日本初のカレッジリンク型シニア住宅、分譲開始

マイスターです。

関西大学文学部と民間企業とによって、日本初のカレッジリンク型シニア住宅が誕生すると報道されたのが、今から2年ほど前のこと。

■「カレッジリンク型シニア住宅への教育プログラム提供について」(関西大学文学部)
■「カレッジリンク型シニア住宅/関西大学・株式会社アンクラージュとの共同運営」(社会開発教育センター)

その構想は、↓こちらでもご紹介しました。

■シニアと大学(3) 日本初、カレッジリンク型シニア住宅

業界で注目されていたこのカレッジリンク型シニア住宅が、ついに完成し、分譲販売を開始したとのことです。

【今日の大学関連ニュース】
■「大学で学べる高齢者住宅 全国初、神戸市に完成」(47NEWS)

関西大キャンパスで学生に交じって学んだり、出張講義を受けたりできる高齢者向け分譲マンション「クラブ・アンクラージュ御影」が神戸市灘区に完成し、内覧会が3日開かれた。運営、販売する「アンクラージュ」(兵庫県尼崎市)などによると、大学と連携した「カレッジリンク型」のシニア住宅は全国で初めてという。
居住者は、高校卒と同等の資格があれば関大文学部の聴講生として1学期、1科目につき2万8000円で履修できる。社会人向けの試験に受かれば、正規学生にもなれる。
関大キャンパス(大阪府吹田市)との間はシャトルバスで送迎してもらい、図書館や食堂も自由に利用できる。月に1、2回は、マンションで出張講義も受けられる。
マンションは敷地面積約2万2000平方メートルで、8月1日に入居開始する。1-3LDKが計218戸ある鉄筋コンクリート造り3階建て。第1期販売(59戸)の価格は4500万-1億2930万円だ。
(上記記事より)

そんなわけで満を持して登場した、カレッジリンク型シニア住宅、「クラブ・アンクラージュ御影」。

物件に関する詳細は、↓こちらのサイトに掲載されていますので、ご興味のある方はどうぞ。

■クラブ・アンクラージュ御影

内装やサービス、食事などもすごいです……が、やはり気になるのは、大学との連携。

■「特長4 日本初の『カレッジリンク型』」(クラブ・アンクラージュ御影)

【千里山キャンパスで学生と学べるオンキャンパス・プログラム】
所定の要件を満たせば、関西大学の正規学生として、他の学生と一緒に講義を受けられ、図書館等の学内施設もフルに利用できます。
【御影に居ながらにして学べるオンコミュニティ・プログラム】
「関大エイジング・ラボ」が主催する研究ゼミや著名人との勉強会など、 住宅に居ながらにして参加できます。また、住宅に付帯する広い庭園や緑地でもゼミや懇談を楽しめます。
(上記ページより)

以前もご紹介しましたが、関西大学文学部のサイトでは、↓こんな風に説明されています。

【1.オンキャンパス・プログラム】
(1) 文学部または大学院文学研究科の科目等履修生または聴講生としての受け入れ
アンクラージュ御影の入居者を対象に、科目等履修生または聴講生として開講クラスに希望者を受け入れる。
(2) 文学部または大学院文学研究科の社会人学生としての受け入れ
アンクラージュ御影の入居者を対象に、試験、面接、研究計画書の審査等の条件で、社会人学生(あるいは3年次からの社会人編入学生)として希望者を受け入れる。
(3) 各種の公開講座、講演会など大学主催行事への参加
アンクラージュ御影の入居者に、大学が提供する各種の講座、講演、行事の案内と自由な参加を認める。
【2.オンコミュニティ・プログラム】
(1) アンクラージュ御影での講座等の実施
アンクラージュ御影の入居者を対象に、当該施設内で講座等を提供し、講師の派遣や指導者の斡旋を行う。
【3.プレコース】
(1) プレコースの実施
文学部と社会開発研究センターが協力して、アンクラージュ御影の入居予定者を対象に、2007年度に千里山キャンパスで10程度の講座を「プレコース」として実施する。
プレスリリース「関西大学文学部と社会開発研究センターが『カレッジリンク型シニア住宅』で実施する教育プログラム」より)
(上記記事より)

このオンキャンパス・プログラム、オンコミュニティ・プログラムこそが、「カレッジリンク型」ならではの特徴です。

以前にもお伝えしたとおり、こうした学びが、シニア達にとって大きな生きがい、やりがいになるのは、容易に想像できます。

クラブ・アンクラージュ御影のサイトには、さらに↓こんな説明も。

【学びの楽しさこそが、究極の介護予防】
カレッジリンク型シニア住宅の入居者は、他の高齢者施設の入居者に比べて要介護状態になる割合も極めて低くなっています。この理由は、若い学生と交流し、切磋琢磨することが日々の生活にリズムと張りを与え、脳機能や心身に良い影響を及ぼすためと考えられています。また、入居者は学習者としてだけでなく、若い学生の人生の相談役として頼られることも健康的な加齢に寄与していると考えられています。学生と入居者との双方に多くのメリットのある「クラブ・アンクラージュ御影」の試みは、若い世代と隔たりがちな従来の高齢者施設が有する既成概念を打ち崩すものとなります。
株式会社アンクラージュと東北大学は「カレッジリンク型シニア住宅入居者の脳機能改善に関する研究」の学術指導契約を 2008年2月に締結しました。同研究では、東北大学加齢医学研究所教授・川島隆太先生の指導により、研究成果を目指します。
クラブ・アンクラージュ御影より)

若い学生達との学びが脳機能や心身に良い影響を及ぼし、要介護状態になる割合を減らす、というのは、この事業分野で先行するアメリカなどでのデータによるものでしょう。

日本でも、同様の効果が得られるかどうかは、教育プログラムを提供する関西大学にかかっているところかもしれませんん。

そして、さりげなく「脳トレ」の川島隆太教授がこんなところにも登場。
カレッジリンク型シニア住宅の入居者に、学びがどのような影響を与えるのか、ちゃんと学術的に検証しようということのようです。これは、本気ですね。
学術的に説得力のあるデータが得られたら、この事業はさらに拡大していくでしょう。

○関西大学の周辺に第2第3の施設を建設し、同大学にアクティブ・シニアをいっぱい送り込む

○別の地域で、今度は他の大学と手を組んで新たなカレッジリンク型シニア住宅を建設する

……なんて展開が考えられます。

後者の場合、関西大学だけではなくて、各地域でパートナー大学を探す必要が出てきますね。
事業を行う財団法人社会開発研究センターの方では、既にマーケティングリサーチを行い、パートナーとなりうる大学をリストアップしているんじゃないかなぁと、なんてマイスターは想像しますが、さて、いかがでしょうか。

ちなみに今回、教育プログラムを主に提供するのは、関西大学文学部。
シニアが関心を抱く学問として、今後、人文科学系の学部に注目が集まるかも知れません。

冒頭の記事によれば第1期販売(59戸)の価格は4500万-1億2930万円だとのこと。
決して安くはありませんが……、「学びながら過ごすリタイア後の暮らし」の価格として、市場はこの値段をどう評価するでしょうか。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。