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さて、今週も恒例、日曜日のニュースクリップです。
文部科学省が、工事の7割をOB天下り先企業に発注させていました……。
■「文科省発注工事、7割をOB受け入れ企業が受注」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060511i306.htm
■「文科省所管法人の工事、天下り先が8割受注・共産議員指摘」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20060511AT1G1101411052006.html
■「文科省OB企業が7割受注/国立大など発注の管工事」(四国新聞社)
http://www.shikoku-np.co.jp/news/kyodonews.aspx?id=20060511000204
■「文科省 天下り企業 OB営業で受注増 社長と連名、あいさつ状」(しんぶん赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-05-12/2006051215_01_0.html
02―05年度に国立大学や独立行政法人が発注した工事425件のうち、OBの天下りを受け入れた企業が受注したのは290件。契約金額は約1213億円で、契約金額総額の81.9%に達した。(NIKKEI NET記事より)
過去3年間は受注実績のなかった企業が、大学幹部OBを05年度に受け入れた直後、OBが在籍した大学の工事を落札したケースもあったという。(読売オンライン記事より)
この4年間に国立大などが発注した管工事は約1600件あり契約総額は約1700億円。このうち天下り先企業が約400件、計約1200億円と約7割を受注、1億円を超える随意契約では9割以上を請け負っていた。(四国新聞記事より)
文科省はOBの天下りについて、「見識や経験をかい適材適所に」などと正当化しています。実態は、企業の業績アップのために天下り企業が営業力を発揮しているのです。
(略)
弘前大学(青森県)の元施設部長が〇五年六月一日、三晃空調(本社・大阪市)に技術部長として天下りました。文科省のホームページで調べても、過去三年半にわたり同社は同大学の工事を受注していませんでした。ところが、天下りを受け入れた二カ月後には二億八千万円の設備工事を受注。入札参加企業はすべて「櫟の会」会員のいる企業で、予定価格に占める落札額の割合は98・1%と高率で、談合を疑わせるものでした。(しんぶん赤旗記事より)
記事によって数字の記述に若干のズレがありますが、各紙とも、共産党議員による指摘がネタ元のようですね。各紙の記事によると、文科省OBの天下りを受け入れている設備メーカー各社は、「櫟(くぬぎ)の会」という組織を構成しており、そこが、本省と不透明な関係を築いている疑惑があるとのことです。
学校の教職員が何か事件を起こした時には、メディアは通常より厳しく糾弾しますが、それは教育事業に関わる人間には、非常に重い社会的責任が課せられているからです。教員は聖職者だと言われますが、その聖職という言葉には、ただ日々の業務をこなすだけでなく、社会的、道義的な責任を常に問われているという意味が込められています。
しかし残念ながら文部科学省は、教育に携わる人間である以前に、ニッポンの官僚集団として機能しているようです。
各教科書会社は、公民の教科書に、
「天下りは、官僚の見識や経験を適材適所に配する方法として文部科学省に推奨されており、その企業が本省から工事を集中的に受注することは自然です」
という記述を試しに入れてみてはいかがでしょうか。
それで審査から落ちることは、スジから言えば、ないはずですからね。
(もちろん実際には、こんな教育に悪いことは教科書で推奨しちゃダメです。学校では、大人になっていい大学を出てエラくなっても、絶対にこういうことは真似しないように教えてください)
教科書の無償配布をめぐって議論が行われています。
■「政府・与党に小・中教科書貸与論が浮上、文科省は反発」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060508ur01.htm
財政をスリム化するという観点から行くと、こういった意見も出るのでしょう。
ただ、個人的には教科書は貸与じゃなく、もらえた方がいいと思います。「教科書の重要なところに赤線を引く」といった指導ができなくなるなど教育現場に与える影響が大きいですし、学び手である子供達にとってもデメリットしかありません。
あとこれはオマケですが、貸与制になると正岡子規の目からビームを出したり、はしっこにパラパラ漫画を書いたりできなくなるのも、惜しまれるところです(すみません全国の教員の皆様)。
とは言え、財政の問題も無視できないところ。教育に関する新たな支出については、「教育税」のような目的税にしてしまったら、社会からの理解は相当違ってくると思うのですが、どうなのでしょうかね。
※冒頭の記事の後だと、どうしても「教科書会社にも文科省のOBがいるんじゃないか?」という考えが頭をよぎってしまうのが、マイスターとしても非常に残念なところです。
全国の大学で、学生さんの相談が増えています。
■「学生の相談件数が増加傾向、大学が支援を強化」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT3K06007%2006052006&g=K1&d=20060506
悩みを抱える大学生に解決に向け援助する学生相談の件数が、3分の2近くの4年制大学で増加傾向にあることが6日、日本学生支援機構の調査で分かった。相談内容は家族・友人などとの「対人関係」が最も多く、約6割を占める。文部科学省は「大学側の相談態勢の充実に加え、人間関係が苦手な学生が増えたことが背景にあるのでは」と話している。(上記記事より)
多くの大学で、「対人関係」に悩む学生さんが増えているようです。おそらく、今後も増え続けていくのではないかとマイスターは思います。学生さんのメンタルケアに対応する専門家が、今後、より必要になってくるのでしょうね。
MITオープンコースウェアで公開された内容を巡って議論が起きています。
■「反中画像、米MITがサイト一時閉鎖」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200605080163.html
■「マサチューセッツ工科大、サイトに反中画像を掲示」(中国情報局NEWS)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0428&f=national_0428_004.shtml
米国の名門マサチューセッツ工科大学(MIT)の公開講座のウェブサイトに、著名な日本研究者ジョン・ダワー教授らが掲載した日清戦争の版画をめぐって、中国人学生らが反発し、サイトが一時閉鎖される騒ぎになった。日本兵が中国兵を斬首している画像などに、「中国人の感情を傷つける」などと抗議が殺到したという。MIT側は「説明不足だった」と認めてサイトを改善する方針だが、学内では「歴史問題をめぐる反日感情の悪用だ」という反論も出ている。
MIT(マサチューセッツ工科大学)が、オンラインで授業を公開する「オープンコースウェア」というプロジェクトを世界に先駆けて進めていることは、大学関係者にはよく知られていると思います。そのオープンコースウェアの目玉として企画されたこのプロジェクトで、このような議論が起きているわけですね。
この企画の内容に対する意見はそれぞれでしょうが、知識や情報を世界に公開するということは、ときにこのような事態につながるのだということを、改めて知った気がします。
今後「すべての授業をオンライン公開」という大学が日本でも出てくるかもしれません。その時には、こうした事態に大学としてどのように対応するかも、考えておいた方が良さそうです。
■「Visualizing Cultures」(MIT)
http://www.blackshipsandsamurai.com/spotlight/vc_spotlight.html
※↑今回報道されている、MITのプロジェクトサイト
■Statements on Visualizing Cultures
http://web.mit.edu/newsoffice/2006/visualizing-cultures.html
↑今回の世間の動きに対する、MITおよびプロジェクト担当者達からの声明
大学で生まれた知識を、より産業界で活かせるようにする試みです。
■「国立大のベンチャー株取得に手引書 文科省」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200605130390.html
税金で運営される国立大学が株を持つと財政に穴があくリスクがあるため、好ましくないとされてきた。一方で、収入源がなく、多くの研究資金がいるベンチャー企業にとって、大学から特許の譲渡を受けたり、実施権を持ったりするために、現金を支払うのは大きな負担になる。
私立大では大学発ベンチャーに出資している先例があることから、政府の知的財産戦略本部は昨年、特許などの知的財産を提供する場合に限り、その対価として株を取得できるよう法解釈を明確化。昨年3月、文科省が解禁を通知した。同省技術移転推進室は「大学にも上場に伴う売却益が狙えるなど利点がある」。 (Asahi.com記事より)
…とこのように、「大学は特許の実施権をベンチャーに与え、その対価として株やストックオプションを得る」という手法は、大学の技術を使った事業を事業化する上でなかなかメリットが多いのですね。しかし株式の扱いに不慣れな大学関係者はこうした手法を積極的に活用しようとしていませんでした。そこで文科省が、このような手引き書を作ったというわけですね。
個人的にはこの手引き書自体よりも、こうした報道をうけて各証券会社が大学対応チームを結成し、大学営業を強化するんだろうなということの方に興味があります。
もう一件。
■「学生の発明特許料の減免を決定」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060512ur01.htm
減免の対象は、特許になるかどうかを審査するための審査請求料と特許取得後1年目から3年目までに払う特許料。1件あたり17万2600円の審査請求料と年2800円の特許料が半額になるか、免除される。(読売オンライン記事より)
この通り、学生にとってはバカにならない金額。これが免除されるのであれば、申請も確かに増えるのではないでしょうか。これなら指導教員も、優れた学生の取り組みに対して特許の審査を積極的に勧めることができそう。
学校のための賠償責任保険、ネット書き込みへの対応にも適用されます。
■「ネット掲示板に脅迫!、学校へ最大500万補償」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060505ur02.htm
「『学校総合賠償責任保険』の改定について -子どもを犯罪被害から守るための対応費用について補償を拡大-」(損保ジャパン)
http://www.sompo-japan.co.jp/news/20060511-00/200605111648.html
未成年者を対象にした殺人事件など重大犯罪が発生したり、ネット掲示板に児童・生徒の殺害予告や爆破予告などが書き込まれたりした場合、通学路への警備員の配置や防犯ブザーの配布など学校が実施する防犯対策にかかる費用に対し、最大500万円の保険金を支払う。(上記記事より)
すごい保険ができたものです。こういった保険商品が成り立ってしまう時代であることは残念ですが、確かに加入する学校は多そう。学校関係者に望まれていた商品かもしれません。
なおこの保険は、私立大学、公立大学と、その附属校が対象。公立小中学校などは保険に加入できません。というのも、この「学校総合賠償責任保険」、もともと入試ミスや個人情報漏えいなどを想定した、大学向けの保険なんです↓。
■「『学校総合賠償責任保険』の発売について -学校におけるさまざまな賠償リスクを包括的にカバーします-」
http://www.sompo-japan.co.jp/news/20050711-01/200507111619.html
保険会社が大学向けの商品を充実させてくれるのはありがたいのですが、それってつまり、大学経営にリスク要因が多いってことですよね……なんだか複雑な気分。
以上、今週のニュースクリップでした。
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「うちの大学でこんな取り組みを始めました!」といった宣伝でも結構です。世の教育関係者様にとっても興味深い内容である場合は、ぜひ本ブログでもご紹介させていただきたいと思います。(すみませんが、必ず掲載するという保証はできかねますので、あしからずご了承ください)
「○○大学さんのこの取り組みはとっても面白い!」といった「他薦」でも結構です。面白い情報、お待ち申し上げております。
また、
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「なんだか大学のこういうところってヘン!」
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なるべくいただいたメールに対してはお返事を返せるようにがんばりたい、と思います。
以上、今週も一週間、本ブログをごひいきにしていただき、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願い致します。
マイスターでした。