭川医大:推薦入学に地域枠 医師不足の道北、道東」(MSN毎日インタラクティブ)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/wadai/archive/news/2007/03/20070327ddj041040003000c.html
旭川医大(八竹直学長)は08年度入試から医師不足が深刻化する道北、道東などの出身者を対象にした地域枠推薦入学制度を導入すると発表した。募集枠は医学部医学科(定員100人)の5人。地域枠の入学者には卒業後、同大が指定する道北、道東などの医療機関で2年間研修、勤務してもらうのが条件で、入学の際、地域医療に貢献する確約書を提出させる。
(略)研修後の勤務地について、同課は「こちらから指定することはできないが、研修した地域で引き続き勤務してくれるものと期待している」と話している。
(上記記事より)
そして、最近流行している「地域枠」を新たに導入するのは旭川。
「地域医療に貢献する確約書」を入学時に提出させるとのことですが、この通り、研修後の本人の進路までは指摘できません。従来よりは地元志向の学生を集められるかも知れませんが、最終的にどの程度の成果を上げるかは未知数です。
地域枠推薦のやり方については、以前ご紹介した↓島根大学の取り組みが非常にユニークです。ご興味のある方、よろしければこちらもご参照ください。
(過去の関連記事)
・社会からの期待」を伝える、島根大学医学部の地域枠推薦入試(2006年12月22日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50274520.html
■「『離島医』に奨学金 県医師確保」(琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-22491-storytopic-3.html
最終報告では、2007年度に県が予算化したドクターバンク事業や奨学金制度などを当面の方策とした。さらに中長期的な方策として、大学医学部の地域(離島)枠の設置、県立病院の過重労働解消のための人材育成と助産師や技師などの専門職の活用、女性医師の再就業支援など11項目を掲げた。
医師不足などの解決に向けて複数の委員が、県立病院と琉球大学医学部、民間病院、市町村が連携、協力して各方策を実行する必要性を指摘した。
(上記記事より)
沖縄では、「離島医」をいかに確保するかということが課題になっています。やはり医学部の地域枠導入や、奨学金の充実が検討されているようです。
↓奨学金での学生集めについては、ニュースクリップでいくつかの話題をご紹介しております。財源の確保等、難しい面もあるようです。
(過去の関連記事)
・ニュースクリップ[-2/11]「佑ちゃん逆効果で早大教育学部志望者減」ほか(千葉県が破格の奨学金創設へ 私大医学生対象、3200万円)(2007年02月11日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50289125.html
・ニュースクリップ[-2/18]「立命大、東京に教育拠点 4月から、京都学発信へ」ほか(新たな医学部奨学金制度に県反発)(2007年02月18日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50291061.html
■「大学頼みの地域医療に限界 福山市民病院産婦人科、来月から休診」(中国新聞)
http://www.chugoku-np.co.jp/Health/An200703190329.html
……産婦人科の休診は、二人の医師を送る岡山大の「派遣中止」決定でもたらされた。その背景には大学病院の産婦人科医師不足がある。厚生労働省の調べでは、〇四年の産婦人科医師は約一万人で十年前から千人近く減った。さらに大都市圏に若手が流れ、地方の大学病院の多くは所属医師不足に頭を抱える。
岡山大病院産科婦人科も所属医師が十年前の約半数の二十二人に激減。「限られた人員でしっかりした医療態勢を維持するには、医師を重点配置する病院の『集約』は避けられない」と同科の平松祐司教授は説明する。
岡山大は、市民病院の二人を同じ福山市の中国中央病院(御幸町)に移す決定を下した。医師は福山地域からは離れない形となる。一方で、市民病院の救急機能は当面、医師五人を派遣している国立病院機構福山医療センター(沖野上町)に担ってもらう考えでいる。
それでも福山市や市内の医療関係者には岡山大への不満もくすぶる。「急患を扱う市民病院は最優先のはずなのに…」。しかし、岡山大は三年前から、福山市民病院、中国中央病院、福山医療センターなどに対し、医師不足への対応を求めていた。なのに経営母体の枠を超えた協議はほとんどなかった。市や市医師会は十九日、産科医療の初の官民会議をようやく開く。
市民病院の産婦人科休診は、地域の医療態勢を大学病院の人事に頼ってきたシステムの限界も浮き彫りにした。地方の自治体と医師会、病院は、地域で医師を育て、その配置と拠点の整備を自ら考えていかなければならない段階に差し掛かっている。
(上記記事より)
このように、今進められている対策の一つが、「集約化」です。これまで新人医師を県内に分散的に配置してきたところを、特定の病院に集中させることで、医療を手厚くするという主旨です。
メリットはあるのでしょうが、ただ一方では、上記のような不満や問題も産んでいます。日本の医療のあり方そのものを変えていこうという話なのでしょうから、様々なところで軋轢も起きるでしょう。
(過去の関連記事)
・ニュースクリップ[-12/10]「本県で働く気なく弘大医入学6割」ほか(2006年12月10日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50271181.html
・ニュースクリップ[-9/17] 「『引きこもり』の相談など、大学の学生支援に補助金」ほか(弘前大医学部にホタテ・メロン、自治体病院が贈答攻勢)(2006年09月17日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50244795.html
ただ、当の医学部でも、医師が足りていなかったりします。
「大学病院も産科医不足 研究・がん治療瀬戸際 本社調査」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0401/TKY200704010221.html
子宮がんなどの治療も縮小し、研究も思うようにできない――。朝日新聞が全国80大学の産婦人科医局に実施した調査で、大学病院でも医師不足が深刻になっている実態があきらかになった。夜間の出産への対応に加え、トラブルがあればすぐに訴訟になるといった理由から敬遠傾向にある中、地域の病院に派遣していた医師を引き揚げても補えず、5年間で医師が半減した大学も多い。高度医療と人材育成、治療法の研究を担う大学病院の産婦人科が危機に直面している。
(上記記事より)
大学病院でも足りていないのに、地域に十分な医師を送り出せるのか。事態は本当に深刻なのですね。
医師の配置については、基本的に大学の医学部が決定権を持っておりましたが、その点についても見直しが求められているのかも知れません。
■「釧路赤十字が医師不足で集約化」(札幌テレビ放送)
http://www.stv.ne.jp/news/item/20070402115141/
赤十字病院には、これまで北大から6人の産婦人科医が派遣されていましたが、医師不足解消の為に北大と旭川医大が協議して、「集約化」に踏み切りました。
医師の集約化は、国や北海道が進めていますが、2つの大学の医師が一緒に勤務するのは初めてのケースだということです。
(上記記事より。強調部分はマイスターによる)
この記事からわかるように、複数の大学間で協力して医師の配置を考えるという取り組みが、現時点ではあまりなされていないようです。
今後は、医学部同士で連携することも、これまで以上に求められてくるように思います。柔軟にまいりましょう。
以上、マイスターでした。