広がっていく、事件の衝撃

マイスターです。

昨日の朝、ホテルの部屋に届けられた新聞『サンフランシスコ・クロニクル』のトップの見出しは、「A NATION ASKS WHY」でした。
おそらく全米各紙が、このようにバージニア工科大学の事件を報じたのでしょう。

そして、今朝の見出しは、「SHOOTER’S TWISTED VIDEO BRINGS PAIN AND OUTRAGE」でした。
既に日本でも報じられているようですが、今回の事件の容疑者が、2回にわたる犯行の間に、事件に関する声明映像や自分の写真をアメリカ・NBCテレビに対して郵送していたことがわかったのです。
このように、事件後さらにショッキングな報道が続き、アメリカで暮らすすべての方々に、大きな衝撃を与えています。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「米銃乱射容疑者 TV局に“犯行声明”郵送」(日テレNEWS24)
http://www.news24.jp/82159.html

■「Gunman’s package to NBC News examined」(MSNBC.com)
http://www.msnbc.msn.com/id/18169776/
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バージニア工科大学のwebサイトトップページは上記のように、喪に服しているかのようなデザインに差し替えられています。

■Virginia Tech In Memoriam
http://www.vt.edu/

事件に関する情報が更新され、右には、現在身元が明らかになった被害者達の名前が「We Remember」の文字とともに並んでいます。

(「ALEXA」で同サイトのアクセス状況を確認すると、ページビューが跳ね上がっているのがわかります。おそらく世界中からアクセスが殺到しているのでしょう。一時期は、サーバーにアクセスできない状況も起きていました)
http://www.alexa.com/data/details/traffic_details?url=http%3A%2F%2Fwww.vt.edu%2F

そして事件後、様々な立場の方が、様々な行動を起こしています。

■「工科大の野球帽かぶりプレー」(デイリースポーツonline)
http://www.daily.co.jp/mlb/2007/04/18/0000305973.shtml

米大リーグは、バージニア工科大乱射事件の犠牲者を悼み、試合の行われた各球場で半旗を掲げたり、黙とうした。

バージニア州に近いワシントンが本拠地のナショナルズは、同工科大のイニシャル「VT」マークが入った野球帽をかぶってプレーした。
(上記記事より)

このように、皆で悲しみを共有するムードが、国中で起きているようです。

↓いくつかの大学では、事件に関して学長が声明を出しています。

■「Statement Regarding Virginia Tech Tragedy by Stanford President John Hennessy」(stanford university)
http://www.stanford.edu/dept/president/speeches/statement_vatech.html

そして昨日も書きましたとおり、やはり韓国の関係者が受けた衝撃は特に大きかったようです。

■「韓国、対米関係悪化を懸念 米大学乱射」(SankeiWEB)
http://www.sankei.co.jp/kokusai/korea/070419/kra070419000.htm

■「米・銃乱射事件 韓国系住民が遺族支援基金設立」(アメーバニュース)
http://news.ameba.jp/2007/04/4318.php

↓韓国外相から国連事務総長になった潘氏も、コメントを出しています。

■「『断固として非難』潘事務総長、バージニア工科大銃乱射で」(SankeiWEB)
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070418/usa070418003.htm

事件によって、特定の国籍や地域の人々が差別や偏見の目で見られないことを、マイスターも切に願います。

↓なお今回の事件では、事件発覚当初、一部のメディアが「犯人は中国人留学生」という誤報を流しました。アジア系というだけでどうして中国人と報じたのか等、メディアの報道姿勢に対する批判も起きているようです。

■「米大学銃乱射事件:ネット反発『人種差別では?』」(中国情報局)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2007&d=0418&f=national_0418_010.shtml

さらに残念なことに、この事件が発生した後、↓こんな現象も起きているようです。

■「米バージニア工科大の事件に関連したフィッシング詐欺に注意」(ITPro)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070418/268625/

米GoDaddyといったドメイン登録業者の情報によれば、今回の事件を連想させるようなドメイン名の登録数が急増しているという。例えば、以下のようなドメイン名が登録されている。

vatechshooting.com
vtshooting.com
vatechmassacre.net
vtmassacre.org
virginiatechrampage.com
vtrampage.com
virginiatechmurders.net
vatechmurders.com
vtmurders.com

SANS Instituteでは、事件の被害者やその友人、家族などを支援することを目的に、こういったドメイン名を善意で取得しているケースは間違いなくあるものの、一方では、寄付などと称して金銭をだまし取るフィッシング詐欺サイトを作るために取得しているケースもあるとしている。
(上記記事より)

被害者達のために寄付しようという人々の想いにつけ込むような行いは、個人的には容認しがたいです。皆様も、怪しいケースに引っかからないようお気をつけください。

さて、事件からしばらく経って、情報がいくつか新たに出てきました。

■「爆発物騒ぎ、4月相次ぐ 米バージニア工科大」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0417/TKY200704170144.html

■「1年半前に講義で異常行動 米銃乱射でチョ容疑者」(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/20070418/20070418_017.shtml

■「自室に学生なじるメモ チョ容疑者 精神的に不安定」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007041802009743.html

■「米大学乱射 ストーカーで過去に聴取 自殺願望で治療も」(SankeiWEB)
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070419/usa070419001.htm

上記のように、事件を予測しうるだけの兆候が、実はいくつもあったというのです。
実際、容疑者の学生について心配した教員が、大学当局に連絡を入れるということもあったようです。
にも関わらず大学が適切な対応をしきれなかったのではないか……という批判が起きているようです。

専門家はどう考えているのでしょうか。
アメリカの高等教育専門紙「The Chronicle of Higher Education」ではさっそく、「DARK DAY IN BLACKSBURG」という特集を組んでいます。
(※閲覧するためには、購読者用のIDを入力する必要があります)

■「Counselors Say Cases Like Cho’s Are Hard to Spot as Students’ Behavior Becomes More Extreme」(The Chronicle of Higher Education)
http://chronicle.com/free/2007/04/2007041902n.htm
■「Expert on Troubled Students Says Their Actions Are Difficult to Predict」(The Chronicle of Higher Education)
http://chronicle.com/news/article/2070/expert-on-troubled-students-says-their-actions-are-difficult-to-predict
■「Could Officials Have Stopped Cho? A Q&A With a Campus Counseling Expert」(The Chronicle of Higher Education)
http://chronicle.com/free/2007/04/2007041903n.htm

予測はそう簡単ではない、という意見が紹介されていますね。一方で、「College Police Departments Have Become More Professional, Experts Say」なんて記事もあったりします。
この新聞は、大学のアドミニストレーター達が主に読んでいる専門紙ですので、今回の事件に関しても、大学の方にとって参考になる意見や見方を取り上げています。
(大学関係者の方は購読されてみることをオススメします。オンライン版でしたら印刷された紙面を送ってもらうより安いですし、何より情報が早いです)

今回の出来事は、今後のアメリカの大学の学生支援のあり方などに少なからぬ影響を与えそうです。

このように様々な立場の方が、今回の事件についての意見を発信し始めています。

日本で暮らす我々にとっては、「乱射事件」と聞いても、何か実感のわかない事件であるように感じられてしまうかも知れません。
しかし、大教大付属池田小学校の事件でもわかるように、予測しない非常事態というのは日本でも起きます。学生の安全が危機に見舞われた際、学生の安全をどのように守るのかというのは、共通するテーマです。

自分がバージニア工科大学の教職員だったらどうすべきだったか、今後はどうすべきなのか……といったことを考えながら、ニュースを見ていきたいものです。

以上、マイスターでした。